十一話(脚本)
〇山間の集落
ヒルコタケル「ミコよ」
ヒルコタケル「俺が助けたいのはタケルだけじゃねえ」
ヒルコタケル「お前達全部の人間を、 神の楔から解き放って 自由にしてやりたいんだ」
ミコ「自由・・・」
ヒルコタケル「そのためにはミコの力がいる」
ヒルコタケル「俺の為に、 いや、アシハラの民の為に祈ってくれ」
ヒルコタケル「この地に俺を留め続けてくれ」
ヒルコタケル「お前の傍に・・・」
ミコ「で、ではタケル様は・・・ タケル様はどうなるのです?」
ヒルコタケル「・・・クッ!」
『あ~腹へった~!』
『早く夜になんねかな~!』
『宴がしてえぜ~ひゃははは!』
ヒルコタケル「ミコ。いつまであんな男の世話をする?」
ヒルコタケル「ヤツは生涯、己のことしか考えられぬ男。 そんな者にアシハラの行く末を 託せると思っているのか?」
ミコ「・・・」
ヒルコタケル「案ずるな! タケルは消え去りはしない!」
ヒルコタケル「この俺と共にもっと強く誇り高く、 真の大王として生き続けられる!」
ヒルコタケル「タケルは俺と同化し、 まことの姿となって生き続けるんだ!」
ミコ「まことの姿・・・」
ヒルコタケル「頼むミコ・・・俺をこの地に・・・」
ヒルコタケル「お前の傍で・・・永久に・・・」
タケル「・・・」
タケル「・・・あ、もう夕方じゃねーか」
ミコ「はい」
タケル「よっしやーッ!宴だーッ!」
タケル「その後は寝所に来い!」
タケル「大王の命令だー!なんつって!」
ミコ「かしこまりました。タケル様」
ミコ「ヒルコタケル様」
〇祈祷場
『入ってよいか?ミコ』
ミコ「ドキ様」
ドキ「エビス様も一緒じゃ」
ドキ「異国の神とやらの言葉も 聞いておいた方がよいかと思ってな」
エビス「どういう訳じゃ?」
ドキ「ミコが戻ってきた。 我らは早急に 『儀式』を執り行わねばならぬ」
エビス「儀式?」
ドキ「無論、神降ろしの儀式」
ドキ「此度は、 永久にヒルコ様の御心を タケル様の体に宿らせる」
ドキ「たった一刻でも神を降ろすは疲弊する。 此度はそれが永久となるのだ」
ドキ「命を捨てる御業となるのだぞ!ミコ!」
ミコ「もとより覚悟しています。 それに儀式は、 アシハラの総意でありましょう?」
ドキ「いかにも。ワシは止めぬ。村長としてな」
ドキ「じゃがお前が逃げるのもまた、止めぬ」
ドキ「一人の人間としてな」
ドキ「渡来神エビスよ。 あなた様ならミコをどう救われまするか?」
ドキ「この哀れなる娘をどう救うて下さるか?」
エビス「・・・」
エビス「声が聞こえたのだ」
ミコ「え?」
エビス「我に助けを求める声が。 ゆえにこの島国へと参った」
エビス「だがその祈りは、 我に向けられたものではなかった」
エビス「祈りが混線していたらしい」
ミコ「・・・申し訳ございませんでした」
エビス「ふん。 天上天下、 人に憐れまれた神というのも 我ひと柱であろうな」
ミコ「フフッ・・・」
エビス「な、何が可笑しい!」
ミコ「あははは!」
エビス「・・・?」
ミコ「エビス様は愉快なお方ですね」
エビス「はあ?」
ミコ「エビス様と一緒にいると面白うございます」
エビス「何を言うておるのじゃ?」
ミコ「もっと沢山、 戯れごとを言い合ってみたかったです」
エビス「戯れごとだと? 我は心底そなたを心配してだな」
エビス「ああいや、心配と言ってもあくまでも神的な視点において広義な意味での心配であって決して人間にとっての男女間のそれとは・・・」
ミコ「あははは! エビス様、私のこと好きなんですか~?」
エビス「あ、あ、あ、あ、あほか!」
ミコ「私もエビス様が好きですよ」
エビス「ぼ、ぼ、ぼ、ぼ、ぼけー!」
ドキ「ふむ。お前はそんな顔で笑うのだな」
ミコ「え?」
ドキ「ならばその大好きな神と共に、 島を出ればよいではないか」
ドキ「命を賭ける儀式など止めて、 これよりずっと笑いながら 生きてゆけばよい」
ドキ「左様な導きをする神が おってもよいのではないかな? エビス様」
「・・・」
エビス「・・・」
エビス「そなたはどうしたいのだ?」
ミコ「・・・」
エビス「我は神。人の願いを叶えるために存在する」
エビス「聞かせてみよミコ。そなたのまことの心を」
ミコ「・・・」
エビス「・・・」
エビス「・・・そうか」
ドキ「こ、これ。ミコはまだ何も・・・」
エビス「フン。我を誰だと思っておる?」
エビス「神やぞ」
エビス「人一人の心中くらい、たちどころに・・・」
『は~い!ミッコちゃ~ん!』
『そろそろ儀式のお時間ですよ~!』
エビス「あの女・・・!」
〇太子妃の御殿
シバ「さあて、盛り上がって参りました!」
シバ「宴もそろそろクライマックス! スタンバイオッケーかな~?」
シバ「ではそろそろ、 新しい時代の為に 命張っていただきましょうか~?」
シバ「神降ろしの、ミコちゃん」
シバ「あははは!あははははは!」
つづく
第一幕の神のスッタモンダがあって、
いよいよ怒涛の二幕目の始まりですね!
なかなかの長期戦になりそうです。
人間もいい加減だけど、
神が大勢いるのも大変ですww
それらを静観してるエビスの立場が面白いです😁
意味深なセリフに感動しますね。
エビスとミコが交流しているというのに、シバめ……。
儀式がどうなってしまうのか、続き待ってます。