異世界エイナール・ストーリー 少年コウルと少女エイリーンの旅記

七霧孝平

第1話 コウルとエイリーン、そしてジン(脚本)

異世界エイナール・ストーリー 少年コウルと少女エイリーンの旅記

七霧孝平

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〇簡素な部屋
ジン「ようこそ。 異世界エイナールへ」
コウル「異世界・・・エイナール」
  青年は頷く。
ジン「私の名前はジン。 きみより先にこの世界に来た者、かな。 きみの名前は?」
コウル「僕は・・・孝瑠です」
ジン「孝瑠。『コウル』だね。 よろしく、コウルくん」
ジン「さてコウルくん。 いくつか聞きたいことがある」
  ジンはコウルにパンを勧めながら、
  いくつか質問をしていく。
  元の世界の情報。
  エイナールに来た経緯。
  そしてーー。
ジン「あの少女は?」
コウル「いえ、それが・・・」
  エイナールに来て、
  モンスターに狙われているのを見つけた。
  それしか、
  コウルにわかる情報はない。
ジン「ふむ・・・」
ジン(服装からして彼女は この世界の人間のようだが)
コウル「ジン・・・さん?」
ジン「ああ、 いやなんでも──」
  ジンがコウルに向き直ろうとした時。
エイリーン「う・・・ん」
  少女がゆっくりと目を覚ます。
  起き上がった少女は、
  何もわからない様子で
  コウルとジンを見つめた。
ジン「気がついたか」
コウル「大丈夫?」
  2人は少女に駆け寄る。
コウル「きみは荒野で倒れていたんだ。 何か思い出せる?」
エイリーン「荒野・・・」
  少女は少し考えて、首を横に振った
エイリーン「すみません。 何も思い出せません・・・」
ジン「記憶喪失か?」
コウル「名前はわかる?」
  少女は思い出し、
  そっと呟いた。
エイリーン「エイリーン。 エイリーン・エイナール」
「エイナール?」
  コウルはジンの方を向く。
  エイナール。
  つい先ほど出たこの世界の名前。
コウル「偶然ですかね?」
ジン(この世界、姓を持つ者は珍しい。 そして、この世界と同じエイナールの 姓を持つもの・・・?)
  考え込むジン。
  その彼をさらに驚かす出来事が起こる。
エイリーン「その腕・・・」
コウル「え?」
  エイリーンがコウルの腕を指す。
  モンスターに殴られた時のケガ。
  さすがにまだ治っていない。
エイリーン「失礼します」
  エイリーンがコウルの腕に手をかざす。
コウル「これは──」
ジン「な──」
  溢れた光がコウルの腕を包み消える。
  痛みが消えた腕の包帯を剥がすと、
  コウルの腕のケガは完全に消えていた。
コウル「ジンさん。 この世界、回復魔法があるんですね!」
  ケガが治り、腕を見せるコウル。
ジン「いや、私もこの世界に来て数年経つが、 回復魔法など初めて見た」
ジン(この少女。 いったい何者だ・・・?)

〇簡素な部屋
  一段落つき、食事を取る3人。
  食事を取ると、
  ジンが真剣な眼差しを向けた。
ジン「来たばかりのコウルくんと、 記憶喪失のエイリーンちゃんに 聞いても無駄だとはわかっているが・・・」
  ジンは懐から1枚の紙を取り出す。
  この世界にはあるか不明な写真を。
  今よりも少しだけ若いジンの姿。
  その横に肩を並べる青年。
ジン「この右の男を知らないか?」
コウル「いえ・・・」
  コウルが知るはずもなく、
  首を横に振る。
  一方、エイリーンは
  頭を抱えうずくまった。
コウル「だ、大丈夫?」
エイリーン「す、すみません。 何か思い出しそうなのですが・・・」
ジン「いや、無理に思い出さなくていい。 すまない」
ジン(だが、エイリーンちゃんは あいつを知っている?)
  ジンはエイリーンの様子を見ようと決める。
  その感情を
  コウルとエイリーンは知るよしもない。

〇中東の街
ジン「さて、まずコウルくんの 服の調達からかな」
コウル「え? あ、はい」
  改めて回りの人と姿を比べ、
  学制服の違和感を思い知る。
  ジンに案内され、町の服屋に行く。
コウル「う、う~ん」
  コウルはあまり自信がないながら
  服を選びーー。
コウル「こ、これでどうですか?」
  ジンにもアドバイスされながら服を着た。
ジン「うん。いいと思うよ」
エイリーン「よくお似合いです」
  似合うと言われ、
  コウルはすぐにその服にするのだった。
ジン「さて、後は──」
  ジンは荷物から一振の剣を取り出した。
ジン「これをきみにあげよう。 私のお古だけどね」
コウル「え、いいんですか?」
  青みがかったショートソード。
  お古と言ったが、そうは見えない
  綺麗な刀身の輝き。
コウル「ありがとうございます!」
  コウルは慣れない手付きで、
  腰に剣をかけるのであった。

〇荒野
  街を出た3人
コウル「ジンさんは、何か目的があるんですか?」
ジン「うん? そうだね。 きみたちにも言っておかないとね」
  ジンは先程の写真を取り出す。
ジン「私の友人だったカズ。 いやカーズを止めることだ」
コウル「友人を・・・止める?」
ジン「少し長くなるが、聞くかい?」
  2人はうなずく。
ジン「私とカズは元の世界では幼なじみでね。 遊んだり、競ったりしたものさ」
ジン「学校でも試験や体育で競いあっていた。 ただ──」
コウル「ただ?」
ジン「あいつは人づきあいが苦手かつ少し尊大でな。 またあの頃はクラスメイトもワルが多かった」
ジン「成績優秀、運動神経抜群なカズは いわゆるいじめの標的にされた」
ジン「私も止めようとしたが、 まあ、私も標的の1人だったから 止めれなくてね」
ジン「それだけならまだよかった。 だが、あいつの妹にまで手が及んだ」
ジン「そして、カズの妹は・・・自殺した」
「!」
ジン「そんな中、なんの悪戯か。 私とカズはこの世界に飛ばされた」
ジン「私はある意味助かったと思った」
コウル「なぜ・・・?」
ジン「カズはあのままではいじめっ子を やりかねないほど病んでいた」
ジン「こちらの世界にいれば落ち着くと思っていた。 だが甘かった」
コウル「え・・・?」
ジン「真実はわからないが、 カズは元の世界に干渉する方法を見つけた」
ジン「そしていじめっ子どころか、 元の世界を滅ぼす手段もあると・・・」
「な・・・!?」
ジン「この話はあいつ自身がしたことで信憑性はわからない。 だが本気の目だった」
ジン「止めようとしたが、あいつは姿を消した。 そして今に至るわけだ」
  ジンは一呼吸ついて、2人を見る。
ジン「私の旅はあいつを見つける旅。 きみたちは自由にしていいが・・・」
コウル「ジンさんとそのカズという人の事情に、 僕が突っ込んでいいかはわかりません」
コウル「でも、世界を滅ぼすなんて言われたら 放っておけるわけないです!」
ジン「ありがとう。 エイリーンちゃんは?」
エイリーン「わたしはあなたたちの言う 元の世界というのがわかりません」
エイリーン「ですがわたしは2人に助けられました。 その礼をしたいです」
エイリーン「それに、なにか思い出せる気がするのです」
ジン「ありがとう」
  ジンは2人に改めて礼をする。
  3人の当面の目的が今決まった。

次のエピソード:第2話 魔力の巡り

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