エキストラ・ワールド(脚本)
〇雑踏
『あてどなく雑踏を歩いてみる』
『数多の孤独が行き交う街並みを』
『違う』
『世界はこんな耳障りのいい音なんて奏でてはいない』
ミチオ「・・・」
『そうだ、これでいい』
『人との繋がりは望むべくもないが、寂しさだけは少し癒される』
『だから・・・少しだけ微笑んでみよう』
ミチオ「・・・」
『カット!』
〇雑踏
「オイコラAD!」
「あのダッフルの奴、邪魔!」
「す、すみません!すぐどかせます!」
AD「あの。そこのアナタ」
ミチオ「はい?」
AD「笑顔とかいいんで。 えーっと・・・ですね。 後ろの人影に紛れてもらえますか?」
ミチオ「ああ、すみません。 大都会のいちピースとしての人生 しか歩めない男の『自嘲』ってヤツを 自分なりに表現してみたんですが」
ミチオ「だったら『憤り』に代えてみますか?」
AD「そういう妙な芝居入れなくていいから! 無表情でサッササッサ歩いてよ!」
AD「てか個性出さないで。 メインの邪魔」
ミチオ「す、すみません」
『はいテイク2!』
呪術刑事金剛丸明王「う~む。 この辺りで式神の気配が消えたのだが」
特命婦警設楽ヶ原綾「もう! また超常現象ですか?」
特命婦警設楽ヶ原綾「そんなものは この世に存在しないと何度も・・・」
呪術刑事金剛丸明王「行くぞ。 犯人はすぐそこにいる」
特命婦警設楽ヶ原綾「も~う!勝手なんだから~!」
特命婦警設楽ヶ原綾「・・・って。 次回につづく!」
〇魔法陣
キャスト
金剛丸明王 彗星 亮
設楽ヶ原綾 秦こずえ
剣持三郎 清原将貴
神宮麗華 Jenny
木村公平 河北良太 香坂新太郎
川田あゆみ 村重愛 佐藤剛
小林エッセンス(ダンベルズ)
exエージェンシーのみなさん
殺人鬼ドウマン ????
蓬莱蓮也 大河原幸雄
〇CDの散乱した部屋
ミチオ「・・・ふん」
『人里離れた場所から来た陰陽師の末裔』
『IQ200にして世間知らずの変人』
『そんな設定の呪術刑事金剛丸役が、元国民的アイドルグループのリーダーとは笑っちまうよ』
『全く、何もかもリアルじゃない』
『悲しいホームレスなのに、何十年も主演ばっかやってる大御所のツラしてたり』
『生まれてこの方一度もモテたことのないOLなのに、グラビア何冊も出してるような洗練された笑顔見せたり』
『そういう綺麗なキャラクターしかいない世界に滂沱の涙を流せる、テレビやスクリーンの前の観客ども』
ミチオ「リアルじゃない」
ミチオ「何もかも真実(リアル)じゃない」
ミチオ「結局、俺が目指している世界は、 どこまでも幼稚なフィクション」
ミチオ「ミスキャストばかりだ」
ミチオ「・・・」
ミチオ「こんな時にも腹は減る、か」
〇通学路
〇市街地の交差点
ミチオ「・・・雨」
ミチオ「・・・」
ミチオ「・・・!」
〇市街地の交差点
『そうだ』
『これが俺のエンドロール』
『これが俺の・・・リアル』
fin
〇映画館の座席
村瀬初音監督インタビュー
監督「そうですね。 今作は兎に角、いつもより繊細に。 そして大胆なラストを心掛けました」
監督「決して誰からも 選ばれる事のなかった主人公ミチオ」
監督「この、非情なまでの やるせなさを演じられるのは、 彼をおいて他にはないと」
監督「オーディション抜きで、 私が直々にお願いしました」
〇音楽スタジオ
主演ミチオ役YOUTOインタビュー
YOUTO「いや~! 本格的な芝居って初めてだったけど、 監督に食らいついていきました!」
YOUTO「でもやっぱ、 本業はミュージシャンっすから」
YOUTO「気持ちはもう、 年末の五大ドームツアーに向かってますね」
YOUTO「100万人のファンが待ってるんで! ・・・なんてね♪」
では名優、近衞翔一さんのご子息として、
役者への道を歩む気はまだないと?
YOUTO「う~ん、そうですね。 親父は親父、俺は俺だし」
YOUTO「まあ、これからも僕を選んでくれる 監督やプロデューサーさんがいれば、 絶対やらないってわけじゃないですけど」
YOUTO「でも俺はやっぱアーティストなんで!」
YOUTO「二世とかコネとか、そういうのとは 無縁な世界で勝負していきたいんで!」
YOUTO「俺、本能でしか芝居できないんで!」
〇映画館の座席
監督「その本能がいいんですよ」
監督「YOUTO君を一目見て直観しました」
監督「大都会に埋もれたまま夢破れ果ててゆく、 そんなリアルな、どこにでもいる 普通の若者ミチオがそこにいる!って」
監督「彼にできない役はない。 そんな無限の可能性を私は確信しました」
監督「例えば彼のイメージとは真逆の ひきこもりの青年の悲しみなんかも、 真っ直ぐな魅力で観る人の共感を・・・」
〇CDの散乱した部屋
ORESTORYでもエキストラ「・・・」
ORESTORYでもエキストラ「・・・ケッ!」
fin
素晴らしい作品でした。
ミチオが最初、とても可哀想な人と思いきや……まさかのYOUTOさんが演じた役だったとはとてもびっくりでした!!
最後のエキストラの人、気になりますね…。