23話 村の行方(脚本)
〇黒
「ミゲル逃げて!!!!!」
〇地下に続く階段
ミゲル「!!!?!?!?!?!?!?」
テオフィル・ベフトン「っく!!!!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「テオ!!!」
テオフィル・ベフトン「リアリナ様、お嬢さんたち! 私のうしろへ!」
ヨハン村長「無駄なことです!」
ヨハン村長「!!」
テオフィル・ベフトン「!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「おおー!!」
テオフィル・ベフトン「リアリナ様! いつのまに攻撃魔法を覚えたのですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「次、鎌が飛んでくるわよ!!」
テオフィル・ベフトン「え!?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「上よ!」
テオフィル・ベフトン「おっと!」
テオフィル・ベフトン「・・・」
ヨハン村長「っち!!!! なぜ当たらない!!!!」
テオフィル・ベフトン「どうしてわかるのです?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「幸運の女神がついてるから?」
テオフィル・ベフトン「おお!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(んなわけないのよ)
リアリナ・シャルルド・グレイ(攻撃が読めるのは)
リアリナ・シャルルド・グレイ(もう何十回も死に戻りして、このシーンを繰り返してきたから!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(って、バトルシーン。 ごっそりカットしすぎ!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(頼むから今度こそ死なないでよね!)
ヨハン村長「ぐううー、くそ!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「テオ! いまよ!」
テオフィル・ベフトン「っふ!!!」
「ぐわあああ!!!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「諦めなさい」
リアリナ・シャルルド・グレイ「どんな過去を背負っていようと、あなたに同情しなさい」
リアリナ・シャルルド・グレイ「みんな与えられたもので、どうにか現状を変えようと必死に生きているの」
リアリナ・シャルルド・グレイ「人の幸せを踏み躙って得られたお金で村が生き延びても」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そんなの虚しいだけよ」
ヨハン村長「ううう・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「もう終わりよ。ヨハン」
ヨハン村長「・・・終わらせない。 ここで終わるわけにはいかないのだー!!」
ヨハン村長「死ねええ!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「っっつう!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「スタン! 手から血が!!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ヨハンよ・・・」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「其方の罪は、このエレオノール王国の王太子である私が知った」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「よって、この国の法に基づき其方たちを裁く。異論はないな?」
ヨハン村長「・・・ううう」
〇西洋の街並み
ミゲル「・・・お腹すいた」
テオフィル・ベフトン「良かったらどうぞ」
ミゲル「ありがとう」
テオフィル・ベフトン「あ!」
テオフィル・ベフトン「どこに行かれるのです?」
〇黒
〇西洋の街並み
ヨハン村長「・・・」
ミゲル「ソンチョさん!」
ミゲル「これ、あげる!!!」
ヨハン村長「・・・君は」
ミゲル「ソンチョさんのご飯、美味しかった!」
ヨハン村長「・・・えっ?」
ミゲル「バイバイ!」
ヨハン村長「・・・っあ」
ヨハン村長「・・・」
〇睡蓮の花園
ギルバトル・フォルダンテ「俺は、村の処遇を決めるため、一度、城へ戻る」
ギルバトル・フォルダンテ「リアリナ嬢、このようなことに巻き込んでしまい申し訳ない」
リアリナ・シャルルド・グレイ「私は平気ですわ」
ギルバトル・フォルダンテ「では」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ギル様」
ギルバトル・フォルダンテ「!?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「この村をどうなさるのですか」
ギルバトル・フォルダンテ「この村は犯罪に使われたのだ。 閉鎖する他あるまい」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ですが、この村を失えば、困る村人もいることでしょう」
リアリナ・シャルルド・グレイ「どうか彼らが新たな一歩を踏み出せるようお力添えを」
ギルバトル・フォルダンテ「わかった」
ギルバトル・フォルダンテ「これも我が一族の安易な計画があってのこと」
ギルバトル・フォルダンテ「村人と一度、向き合ってみよう」
リアリナ・シャルルド・グレイ「どうか、寛大なご判断を」
ギルバトル・フォルダンテ「ああ」
ギルバトル・フォルダンテ「ではいつか、今日の続きをしよう」
〇黒
〇西洋の住宅街
「い、イタタタ! 痛いではないか!」
〇綺麗な部屋
リアリナ・シャルルド・グレイ「文句を言わないでください」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ナイフに毒が仕込まれていたのです」
リアリナ・シャルルド・グレイ「除去するには痛みが伴います」
リアリナ・シャルルド・グレイ「毎回、あの村長の最後の一撃には頭を悩ませていたのです」
リアリナ・シャルルド・グレイ「これぐらいの傷、不幸中の幸いですわ」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「どこが幸いだ?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「いたったったああ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「即死の毒でしたら、殿下殺しでこの村の人々全員が極刑でしたでしょう?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「事件に関わってない村人の命まで奪われるのは、心が痛みますもの」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「私の傷より、人攫いの村の人間を心配するのか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・殿下のことも心配しています」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あんな無茶をなさるなんて、らしくありませんわ」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「当然だ。我が婚約者が殺されそうになっていたのだ。誰が止める?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「本当に、殿下はお優しいことで」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「愛する者だからだ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・・・・。今なんとおっしゃいました?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「愛する者だから、助けたいと咄嗟に体が動いたのだ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「あ、愛? だれ? 私・・・ですか?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ギルと決闘をしたのも、全て、リアリナのためだ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「え、この毒って、心にもない嘘言っちゃうやつ?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「嘘ではない」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「リアリナ・・・。其方を愛している」
リアリナ・シャルルド・グレイ「まさかの自白剤・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「さ、攫われた人々の様子を見てきますわ!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「待て、リアリナ」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「私は正直に気持ちを伝えた」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「今度は其方の番だ」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「気持ちを、・・・聞かせてくれ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・それは」
テオフィル・ベフトン「殿下。ご報告いたします」
テオフィル・ベフトン「攫われた者たちは無事家族の元へと帰す準備ができました」
テオフィル・ベフトン「現在は温かな食事を与え、」
テオフィル・ベフトン「公爵様がご用意くださった保養所で休んでおります」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ん・・・。報告。ご苦労であった。タイミングは最悪であったがな」
テオフィル・ベフトン「??」
リアリナ・シャルルド・グレイ「いいえ! これでこそテオよ! 完璧だったわ!」
テオフィル・ベフトン「お二人とも、いかがされましたか?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「リアリナ、先ほどの答えを・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「毒消しの魔法が必要ね! なるはやで!」
テオフィル・ベフトン「毒消し? なんのです?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「そんなものは必要ない。 この私の熱い想いを聞いてくれ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「うおっほん!! それで、他に何か報告はあるかしら?」
テオフィル・ベフトン「それが、困った件がありまして・・・」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「なんだ? 言ってみるがいい」
テオフィル・ベフトン「攫われた者の中に獣人の子供がいるのですが、」
テオフィル・ベフトン「家族が見つかりません」
テオフィル・ベフトン「村の子でもないようですし、どう保護すべきか」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「獣人の子供か・・・」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「金に困った親が売ったか、奴隷として雇われていたが、逃げてきたか」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「両親を捜索しても、引き取るだろうか? 無駄足になる可能性が高いな」
リアリナ・シャルルド・グレイ「両親が見つからなかったら、どうなるの?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「十中八九、獣族の住む地に送られる」
リアリナ・シャルルド・グレイ「送られるって、奴隷地区ってことよね」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「まだ子供だ。すぐに売られる可能性は低いから安心したまえ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「安心したまえ?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「結局、奴隷になるってことでしょ?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「それがこの国の獣人の生き方だからな」
リアリナ・シャルルド・グレイ「この国はどうしてそうなのよ! 剣を持つ獣人だっているのに!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「それは類稀なる才能があっての話だ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「才能がなくても、好きに職業選択したっていいじゃない!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「自由にジョブチェンできないなんて、ブラックすぎ!ブラック王国だわ!!!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ブラ??」
リアリナ・シャルルド・グレイ「この国の決まりなんかどうだっていい」
リアリナ・シャルルド・グレイ「だったら、私がその子の保護者になるわ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「私、母になります!」
「は!?」
〇黒
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