第1話 100%守ります!①(脚本)
〇黒
──カキンッ!
少女に向かって放たれた"くない"は、薙刀によっていとも簡単に受け止められた。
〇高い屋上
???「俺のくないを止めるとは、かなりすごいな!」
???「君の名前は!?」
アテナ「・・・アテナ、任務遂行します」
高原みこ「な、な・・・なんじゃこりゃあ~~~!!?」
〇白
アテナ任務遂行中!
第1話 『100%守ります①』
〇教室
──1日前
吉永良晴「──ということで、丘の上に作られた神殿には、守護神としてアテナという女神が・・・」
吉永良晴「って、わーー!?!?」
吉永良晴「高原、何してるんだ! ここは3階だぞ!」
教室の窓際で、女子生徒──高原みこが、今にも窓から飛び降りようとしていた。
高原みこ「大丈夫! 今行くからね、子猫ちゃん」
みこの視線の先には、木の上で震える子猫の姿があった。
高原みこ「とうっ!」
吉永良晴「高原っーーー!!」
生徒たち「落ちたぞ」
生徒たち「信じられない!」
生徒たちが慌てて窓際に駆け寄る。
柴崎麻衣「みこっ!!」
〇木の上
高原みこ「猫さん、キャッチ!」
高原みこ「あ~、よかった。これで安心・・・」
クラスメイト「安心じゃないって! 落ちてるよ!」
高原みこ「へ? あ、ほんとだ!」
子猫を抱えたみこは、高い木の上から真っ逆さまに落下する。
高原みこ「大丈夫、守ってあげるからね」
子猫をきつく抱きしめると、祈るように目を閉じた。
〇教室の外
高原みこ「・・・ッ!」
???「ふう、間一髪セーフ。 かなり危なかったな」
高原みこ「・・・ん? あれ? 痛くない・・・」
おそるおそる目を開けると、見知らぬ男子生徒がみこの体を受け止めていた。
高原みこ「! ありがとうございます!」
???「いいえ、どういたしまして」
柴崎麻衣「ちょっと! あれ、嘉成光(かなりひかる)くんじゃない!?」
高原みこ「かなりひかる?」
柴崎麻衣「せ~の!」
「「かなりかっこいい~!」」
嘉成光「かなり嬉しいよ! ありがとう!」
「「キャー!」」
窓際に集まる大勢の女子生徒たちから、黄色い歓声があがった。
柴崎麻衣「みこ! ずるいぞ~!」
嘉成光「・・・君がみこちゃん?」
高原みこ「はい! 私が高原みこです!」
〇高い屋上
昼休憩。クラスの女子生徒たちに誘われて、みこと光は屋上にやってきた。
光は膝にのせた子猫を優しく撫でながら、みこに向かって微笑みを向ける。
嘉成光「みこちゃん、俺と友達になってくれる?」
高原みこ「はい、なりましょう!」
柴崎麻衣「軽っ!」
柴崎麻衣「ちょちょちょっと! みこ、光くんがどういう人かわかってる?」
高原みこ「今日、うちの高校に転校してきた人?」
柴崎麻衣「ムッ~! これを見なさい!」
高原みこ「あ、光くんだ」
柴崎麻衣「そう、光くんは人気モデルなの!」
柴崎麻衣「友達なんて、簡単になれるような人じゃないんだよ!?」
高原みこ「へえ~そうなんだ」
嘉成光「でも、みこちゃんには、そういうの気にしないでほしいかな」
高原みこ「ん?」
嘉成光「俺、かなり興味あるからさ。みこちゃんに」
柴崎麻衣「え!?」
嘉成光「まずはゆっくり・・・。 お互いのこと知っていこうよ」
高原みこ「はい!」
柴崎麻衣「えっ、何!? どういうこと!?」
光が立ち上がると、子猫が甘えるような鳴き声をあげて光の足に寄り添った。
子猫「ミャ~」
嘉成光「うん? 懐かれちゃったかな」
高原みこ「あ、その子猫ちゃん・・・」
嘉成光「俺に任せて。それじゃ、またね」
光はキラリと笑顔を見せると、子猫を抱えて去って行った。
〇可愛い弁当屋(看板あり)
高原みこ「お先に上がりまーす。お疲れさまでした!」
放課後。みこはお弁当屋『にこにこ弁当』のバイトを終えて帰路についた。
嘉成光「へぇ。放課後は毎日バイトか・・・」
物陰から現われた光は、みこの背中を見送りながら小さく微笑む。
〇古いアパート
〇雑多な部屋
高原みこ「ただいま~」
高原小太郎「おかえり、姉ちゃん!」
バイトから帰ってきたみこを、弟の高原小太郎(こたろう)が出迎えた。
高原小太郎「今日の弁当は?」
高原みこ「じゃ~ん、からあげ弁当!」
高原小太郎「やった!」
高原小太郎「そうだ、姉ちゃん宛に荷物届いてたよ」
高原みこ「なんだこりゃ? 差出人が書いてない・・・パパからかな?」
〇雑多な部屋
みこと小太郎が暮らす小さな和室には、冒険家の父・丞次(じょうじ)から届いた様々な土産物が飾られている。
ちゃぶ台で食事をする小太郎の隣で、みこは段ボールの開封を始めた。
高原小太郎「姉ちゃん、弁当食べてからにすれば?」
高原みこ「開けるだけ、開けるだけ・・・んん?」
高原小太郎「どうしたの?」
高原みこ「助ける・・・? 宿題とか?」
箱の中には、フィギュアの部品のような人型のパーツが整然と並んでいた。
高原みこ「へえ~! フィギュアが宿題やってくれるんだ!」
高原小太郎「姉ちゃん、まだ?」
高原みこ「大丈夫! すぐ作っちゃうから」
高原小太郎「姉ちゃんの大丈夫は、いつも大丈夫じゃないんだから・・・」
〇雑多な部屋
布団で眠る小太郎の隣で、みこはフィギュアの組み立てに奮闘した。
高原みこ「最後に、この足のパーツをねじ込んで・・・」
バキッ!!
高原みこ「ん? 変な音した?」
最後のパーツをはめて組みあがったのは、10センチ程度の大きさのフィギュアだった。
その二の腕には「Athena00」という文字列が刻まれている。
高原みこ「あ・・・てな?」
みこが呟いた瞬間、突然フィギュアの目が赤色に変化して光を放った。
高原みこ「目が光った!」
???「御主人(マスター)高原みこ。 ──網膜(もうまく)情報確認完了」
高原みこ「名前呼んだ!?」
???「初めまして、御主人(マスター)。 私の名前はアテ──」
驚いたみこは、思わすフィギュアから手を放して床に落とす。
パキンッ
高原みこ「あっ、壊れちゃった・・・」
足のパーツが外れたフィギュアから、再び目の光が失われた。