第2話 同じ適性を持つ者(脚本)
〇西洋の円卓会議
一ヶ月前──
ミシェラ「ナハト〜!大丈夫だった!?」
ナハト「ちょ・・・母様、いきなり抱きつかないでください!」
シュイ・ランファ「ミシェラ、聖闇隊・隊長としての自覚ないのですか?離れなさい!」
ミシェラ「あぁナハト〜・・・」
ナハト「有難う御座います、シュイ」
シュイ・ランファ「いえ、当然の事をしたまでです」
シュイ・ランファ「ところでナハト」
ナハト「はい?」
シュイ・ランファ「いつまでその姿なのですか?」
シュイ・ランファ「その姿だとエアリィが・・・」
エアリィ・クロムウェル「ちょ!?シュイさん!?」
シュイ・ランファ「あら?貴女は確かナハトの事が・・・」
エアリィ・クロムウェル「あぁー!それ以上言わないでぇー!」
マリ・クズノハ「ナハトお兄ちゃん。早く変身したほうが良いよ」
マリ・クズノハ「じゃないと、エアリィお姉ちゃんの身が持たない」
ナハト「うん。そうさせてもらうよ」
ニュイ「これで、良いかな?」
マリ・クズノハ「うん」
シオン・ビュティスカ「・・・茶番は、いつまで続くのかしら」
ニュイ「あ!・・・すみません、シオン」
シオン・ビュティスカ「いいえ。貴女のせいじゃないわ」
シオン・ビュティスカ「さぁ、そろそろ始めましょう。もうすぐあの方が来るわ」
マリ・クズノハ「あ!来た」
アンジュ「皆さん、お待たせしてすみません」
アリュシオーネ「いいえ。そんなに待ってはいませんので、大丈夫です」
アリュシオーネ「ちょっと茶番があったぐらいで・・・」
アンジュ「茶番?・・・茶番というのは?」
アリュシオーネ「それはですね・・・」
エアリィ・クロムウェル「あぁー!」
アンジュ「ふふ。微笑ましいですね」
ファム・ティターニア「アリュシオーネ。エアリィをからかわないの」
アリュシオーネ「・・・すみません」
ファム・ティターニア「さぁ姫様。始めましょう」
アンジュ「そうですね。では始めましょう」
アンジュ「『魔族因子』について・・・」
〇大広間
ニュイ「ん?あの子は・・・」
ラレシィエンヌ「・・・」
ニュイ「確かあの子は、あの時の・・・」
ニュイ「話しかけてみよう」
ラレシィエンヌ「・・・」
ニュイ「君・・・大丈夫?」
ラレシィエンヌ「『あ・・・貴女は?』」
ニュイ「『私はニュイ。貴女の名前は?』」
ラレシィエンヌ「『え!私の声が聴こえるのですか!?』」
ニュイ「『聞こえるも何も、私はただ貴女の心に話しかけているだけなのだけど』」
ラレシィエンヌ「『私の心に・・・』」
ラレシィエンヌ「『あ!もしかして、念話ですか?』」
ニュイ「『そう念話』」
ラレシィエンヌ「『あの人以外で私に話しかけられるの、初めて・・・』」
ニュイ「『あの人って?』」
ラレシィエンヌ「『あの人っていうのは、入学初日、私を助けてくれた男性の方です』」
ラレシィエンヌ「『お礼を言いたいのですけど、あの日以来お会いしてなくて・・・』」
ニュイ「『そうなんだ』」
ラレシィエンヌ「『はい!』」
ニュイ(まぁ私のことなんだけど、黙っとこう)
『おい貴様、ニュイ様から離れろ!』
ラレシィエンヌ「『!?』」
ニヒト「底辺貴族が、馴れ馴れしいんだよ」
ニヒト「ふー」
ニヒト「大丈夫ですか?ニュイ様・・・」
ニヒト「・・・」
ニヒト「て、ニュイ様!」
ニュイ「大丈夫?」
ラレシィエンヌ「『は・・・はい・・・』」
ニヒト「ニュイ様!何でそんな底辺貴族なんかの味方なんか・・・」
ラレシィエンヌ「『うぅぅ・・・』」
ニュイ「貴方・・・さっきから言わせておけば・・・」
『あら?なんの騒ぎかしら?』
アリュシオーネ「いったい、何があったのですか?」
ニヒト「あ・・・貴女は、アンジュ様!」
ニヒト「なぜここに・・・」
アンジュ「なぜここに・・・って、このパーティーの主催は私なのよ。その主催者が居て何かおかしくて?」
ニヒト「いえ。おかしくはないですが・・・」
その時、ニュイはアンジュに念話で事の顛末を伝えた。
するとそれを聴いたアンジュは、ニヒトに怒りの表情を浮かべ、言葉を発した。
アンジュ「ニヒトさん」
ニヒト「は・・・はい」
アンジュ「今起きた出来事、どうやら貴方が悪いみたいですね」
ニヒト(何故それを!?)
ニヒト「いやいや。何かの間違いですよ」
ニヒト「そこにいる底辺貴族が何かやったのでしょう──」
アリュシオーネ「貴方・・・姫様の言う事が信じられないというの?」
アリュシオーネは、剣を抜剣。その切っ先をニヒトの喉元に向けた。
その様子を観ていた会場内に居た人々は、ざわめき出した。
アンジュ「アリュシオーネ。剣を納めなさい」
アリュシオーネ「わかりました」
ニヒト父「いったい何があったというのだ」
アンジュ「侯爵」
ニヒト父「は・・・はい」
アンジュ「後でお子さんには言い聞かせておいてくださいね」
ニヒト父「は・・・わかりました」
ニヒト父「ほら行くぞ」
ニヒト「・・・」
アンジュ「・・・」
アンジュ「・・・」
アンジュ「さて」
アンジュ「貴女は大丈夫ですか?」
ラレシィエンヌ「・・・」
アンジュ「無理なさらなくて大丈夫ですよ」
ラレシィエンヌ「・・・」
ユースティティア「姫様。その子、どうやら腰を痛めたようです」
アンジュ「あら!それは大変。すぐ医務室に連れて行かなければ」
アリュシオーネ「それなら、私が連れていきます」
アンジュ「アリュシオーネ・・・」
アンジュ「わかった。任せたわ」
アリュシオーネ「はい」
アリュシオーネ「さぁ、行きましょう」
ラレシィエンヌ「・・・」
アンジュ「ところでニュイ」
ニュイ「はい」
アンジュ「あちらのバルコニーにて二人っきりで話せないかしら?」
ニュイ「別に構いませんが・・・」
アンジュ「なら行きましょう!」
ニュイ「ちょ・・・姫様!?」
〇洋館のバルコニー
アンジュ「やっと二人っきりになれましたね!」
ニュイ「姫様!?」
アンジュ「もぉー!二人っきりで居る時は呼び捨てで良いって言ったでしょ!」
ニュイ「あぁーごめん、アンジュ」
アンジュ「まったく──」
アンジュ「私達は従姉弟同士なのだから、気軽に話しましょう」
ニュイ「そう・・・ですね」
ニュイ「・・・さて」
ニュイ「何から話しましょうか?」
アンジュ「決まっているじゃない。あなたの学校での話に!」
ニュイ「私の・・・ですか?」
アンジュ「はい!」
ニュイ「そうですね──。何から話しましょうか・・・」
『姫様。そろそろ・・・』
アンジュ「あらあら、従者が来てしまいましたわ」
アンジュ「ニュイ。また今度、お話しましょうか」
ニュイ「わかりました。では──」
アンジュ「・・・」
アンジュ「まったく──。空気を読みなさい」
『すみません──。』
『ですが・・・』
アンジュ「まったく──」
〇大広間
ニュイ「・・・」
ユースティティア「ニュイさん。姫様とはどういうお話を?」
ニュイ「それが、話そうとしたら従者が来て何も話せなかった」
ユースティティア「そう・・・ですか」
ユースティティア(従者、空気読みなさいよ)
アリュシオーネ「只今戻りました」
ニュイ「アリス、あの子は?」
アリュシオーネ「あの子なら今医務室で安静にしています。その後、親御さんが来て今は親御さんと一緒に居ます」
ニュイ「そう──。良かった〜」
アリュシオーネ「ところでニュイ」
ニュイ「はい?」
アリュシオーネ「確かこのあと、姉君二人の演奏に合わせて、歌うのでは?」
ニュイ「・・・」
ニュイ「あ!・・・忘れてた!」
ニュイ「私、行ってくる」
ユースティティア「・・・」
アリュシオーネ「・・・」
ユースティティア「ねぇアリュシオーネ」
アリュシオーネ「はい」
ユースティティア「従姉弟同士の恋って、どう思う?」
アリュシオーネ「別に良いのでは?」
ユースティティア「でも、私の水晶占いでは、姫様とナハトは──」
アリュシオーネ「それは貴女の占いの結果であって、未来はあの子達で決めることだから、占いの結果が全てではないのでは?」
ユースティティア「それはそう・・・だけど──」
アリュシオーネ「何か不穏な結果でも出たのですか?」
ユースティティア「それが・・・」
〇教会の控室
アイネ「うわ!」
ニュイ「ごめん──。遅れた・・・」
クライネ「大丈夫よぉ。そんなに待ってないからぁ~」
アイネ「もぉ──。びっくりしたじゃない!」
ニュイ「ごめんって・・・」
クライネ「まぁまぁ二人とも。そこら辺にして、早く着替えて行くわよ」
アイネ「それもそうね」
アイネ「さぁ行くわよ二人とも!」
ニュイ「はい!」
クライネ「うん!」
〇大広間
『そろそろ始まるみたいだぞ!』
『楽しみだわ!』
『お!来たみたいだぞ!』
アイネ、クライネ、ニュイの三人は、持ち場につき、アイネとクライネはバイオリンを。ニュイはマイクを持ってスタンバイした。
そして、パーティー最後の催しが始まった。
アイネ「・・・」
クライネ「・・・」
ニュイ「・・・」
アイネとクライネの二人のバイオリン演奏に合わせてニュイは歌い、その歌声は会場内に響き渡る。
『いつ聴いても良いわ。ニュイ様の歌声は』
『そうだな。なんだか聴いていると身も心も癒される気分になる』
催し物は、夜遅くまで続いた──
〇ファンタジーの教室
翌日
ナハト「パーティー後の次の日の授業は午後からだけど」
ナハト「歌いすぎた──」
ナハト「喉が・・・若干痛い──」
『お!どうしたナハト。顔色悪くして』
『どこか、具合でも悪いのですか?』
ナハト「いやいや大丈夫」
ナハト「ごめんよ、心配かけさせちゃって」
『大丈夫だって』
『気にしてませんよ』
ナハトは同級生と話していると、教室の扉が開き、ファムがやってきた
ファム・ティターニア「みんな。授業始め──」
ファム・ティターニア「てナハト、大丈夫?」
ナハト「うぅぅ。若干喉が痛いんだ」
ファム・ティターニア「それは由々しき事態。すぐ医務室に行ってきなさい」
ナハト「は・・・はい」
ファム・ティターニア(私、昨日のパーティー行ってないけど、歌いすぎたのかしら・・・)
〇保健室
マリ・クズノハ「あれ?ナハトお兄ちゃん?どうしたの?」
ナハト「うぅぅ。ちょっと喉が若干痛くてね・・・」
マリ・クズノハ「それは大変。すぐ治療しなきゃ!」
マリは、すぐに喉に良い薬草を煎じたお茶を作り、ナハトに飲ませた
ナハト「では早速──」
マリ・クズノハ「どうナハトお兄ちゃん?」
ナハト「・・・」
ナハト「・・・」
ナハト「・・・」
ナハト「・・・」
ナハト「うん。完全ではないけど、だいぶ良くなったよ!」
マリ・クズノハ「良かった──」
ナハト「ところでマリ」
マリ・クズノハ「どうしたの?」
ナハト「このことは母様には黙っといてくれないか?」
ナハト「言っちゃうと、秒で飛んでくるから──」
マリ・クズノハ「うん、わかった!」
ナハト「それじゃそろそろ・・・」
マリ・クズノハ「うん。じゃあねナハトお兄ちゃん!」
ナハト「ああ」
マリ・クズノハ「・・・」
マリ・クズノハ(ごめんナハトお兄ちゃん。多分伝わってるかも──)
〇洋館の一室
ミシェラ「ナハト〜!?」
ヒュルステイン大公「ちょ!?ミシェラ。落ち着きなさい!」
ミシェラ「ああ!?」
ヒュルステイン大公「だめだ私一人の力では抑えきれん」
ヒュルステイン大公「アリス、おるか?」
アリュシオーネ「はいここに」
ヒュルステイン大公「君も手伝ってくれ!」
ヒュルステイン大公「私──」
ミシェラ「ナ!?」
ヒュルステイン大公「一人の──」
ミシェラ「ハ!?」
ヒュルステイン大公「力では──」
ミシェラ「ト〜!?」
ヒュルステイン大公「抑えきれん──」
アリュシオーネ「・・・」
アリュシオーネ「わかりました」
アリュシオーネ「フェニックス」
『どうしたアリュシオーネ』
アリュシオーネ「貴方も手伝って下さい」
『・・・わかった』
ナハトのところに行こうとしたミシェラを、大公とフェニックスの力を借りたアリュシオーネは、必死に止め
最終的にミシェラを暫く寝かせることにした。
アリュシオーネ「奥様──すみません」
ミシェラ「う!」
ヒュルステイン大公「ふー。助かったよアリス」
アリュシオーネ「いえいえ」
〇おしゃれな廊下
ナハト「なんか・・・今、母様に呼ばれた気がしたけど──、気のせいか・・・」
ナハト「・・・どうやら、午後の授業が終わったみたいだ」
ナハト「うーん。これからどうしよう──」
ラレシィエンヌ「『あ・・・あの』」
ナハト「ん?」
ラレシィエンヌ「『・・・やっと会えました』」
ナハト(昨日会ったばかりだけど、話合わせとこう)
ナハト「君は確かあの時の──」
ラレシィエンヌ「『はい』」
ナハト「随分と久しぶりだね」
ラレシィエンヌ「『はい!』」
ラレシィエンヌ「『もし宜しければ、このあと、お時間ありますか?』」
ナハト「時間ならあるけど──。どうしてだい?」
ラレシィエンヌ「『何かお話でもしようかなぁ・・・って思いまして』」
ナハト「良いよ」
ラレシィエンヌ「『本当ですか?』」
ラレシィエンヌ「『やったー!』」
ナハト「随分と嬉しそうだね」
ラレシィエンヌ「『それはもちろん、そうですよ』」
ラレシィエンヌ「『なにせ、貴方は私にとって──』」
ラレシィエンヌ「『・・・』」
ラレシィエンヌ「『・・・って、何でしょうね?』」
ナハト「ハハハ!面白い子だね!」
ラレシィエンヌ「『もぉー。笑わないでください!』」
ナハト「ハハハ!ごめんごめん──」
ラレシィエンヌ「『まったく──』」
〇華やかな裏庭
二人は学校の庭園にある席に座り、談話を始めた
ナハト「さて、何を話そうか・・・」
ラレシィエンヌ「『それでしたら、まず互いの得意な魔術の属性から話しましょうか?』」
ナハト「・・・そうだね。そうしよう」
ナハト「まず俺から。俺の得意とする魔術属性は『時空』。いわゆる『干渉魔術属性』の一つだね」
ラレシィエンヌ「『貴方もですか!?』」
ナハト「貴方も・・・ってことは君も?」
ラレシィエンヌ「『はい私もそうなんです』」
ラレシィエンヌ「『そう・・・なんですが』」
ナハト「ん?どうした?」
ラレシィエンヌ「『・・・実は私、知っての通り言葉を発せないので、幾ら適性があっても魔術が使えないんです』」
ラレシィエンヌ「『そのせいで昔から酷く虐められてきました』」
ナハト「それは、さぞかし辛い過去だったんだね」
ラレシィエンヌ「『でも、辛くあっても支えてくれた人たちがいたんです』」
ナハト「支えてくれた人たち?」
ラレシィエンヌ「『両親と私の家に仕える従者達の皆さんです』」
ラレシィエンヌ「『両親は、言葉を発せないのならと、手話を習わせてくれましたし──』」
ラレシィエンヌ「『従者達の皆さんは、私の考えてくれていることや、やろうとしていることを先んじてサポートしてくれました』」
ナハト「それは良かったね」
ラレシィエンヌ「『はい!』」
ラレシィエンヌ「『・・・』」
ラレシィエンヌ「『ところで・・・』」
ナハト「ん?」
ラレシィエンヌ「『貴方と会ったのは一ヶ月前の事ですが』」
ラレシィエンヌ「『それ以前にもどこかでお会いしたことありますか?』」
ナハト「いや・・・無いと思うけど、どうしてだい?」
ラレシィエンヌ「『あの時もですが、今回も初めて会った気がしないんです』」
ラレシィエンヌ「『何ででしょうね?』」
ナハト「さぁ俺にもわからないな」
ラレシィエンヌ「『うーん。謎・・・』」
二人は話しているうちに、結構時間が経っていたのに気付き、二人は談話をお開きにしようかと思い、
立ち上がり、別れようとした。
とその時、ナハトはあることに気付く
ナハト「待って」
ラレシィエンヌ「『はい?』」
ナハト「もしかしたら君・・・、無詠唱なら魔術使えるんじゃ・・・」
ラレシィエンヌ「『無詠唱・・・ですか?』」
ナハト「そう無詠唱」
ナハト「俺の知り合いに『無詠唱魔術ならお任せあれ!』って言っている人がいるから、紹介するよ」
ラレシィエンヌ「『本当ですか?』」
ナハト「ああ」
ラレシィエンヌ「『ありがとうございます!』」
ナハト「じゃあ後日」
ラレシィエンヌ「『はい!』」
ラレシィエンヌ「『・・・』」
ラレシィエンヌ「『・・・本当にどっかで会った気がするのは、何故だろう──』」
・・・次回に続く──