Ⅱ(脚本)
〇後宮の回廊
内裏 紫宸殿
貴族「はあっ。はあっ。はあっ」
貴族「急げ。急げ。急げ」
貴族「失礼!」
貴族「待て!」
貴族「諸大夫ごときが!無礼であろう!」
貴族「これなるは、左府様への 急ぎの書状でありまする」
貴族「左府様に」
貴族「落として汚しでもしたら、 貴方様もお叱りを受けまするぞ」
貴族「ああいや、これは失礼した」
貴族「ささ、急がれよ」
〇厩舎
検非違使庁 厩舎
検非違使「・・・」
検非違使「・・・」
検非違使「ええい!斯様な報告書! 何枚も何枚もチマチマと! かの御仁は我ら武士を 何と思っておられるのか!」
検非違使「少しでも書き損じてみよ。 どんな難癖を付けられるか」
検非違使「惡左府めが・・・」
〇英国風の図書館
東三条殿 左大臣執務室
左府「次」
左府「次」
左府「次」
左府「次」
左府「次」
左府「・・・」
左府「公春(こうしゅん)」
公春「はい、これに」
左府「橘三位の上日奏上が遅れておる」
左府「先月も先々月もだ。最早勘弁ならん」
左府「最後通告だ。三位に突きつけよ」
左府「召籠(身柄拘束)も覚悟せよと伝えよ」
公春「恐れながら、橘様は右大臣寵卿の一派」
左府「右府など有名無実の名誉職。 我が随身なれば 左様な輩に臆するでない」
公春「されど寵卿は関白様ともご昵懇にて」
左府「黙れ! 行け! 渡せ! 早く!」
公春「は、はい~」
左府「次」
〇後宮の庭
右大臣寵邸
美丈夫家臣「右府さま~」
美丈夫家臣「惡左府から斯様なお叱りを受けました~」
寵「見せよ」
寵「召籠じゃと?」
寵「麿の大切な三位を召し籠めるじゃと?」
美丈夫家臣「確かに報告が遅れたは私の失態です。 されど日々の勤めに忙殺され、 つい失念しておりました」
美丈夫家臣「うう・・・惡左府様は厳しすぎます」
寵「もうよいもうよい。 安心いたせ。 麿が守ってやるぞえ」
美丈夫家臣「寵(めぐむ)さま~」
寵「もう・・・メグって呼んで!」
美丈夫家臣「メグ~ん」
寵「これ!何を引いておる!」
寵「よいか!惡左府に伝えい! 麿の後ろ盾は関白殿、 つまり都の最高権力者だとなーーっ!」
美丈夫家臣「だとなーーっ!」
美丈夫家臣「メグ~ん」
公春(嗚呼・・・鬱陶しい)
CONTINUED