読切(脚本)
〇渋谷駅前
(渋谷の駅を降りてぇ・・・)
〇渋谷のスクランブル交差点
(スクランブル交差点を渡ってぇ・・・と)
〇街中の道路
(道玄坂の・・・左側に楽器屋が・・・)
〇自転車屋
「えっ? マジか!」
〇自転車屋
ボー然とした。
歩道の車道側ギリギリまで下がって、ビル全体を見上げたり、左右をキョロキョロ見渡した。
(ない! 楽器屋なくなってる! サイクリング店?)
「えーーーーーーーー」
〇自転車屋
「お兄さん、どーしたの?」
ふと声をかけられて振り向く
〇街中の道路
僕「えっ、あぁ、ここ前、楽器屋じゃなかったですか?」
俺「うん、確かに、楽器屋だったよ」
僕「やっぱり」
俺「楽器屋に用があったの?」
僕「えぇ、まぁ」
僕「でも、長いこと東京はなれてて、久々に戻って、ここに来てみたら・・・」
俺「サイクリング店になってた」
僕「そうなんですよ!」
俺「でも、ここじゃなくても他のとこにもあるじゃん?」
僕「いやぁ、なんて言うか、楽器屋って言ったら、ここが・・・」
僕「ここが、自分にとってのよりどころみたいになってて・・・」
俺「確かに、ここ、いろいろ揃ってたよね」
僕「そうなんですよ!」
僕「DTMとかやってみたいなぁ、とか・・・」
僕「買わないけど、楽譜を見たり、楽器にふれたり、手にとったりして・・・」
俺「ふーん」
僕「いつ、閉店したんですか?」
俺「もう10年以上も前だってよ」
僕「えっ! そんな前に・・・」
僕「はぁ~」
〇自転車屋
〇街中の道路
僕「あれっ? 「だってよ」って?」
俺「いやー、実は俺も同じでさ」
俺「俺の場合は2週間前に知ったわけ」
僕「2週間、ここに通い続けてるんですか?」
俺「何目的で?」
僕「あっ、いや、さぁ?」
俺「ハハハハハハ! 俺、渋谷、よくうろつくんだ」
俺「なんでかな? ここの前にたまたま来て、何気に立ち止まってスマホいじっててさ・・・」
俺「2週間前の俺と同じリアクションしてるヤツがいるなーと思ってさ!」
僕「あぁ、なるほど」
俺「まぁ、俺のほーが1分ぐらい長くボー然としてたけどな!」
僕「長さは関係ないでしょ・・・それに声かけられたし!」
俺「確かに・・・んで、10年以上もどこ行ってたのよ?」
僕「就職して、名古屋、大阪、福岡を転々としてて・・・」
俺「ん? そしたら、俺とそんなに年、はなれてなくねーか?」
僕「いくつなんですか?」
俺「35」
僕「えっ! 同い年? 干支は?」
俺「干支で聞くか? 寅年だけど」
僕「一緒だ!」
俺「見た目、そんなにフケてるか?」
僕「いやぁ、なんか圧が・・・ハハハ」
俺「そこは「オーラ」だろ!」
僕「そうかな?・・・ハハハ」
俺「俺もさ引っ越ししててさ、関東圏にはいたんだけど、なかなか東京に戻ってこれなくてな」
僕「戻ってきてみたら、楽器屋がサイクリング店かぁ・・・」
〇自転車屋
〇街中の道路
俺「あー・・・俺たち浦島太郎みてーだな」
僕「そうだね! ハハハ」
僕「せめて行った先が竜宮城だったら良かったのになぁ!」
俺「亀でも助けねーとな」
僕「そうだ、それしてなかったよ! ハハハ」
俺「ハハハハハハ」
俺「なー」
僕「ん?」
俺「ここで会ったのも何かの縁!」
僕「かな?」
俺「バンドでも組まねーか?」
僕「えっ! いきなり? って、もしかして2週間、ここでメンバー探ししてたんじゃ?」
俺「な、わけねーだろ!」
僕「本当かな?・・・ハハハ」
俺「ハハハハハハ・・・どーだろーな」
僕「でも、折角だけど・・・楽器できないから・・・」
俺「別に構いやしねーよ」
僕「えっ、でも・・・」
俺「俺もギター持ってるけど独学で、うまいわけじゃねーから」
僕「そうか」
俺「うん・・・そーだ! 浦島ers、バンド名、ウラシマーズでどーよ?」
僕「なにそれ! ダッさ!」
僕「ヤッパ、メンバー探ししてたんじゃ?」
俺「ちげーって!」
これが僕たち「渋谷ウラシマーズ」の始まりだ!
・・・そして、終わりでもある(作者)
「えっ!マジで? えーーーーーーーーーー」
完
二人のやり取りがおもしろかったです。
時間が経つと、お店が変わっちゃったりするのがあるあるで!
昔行ってたお店がなくなってたりしたら寂しいですよね。
同じ人種なんでしょうか、趣味や行動が似ていましたね。10年後の世界を浦島太郎の話しにリンクさせたお話が斬新でした。楽器が得意でない二人でバンドを組んだんでしょうか?先が不安です。
自転車屋選びって確かにフィーリングかも…つまり運命!?ウラシマーズはバンド名だったのですね。2人が出会ったのも何かの運命だったのですね。