十二話(脚本)
〇太子妃の御殿
シバ「でーてーこい! あそ~れ!で~て~こい!」
シバ「ミコちゃんビビッてる ヘイヘイヘーイ!」
アシハラの兵「ちょっと、うるさいんですけど」
シバ「おろ?」
エビス「・・・」
シバ「まだいたの?」
エビス「いらぬ世話じゃ」
シバ「ああ、ひとりがみよ。 何処より来て何処へ向かう?」
シバ「誰にも知られず誰からも祈られず」
エビス「何が目的じゃ?」
シバ「はい~?」
エビス「おぬし、人ではなかろう」
シバ「・・・」
エビス「何者じゃ。 何の為にアシハラの民を誑かしておる」
シバ「いやだわん。誑かすなんて~ん」
エビス「薄気味の悪い笑顔を見せるな」
シバ「あひゃひゃひゃひゃ!あひゃひゃひゃ!」
〇モヤモヤ
『人と神を交わらせ動乱を呼び』
『一方で神を排し自由を謳わせる』
〇太子妃の御殿
エビス「この島国を混沌に陥れるつもりか?」
シバ「混沌?」
シバ「何を今さら」
シバ「ここは元からカオスなのだ」
シバ「八百万。全てを受け入れ全てを否定する」
シバ「スジもなければシンもない。 グニャグニャの島国」
シバ「人はやがて、 そのグニャグニャを『和』と呼び 永久なる曖昧の中で生きて死ぬだろう」
シバ「今、天は闇に包まれた」
シバ「アマテラスは沈黙した」
シバ「されば教えてやろう」
シバ「これよりアシハラを照らすは光ではない」
シバ「炎」
シバ「呪いと復讐の炎だ」
『博士!何を勝手な真似してやがる!』
シバ(チッ、うっせーな)
シバ(せっかく黒幕感出してキメてたのに。 空気読めやサル)
シバ「あら~ん。申し訳ございま・・・」
タケル「どけ!」
タケル「ドキ!そこにいるんだろ!」
ドキ「大王様・・・」
タケル「下らねえ儀式なんか不要だ」
タケル「俺は神になんかならねえ! 一人の人間として自由に生きていく!」
ドキ「た・・・タケル様」
ドキ「よく仰られました! これでミコは命を賭すことなく、 アシハラもまた安泰にございましょう!」
タケル「ああそうだ。人間として・・・」
タケル「タカマガハラに攻め込むぜ!」
ドキ「馬鹿な・・・」
ドキ「な、何を言われます! 神は沈黙しました! これ以上のいくさは無益にございます!」
タケル「シバ」
シバ「はいな」
タケル「アメノトリフネに対抗する天駆ける船。 お前の力で作れるか?」
シバ「う~ん。その手の技術って ボクの企業秘密なんですけど~」
シバ「余裕っち♪」
ドキ「黙れ!」
タケル「お前が黙れ!ジジイ!」
ドキ「・・・大王様」
『そうだ・・・それでいい』
ヒルコタケル「神々に思い知らせてやれよ。大王様」
タケル「クッ、うるせえ。 頭ん中でゴチャゴチャゴチャゴチャ」
タケル「お前の力なんざいらねえ! 俺の力でてっぺんに立ってやる!」
タケル「俺は自由だァーーーッ!」
『落ち着け』
タケル「ああ?」
エビス「自由・・・」
エビス「それがそんなに御大層なものか?」
エビス「際限なく求め続けなければ、 我慢できぬほどのものなのか?」
タケル「なんだと?」
エビス「お前は数多の者に気にかけられておる」
エビス「たくさんの人に必要とされている」
エビス「その者達よりも自由とやらが大切なのか?」
エビス「あの娘よりも大切なのか?」
エビス「自らを由とするまでもなく、 お前は誰からも由とされておろう」
エビス「それでもまだ足りぬのか?」
タケル「・・・」
タケル「いいだろう」
エビス「何だこれは?」
タケル「その剣をとれよ。勝負だ」
エビス「お前という男は・・・」
タケル「一番強いヤツが一番自由だ」
タケル「一番自由なヤツが一番偉いんだ」
エビス「奴隷だな」
タケル「何だと?」
エビス「お前は自由の奴隷だ」
タケル「そうかよ」
タケル「だったら俺に勝って認めさせてみろ」
タケル「この俺が弱い奴隷だってことをな!」
タケル「うおおおおおおおッ!」
タケル「俺は誰にも負けねえ!」
タケル「・・・!?」
タケル「クッ・・・」
タケル「苦しい・・・」
アシハラの兵「大王様!」
ドキ「タケル様!」
タケル「はあっ・・・はあっ・・・」
シバ「あらあら~ 神の力なんかいらなーいなんて 言っちゃうもんだから」
シバ「神の力で生かされるモヤシっ子の分際で」
ドキ「口が過ぎるぞ!」
シバ「やれやれ。 意気地なしに発破かけたげてんのよ」
シバ「たいへんだよー タケル様が死んじゃうよー」
シバ「早く助けてあげないとー」
シバ「せーの!ミッコちゅわーーーん!」
『タケル様!』
つづく
「自由の奴隷」は名言ですね!
深い洞察のもとに描かれていて感じ入ります!!