〇小型船の上

〇広い更衣室（仕切り無し）
　　船の中
大和「島に着くまで時間あるな。 今のうちに、密室殺人について詳しく聞いておきたいぜ」
エミー刑事「先ほども話した通り、死体は校長室内で発見されました」
エミー刑事「校長室は貴重品が飾られているため、セキュリティーが厳重なのですぞ」
エミー刑事「まず窓ですが、面格子によってガッチリガードされていますな」
エミー刑事「人が通ることはできないです。 当然取り外された痕跡もありません」
エミー刑事「そして唯一の扉には、キッチリ鍵がかかっていたのです！」
真央「扉の鍵はどこにあったの？」
エミー刑事「死体のズボンのポケットに入っていました。 これは密室殺人で決まりですな！」
大和「鍵は一本しかないのか？ 合鍵やマスターキーは？」
エミー刑事「心愛校長が飾ってあるコレクションを守るため、数年前に用意された特注の鍵でしてな」
エミー刑事「マスターキーにも対応していない、世界でただ一つの鍵なのです！」
真央「へー、どんな鍵なの？」
エミー刑事「ええっと・・・・・・荷物は船に置いたままでしたな。確かここに・・・・・・」
エミー刑事「ありました！ これが現物です」
真央「ふむふむ・・・確かに複雑そうな鍵」
エミー刑事「部下が鍵屋に行って調べてくれました。 この鍵の構造は、複製が不可能だそうです」
大和「ならこっそり合鍵を作るのも無理か」
真央「殺して扉から出て施錠した時、面格子の隙間からポケットに鍵をすり込ませたとかは？」
エミー刑事「死体は、窓や扉から少し離れたところにありました。 鍵を投げ入れてポケットの中に入れるのは無理でしょうな」
大和「うむむ・・・シンプルだが難問だな」
大和「さすがは密室殺人！ これ以上は現場を見ないと分からないかもだ・・・」
真央「いや、動機の線から分かることもあるかもよ？ 動機のアテとかあるの？」
エミー刑事「我々は当初、物盗りの線を疑っていました」
エミー刑事「しかし部屋に飾られていた貴重品は、そのままっぽいのです」
真央「え？じゃあ、物盗りじゃないの？」
エミー刑事「いえ」
エミー刑事「部屋に飾られていたのはカードゲームのレアカードがほとんどですが」
エミー刑事「その中で最も高価なカード、額縁入れられた『ブラックスネイクス』」
大和「あ、これ聞いたことある名前だぜ！ 確か3000万円するカードだ！」
エミー刑事「なのですが、飾られていたのは適当なカードに印刷したブラックスネイクスを貼ったものだったのですぞ！」
真央「偽物ってこと!? それまでは本物だったの？」
エミー刑事「それは調査中ですな。 しかし額縁には、指紋が一切ついていませんでした」
大和「普通に飾っていて、指紋が一切ないのは不自然だぜ」
真央「犯人が指紋を拭き取った可能性が高いね」
真央「こっそり偽物と入れ替えて、盗まれたと気づくのを遅らせたかった」
真央「でも盗む途中で校長に見つかってしまい、咄嗟に殴って殺してしまった」
真央「凶器は校長室のトロフィーだったね！ 明らかに計画性を感じさせない凶器だ」
大和「動機から推理なんてくだらないぜ。 その情報から、どうやって密室を破るっていうんだ？」
真央「ええっと、それは・・・・・・」
船乗り「おーーい、そろそろ着くぞ！」

〇閑静な住宅街
　　学園島　上陸
大和「ふー、着いた着いたぜ！」
真央「嵐だいぶ収まってきたね。助かったよ」
エミー刑事「・・・・・・あれ？電気が復旧してますな」
真央「何？停電でもしてたの？」
エミー刑事「はい、さっき島全体で。 まあ、この嵐のせいでしょう」
エミー刑事「ささ、学校はこちらです。 まだ授業中ですのでお静かに」
大和「殺人事件が起きたのに、授業してるのか？」
エミー刑事「殺人事件の話は、混乱を招くためまだ公表していません」
エミー刑事「それに学園内には、警察が見回っています。 むしろ学内にいた方が安全なのですぞ！」
真央「確かに、学外の方が危険か」

〇校長室
　　校長室
大和「ここが殺害現場の校長室か。 一階にあるんだな」
医者「刑事さん、その人たちが噂の探偵です？」
看護師「パッとしない奴らウサ！」
真央「誰・・・・・・？」
エミー刑事「この島に在住の医者と看護師です」
エミー刑事「島に着いてすぐ死体を観てもらうために呼びましたが、また残ってたので？」
看護師「久々の母校を見ていたウサ！」
医者「検死にご協力したかったのですが、大したことがわからず申し訳ないですね。専門外ですから」
医者「我々は病院に戻ります」
アイス警部「お気になさらず。 ありがとうございましたですぞ！」
エミー刑事「あっ！アイス警部。 目を覚ましたので？」
アイス警部「エミー刑事が出てすぐに」
アイス警部「エミー刑事も自分の判断で探偵に丸投げできるようになって、成長しましたな！」
エミー刑事「えへへー」
大和「これが現場か。 見ても密室の謎は解けないな・・・・・・」
真央「事件発覚までの流れを教えてくれる？」
アイス警部「それなら第一発見者に説明して頂きましょう。 この学園の教頭先生、『伯太』殿に」