第75話 強引な駆け引き(脚本)
〇美術館
2021年 イリノイ州 ピオリア郡 ピオリア市内 レイクビュー芸術美術博物館
2人に迫る男が近づくとその場にいた全員が転び、起き上がろうとするとまるで『接着剤がつけられた』かのように
手と床が離れず、皆が困惑していた。男は斎王に一直線に歩を進めると
懐から拳銃を取り出し斎王に向ける
チョ・ヨンス「恋はいつだって『焦燥的』なんだよ、だからサッサと死んでくれよ灰色の悪魔」
斎王幽羅「レッドスモーク···?やっぱりお前なのか?なんで···『気が弱い』お前がなんでこんな···」
チョ・ヨンス「俺は変わったんだよ灰色の悪魔。気が弱い奥手のヨンスくんはもう居ない、それと···」
ヨンスは斎王の頭に銃口を突きつけ、怒りの表情を見せながら言った
チョ・ヨンス「『レッドスモーク』って呼ぶな···あの女の事を思い出す···!」
斎王幽羅「··· ··· ···嫌だよ。どれだけ変わったとしてもヨンスは俺が知ってるレッドスモークだ、それに変わりは無いんだ」
斎王幽羅「俺が出会った頃より性格も言動も変わった。けど···『中身』はまだあの頃のレッドスモークだと思う」
斎王幽羅「なぁ···何があったんだ?教えてくれ···ヨンス」
ヨンスは斎王の手に発砲、すると斎王の手の甲に『傷』がつけられ斎王は出血をし始める
鸞「な···なんで干渉できる···!?」
チョ・ヨンス「研究不足だな、覚醒能力は星と自身を出力元とし発生させる能力」
チョ・ヨンス「しかし万物の基本物質である空、火、風、水、土は干渉することが出来る。だがこの見識は間違いだ」
チョ・ヨンス「覚醒能力に干渉できるのは『星の力』だ。さっき言った五大元素は『星を創る』のにも必要な五大要素」
チョ・ヨンス「つまり『星に直接干渉する』能力であれば覚醒能力に干渉ができるんだよ」
鸞「摩擦を操る能力が星に干渉する能力だと言うのか?」
チョ・ヨンス「『少しだけ』だがな。摩擦が何か分かってるのか?」
チョ・ヨンス「摩擦は物体に働く重力とそれに抵抗する抵抗力の『差』に発生する物だ」
チョ・ヨンス「言い換えれば摩擦を操る能力は『重力と抵抗力を操作する』能力になる。俺は抵抗力の方を操作して操ってるが」
チョ・ヨンス「重力も多少操作できる。重力は『星が作り出す引力』、その力で覚醒能力に干渉できたってわけだ」
チョ・ヨンス「だがそれでも能力だけじゃ『傷をつける』程度しかできないがな。でもそれでも進歩だろ?」
チョ・ヨンス「銃じゃ多少肉をえぐる程度で終わるが···ナイフならどうだろうな?試してみようぜ?灰色の悪魔」
ギラりと不気味に光るナイフをヨンスは取り出し、斎王の首元にゆっくり近づける
鸞は体を大きく動かし立ち上がろうとするが、足と手は地面にピッタリくっついており
立ち上がることすらできず、斎王が攻撃される姿をただ指を咥えて見ているしかなかった
しかし鸞はこの『身動きが取れない状況』を打開しようと大きく息を吸った
鸞「鳥獣忍術『蜂鳥!!』」
鸞の口から放たれた『空気の塊』はヨンスを吹き飛ばし能力が解除される。鸞はすぐさま斎王起こし
その場から走り去ろうとした。しかし扉を開ける3歩手前で足は『接着剤で貼り付けられた』かのように動かなくなり
2人が後ろを振り向くと、ヨンスが2人に向かって手をかざしながら近づいてきた
チョ・ヨンス「방해하지 마세요!(邪魔するな!)」
鸞「ちっ···!あと少しだったが···もう一度蜂鳥をやるか···!」
鸞は体をヨンスの方に向けもう一度空気の塊を打ち出そうとするが、ヨンスは手を鸞に向けた
チョ・ヨンス「『引き裂かれる想い!』」
鸞「ぐぁぁぁっ!クソっ···『服と肌の摩擦力を高めた』か···!」
鸞はそう言って体を抑えると、鸞から血がポタポタと滴り落ちた。服と肌の摩擦を高め『互いが引き裂く』ように干渉したのである
万事休すかと思われた瞬間、マルティナ率いる警察達が現れヨンスに向かって発砲する
チョ・ヨンス「ちっ···!『届かぬ想い』!」
ヨンスは自身に発生する摩擦力をゼロにし、銃弾を『滑らせ』ながら発砲する。しかし1人で相手するには分が悪いのか
チョ・ヨンス「『抑えられない恋心』!」
その場に銃を捨てたヨンスは能力を使ってその場から逃走した
警察が後を追い、マルティナが銃を見ると『信じられない』という表情を見せながら斎王を見つめた
しかし斎王は鸞の怪我の具合を確認するや否や、マルティナに『病院に案内して欲しい』と頼む
マルティナ・バートン「あ··· ··· ···え···はい···!お前達、今すぐ幽羅様と仲間を病院へ案内しろ!」
斎王幽羅「鸞···大丈夫だからね?直ぐにエンチャントさんが来て治してくれるから···」
鸞「俺の体···どうなってるんだ?『腹周り』が熱いんだ···脱がせてくれ」
鸞の腹回りは血だらけで黄色い服が赤く染っていた。素人の斎王はひょっとしたら···と考えると鸞に返した
斎王幽羅「鸞は女の子なんだから···無闇に肌を見せちゃダメだよ。だよね?マルティナ」
マルティナ・バートン「は、はい···おっしゃる通りで···」
斎王幽羅「だから脱ぐのは病院ついてからね?それでいい?」
鸞はそんな斎王の顔を見ながら笑みをこぼす
鸞「わかった··· ··· ···ところで腕が震えてるぞ?俺は重いか?」
斎王幽羅「え?あ、いや···全然軽いよ!うん!ホント···軽い···よ」
鸞(武器をまぁまぁ隠し持ってるから重いはずだがな···ふっ、無理をしてなんになるんだか···)
鸞(··· ··· ···本当···俺にはもったいない男だな)
秘めた思いは心の奥に閉ざされた。この思いが通じるのは何時だろう
To Be Continued··· ··· ···