ABS

山本律磨

十話(脚本)

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山本律磨

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〇先住民の村
  第二幕
エビス「ふむ。こやつらも人間だったのか」
ドキ「いかにも。 タカマガハラの神々に寄り縋り、 その力を少しばかり分け与えられ、 代わりに人の可能性を否定した愚物共じゃ」
アシハラの民「構うこたあねえ。 こんな怠惰な連中斬って捨てちまえ」
ドキ「確かに。 アシハラの世の足を引っ張るやも知れぬ 狂信者よ」
  『ならばその妄信、ボクが解いて差し上げましょう』
  『・・・っていうか』
  『ちょっとどいてよトラ男!』
シバ「ったく。野蛮な国だこと」
「・・・」
シバ「なによ! 『どの口が!』って言いたいんでしょ! だったら面倒臭がらずに、 いちいちツッコミなさいよね!」
ドキ「エビス殿。変わり者同士、後は頼む」
エビス「こ、こら!」
シバ「なんだ!やんのかレッドチビ!」
エビス「タカマガハラ兵の妄信とやらを 解くのではないのか?」
シバ「あ、そうだったそうだった」
シバ「え~・・・こほん」
シバ「どーも皆さん。 それぞれ思う所もありましょうが、 ボクの言葉に耳を傾けて頂戴な」
シバ「ボクはシバ博士。 この島国を大陸にも負けない 強い国にするべく、 わざわざ海を渡り知恵を授けに参った者」
シバ「まあ、慈善家ってカンジ?」
シバ「ところでみんな知ってる?」

〇地図
シバ「大陸の人間達はすでに神、 すなわち天帝の支配から 解き放たれたんだよ」
シバ「そして今は人の王、 すなわち皇帝によって 新しい御世を築いてるんだよ」
シバ「その力の源ってなんだと思う?」
シバ「外に対しては無敵を誇る鋼の武器」
シバ「内に対しては安全に食料を得るための農耕」
シバ「つまりは『鉄』と『米』!」

〇先住民の村
シバ「お米と鉄さえあれば、 人はもう神を必要としなくていいんだよ。 ボクはね、 その技術をここに伝えに来たんだ」
シバ「アシハラの土は実に宜しい。 質の良い砂鉄もとれる。 正に比類なき繁栄を約束された島国」
シバ「畏れるべきは人の王。 敬うべきも人の王。 それこそが人の御世」
シバ「そして今後はボクのことは鉄米宰相と呼び 王と同等に崇め奉って・・・」
  『あーもう!ゴチャゴチャうるせー!』
ドキ「タケル様。 先ほどまでグーグー寝て・・・ いやお目覚めですか?」
タケル「おいタカマガハラの兵(つわもん)達!」
タカマガハラの兵「な、何だ!殺すならさっさと殺せ!」
タケル「腹、減ってねえか?」
タカマガハラの兵「・・・え?」
タケル「っていうか縄目をといてやれ!」
シバ「し、しかし危険ですよ~」
タケル「うるせえ! KだのPだのわけの分かんねえ 模様使いやがって!」
シバ「いえ、これは模様じゃなくて文字と言って」
タケル「いいから縄を切れ!」
シバ「ひいいっ!いやああん!」

〇先住民の村
タケル「ここは俺の国だ! お前らも、もう仲間だ!  たらふく食っていいぞ!」
タケル「おいおい!何ぼけっとしてやがる?」
タケル「だったら俺が先に食っちまうぞ!」
タケル「うんめーッ!」
タカマガハラの兵「で、では遠慮なく・・・!」
タカマガハラの兵「お、おありがとうございます! 大王様!」
タケル「タケルでいいよ! お前らはもう俺のダチだぜ! わはははは!」
シバ「百の説法より一度の宴。 さすがは比類なき英雄タケル大王!」
シバ「あなすばらしやー」
エビス「まことにそう思っているのか?」
シバ「はい?」
エビス「そなた渡来の博士であろう? 本当にあの男が英雄に見えるのか?」
シバ「・・・」
シバ「もっちろん」
エビス「左様であるか」
シバ「あら、いずこへ?」
エビス「我の役目は終わった」
エビス「と、いうか。何もしてないがな」
エビス「とにかく神的には あまり居心地のいい場所ではなかった。 我が島に戻る」
シバ「エビス様でしたっけ?」
エビス「何じゃい」
シバ「宇内(宇宙)に天魔鬼神数あれど、 そんな名前の神様 聞いたことないんですけど」
エビス「ならばこれを機会に、 名前だけでも憶えて帰ってくれたまえ」
シバ「まあ、神様なら仏頂面解いて、 もうちょっと人々の幸せを 寿いだら如何っすかね~」
エビス「・・・」
エビス「博士よ。 この島の民は神などいらぬと申していたな」
エビス「では、あの男はなんだ?」
タケル「宴だァーーーッ!」
アシハラの兵「タケル様!我らをお導き下さい!」
アシハラの兵「我等はタケル様と共に!」
アシハラの民「タケル様!タケル様!」
アシハラの民「タケル様!タケル様!」
エビス「あれこそまさに神ではないのか?」
エビス「少なくとも、 我よりはずっと神らしい神に見える」
シバ「さてね~。 人でも神でも どっちでもいいんじゃないかな」
エビス「なに?」
シバ「なんかそういう人達みたいだよ。 アシハラの民って」
シバ「現に自分達の代わりに面倒なこと全部 引き受けてさえくれるんなら、 タカマガハラにだって従ってたじゃん」
シバ「で、アイツらよりも 愉快で楽しい指導者が現れたら、 すぐに鞍替えしちゃった」
シバ「お米も鉄も 便利だ便利だっつって、 無邪気にあっさり受け入れちゃった」
シバ「なにひとつ誰一人自分の頭で考えないでさ」
シバ「この偉大なるシバ博士の、 芯食いまくってる耳障りの宜しいお言葉に鳥肌展開しちゃってる」
シバ「『まさに神展開!』っつって」
シバ「ここって本当に・・・」
シバ「サルの国ね」
エビス「貴様・・・」
シバ「おっと、ボクは観測してるだけだよ」
シバ「観測の数だけ宇内は存在する」
シバ「つまりはマルチバース」
エビス「学者の考えることは意味が分からん」
ドキ「少しよいか?」
エビス「ああ、我はもう出てゆくゆえ」
ドキ「席を外してほしいのはシバ博士じゃ」
シバ「え?・・・あ、いいっすよ」
シバ「あ、でも、 花の無いキャラ同志の会話は手短にね~」
「タイパタイパっすよ~♪」
エビス「アイツ、嫌い」
ドキ「さてエビス殿。少しご同行願いたい」
エビス「ご、ご同行だと? もしや夜陰に乗じて後ろからズバッと」
ドキ「お頼み申す。エビス殿」
ドキ「いや、エビス様」
エビス「へ?」
  つづく

次のエピソード:十一話

コメント

  • 最新話まで読了しました。
    エビスが島を出るキッカケとなった助けを求める声。
    そして神の謎。謎多き来訪者。第二幕、波乱の予感がしますね。

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