繋ぎのハンカチ

夏目心 KOKORONATSUME

1 横取り同期と車椅子(脚本)

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夏目心 KOKORONATSUME

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〇オフィスのフロア
影山博「部長!只今戻りました!」
部長「おぉ戻ったか!今日の方はどうだった?」
影山博「えぇバッチリ契約取れました!まぁ僕の手腕があれば朝飯前ですけど!」
部長「おぉ!今回もやってくれたか!流石は影山君だな!」
影山博「えへへ!これなら昇進も近いですね!」
部長「あぁ!これからも頼むよ!それはそうと・・・」
木村宏斗「・・・・・・」
部長「木村君、また君は出先で何もして無かったのか?」
影山博「えぇ部長、今回もこいつは只のお荷物ですよ?」
部長「全く・・・営業は只の散歩じゃ無いんだ・・・もっと頑張って欲しいんだがな・・・」
木村宏斗「・・・はい・・・」
影山博「部長!こんな奴に何言っても無駄ですよ!落ちこぼれはいつまで経っても落ちこぼれですから!」
部長「うむ・・・まぁ良い、今日も頼むよ・・・」
影山博「へへ!やっぱ俺って優秀だよな!んじゃあ木村!俺のやる分の7割、確りやれよ!」
  俺は木村宏斗。夏目商事に勤めるサラリーマンだ。今さっき営業から帰って来たのだが、全て同期の影山博の成果の様に
  思われる様な感じだったが、実際は俺の方から一から十まで相手に説明や交渉をしており、実際やったのは俺であるのだが、
  全て影山がやった事になっていた。これは今になって始まった事では無く、俺がここに来てからだ。
  影山は口車が上手いので、今でもあいつが成績が良いと言う事になっている。
木村宏斗「・・・さて、やるか・・・」

〇警察署の食堂
木村宏斗「あぁ、やっと休める・・・」
木村宏斗「また俺が怒られるのかよ・・・」
速水瀬奈「すみません、ここ、宜しいですか?」
木村宏斗「え?あぁ、速水さんか・・・どうぞ?」
速水瀬奈「ありがとうございます!」
  俺の近くに座って来たのは受付の速水さんだった。断る理由も無いので承諾した。
木村宏斗「はむ・・・」
速水瀬奈「木村さん、何か元気無い見たいですが、何かありました?」
木村宏斗「え?別に何とも無いけど?」
速水瀬奈「え?その割には凄く疲れてる感じしますが?」
木村宏斗「・・・まぁ隠しても仕方無いか・・・今日も営業やりに行ったんだけどね、同期の影山に全部手柄横取りされてさ・・・」
速水瀬奈「え?実際はどうだったんです?」
木村宏斗「一から最後まで俺がやったけど、全部あいつがやった事にされてて、まぁずっと前からこんな感じなんだけどね・・・」
速水瀬奈「えぇ、何で反論とかしないんですか!?」
木村宏斗「したいさ、でもそう言うの嫌なんだよ・・・」
速水瀬奈「え?」
木村宏斗「俺、揉め事って本当駄目でさぁ、子供の頃に親が良く喧嘩ばっかしててさ・・・毎日の様に見せられたから」
木村宏斗「怒声とか暴力とか本当駄目で・・・」
速水瀬奈「あぁ、マジか・・・でもこう言う所じゃ・・・」
木村宏斗「良いよ、そう言うのは言っても仕方無いと言うか・・・平凡に過ごせればそれで良いからさ・・・」
速水瀬奈「・・・でも、言いたい事はちゃんと・・・」
影山博「あれ?速水ちゃんじゃん!お隣良いかな?」
速水瀬奈「え?普通に嫌ですが・・・」
影山博「またまたぁ!そんな照れる事無いって!」
影山博「それはそうと木村、お前邪魔だからどっか行けよ!」
速水瀬奈「ちょっと!そんな言い方!」
木村宏斗「あぁ、退くよ・・・」
速水瀬奈「え!木村さん!?」
木村宏斗「いや、丁度食い終わったし、俺行くよ・・・」
影山博「へ!分かってるじゃんか・・・分かってるならさっさと退けよ!」
木村宏斗「あぁ・・・」
速水瀬奈「あぁ、木村さんって、行っちゃった・・・」
影山博「まぁまぁ!あんな奴放っとけって!そんな事よりさ、僕今日も契約取ったんだぜ!」
速水瀬奈「え?あの、今日の成果って木村さんのだって聞いたんですが?」
影山博「違う違う!全部僕がやった事だよ!本当僕って凄いよな!ねぇねぇ、折角だから僕の彼女にならない?」
速水瀬奈「あ、あの、話聞いてます?」
  俺はいつも影山に舐められながら仕事に打ち込んでいる。ストレスになるのは本当だが、俺は俺として仕事に打ち込むのだった。

〇街中の道路
  数時間後。
木村宏斗「あぁ、やっと終わった・・・」
木村宏斗「しかしまぁ、正直俺、このままで良い・・・訳無いよな・・・このままやっても・・・」
木村宏斗「ん?」
明石家加奈子「・・・・・・」
木村宏斗「こんな所に車椅子の人?こんな所で見掛けるとはな・・・まぁ関係無いか・・・」
木村宏斗「って!あれは!?」
木村宏斗「え?あの車、何であんなスピードでって!」
木村宏斗「横断歩道は青信号だけどあの車は減速して無い・・・や、ヤバい!!おばさん!危ない!!」
明石家加奈子「え?いやあぁぁ!!」
  猛スピードで迫り来る車から車椅子のおばさんを無理矢理後ろに引き下げた。
木村宏斗「あぁ、危なかった・・・」
明石家加奈子「な、何なの?何が起こったと言うの!?」
木村宏斗「あぁ!すみません!突然の事だったんでつい・・・」
明石家加奈子「え?あの、状況が読めないんだけど・・・」
木村宏斗「あ、すみません、説明はします!取り合えず場所を変えましょう!ここじゃゆっくり話せないので・・・」
明石家加奈子「あ、あぁ・・・」

〇住宅街の公園
木村宏斗「良し、ここなら大丈夫かな?」
明石家加奈子「あ、あの、あなたはもしかして・・・」
木村宏斗「あ、はい、さっき見えてたか分かりませんが、車が猛スピードで迫って来てまして、しかも信号無視してて・・・」
明石家加奈子「えぇ!やっぱりあなた、私の事を助けてくれたんだね!じゃあ、もしあなたが動いてくれなかったら・・・」
木村宏斗「うん、そこは考えるの止めましょうか・・・」
明石家加奈子「何て事・・・危ない所を助けて頂き、ありがとうございます!いつもならメイドの付き添いがいるのですが、」
明石家加奈子「今日はたまたま1人だったので!」
木村宏斗「ま、まぁ、当たり前の事をしただけですから!俺もそろそろ行きますが、帰りとか大丈夫ですか?」
明石家加奈子「え?まぁ、迎えは呼べますが、あなたは一体・・・」
木村宏斗「大した者じゃ無いですよ!じゃあ、行きますね!」
明石家加奈子「あぁ!待って!攻めて名前を・・・」
明石家加奈子「あぁ、行っちゃったか・・・とても謙虚な人ね・・・」
明石家加奈子「ん?」
明石家加奈子「これは?さっきのお兄さんが落としたのかな・・・でもこれは確か・・・」
  俺がその場から去った時、ハンカチを落としてしまっていた様で、これが俺の人生の転換期になるとは、
  この時の俺はまだ気付かなかった。

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