七話(脚本)
〇太子妃の御殿
ドキ「見たか。 蛮神を退けるアシハラの守護神、 その力を」
ドキ「ヒルコは蛭の子にあらず」
ドキ「我らに光をもたらす昼の子じゃ」
ドキ「そしてタケル様はその依代たる在人神」
ドキ「さあ皆の衆、今宵もタケル様を讃えい!」
『うるせーーーーーッ!』
タケル「在人神?・・・ガラじゃねえよ」
タケル「俺はただ強くなりてえだけだ」
タケル「神様よりも強けりゃあ、 神様よりも自由になれる」
タケル「お前らは俺と一緒に自由に生きるんだ! 分かったか野郎どもーーーーーーーー!」
ドキ「うむ。 いかにこの地に鉄や稲をもたらそうと 大王様の器なくしては国は成り立たぬ」
ドキ「そなたの知恵のみで アシハラを導いておるなどと、 努々思うでないぞ」
シバ「モチロン。ここはタケル様あっての国」
シバ「この人気。 我が故郷の王侯とて太刀打ちできませんわ」
ドキ「分かればよい」
タケル「さあみんな!食え食えーーー!」
タケル「ぼんやりしてっと俺が先に食っちまうぞ!」
シバ「・・・」
〇太子妃の御殿
ミコ「そんなタケル様の体に神様が宿ったのは、まだずっと子供の頃でした」
エビス「随分と昔だな」
ミコ「ちなみに背丈はすでにエビス様よりも若干」
エビス「話を進めよ」
〇祈祷場
『熱いーーーッ!熱いよーーーッ!』
タケルの母「タケル!ああ、タケル!」
タケルの父「呪術師はまだか!」
タケルの母「早く!タケルが死んでしまいます!」
ドキ「族長!連れて参りました!」
ミコ「呪術師のミコにございます!」
タケルの父「バカな!まだ童ではないか!」
ドキ「ミコは村一番の呪術師でございます」
ミコ「いかにも。 亡き父母より呪術の奥義は 会得しておりまする! 私にお任せ下さりませ!」
タケル「熱い・・・熱い・・・」
タケルの父「わ、分かった。頼むぞミコ!」
ミコ「荒ぶる神よ。静まりたまえ」
ミコ「我が言葉。聞き届けたまえ」
ミコ「その名を聞かせたまえ」
ミコ「強く、偉大なる、あなた様の恩名を」
タケル「・・・」
タケル「・・・名だと?」
ミコ「・・・」
タケル「ふん、俺の名か?そうだな・・・」
ヒルコタケル「ヒルコ」
ミコ「ヒルコ?」
ドキ「聞いたことがある。 タカマガハラを追われし呪われた神じゃ」
ヒルコタケル「否!」
ドキ「ぐわあああッ!」
ミコ「ドキ様!」
ヒルコタケル「タカマガハラが俺を捨てたんじゃねえ」
ヒルコタケル「俺がアイツらを捨てたのさ」
ミコ「・・・消えた?」
ミコ「・・・!」
ヒルコタケル「なんてことも出来るぜ」
ヒルコタケル「俺は光の神、ヒルコ」
ヒルコタケル「全てを焼き払う光の神だ」
タケルの父「ふざけるな! 日輪の化身はタカマガハラの主神 アマテラスオオミカミ様だ!」
タケルの父「偽神よ!早く我が子から離れろ!」
ヒルコタケル「勘違いすんなよ。 俺はコイツを助けてやってんだぜ」
タケルの父「なに?」
ヒルコタケル「ここ数日、 随分と病に臥せってたそうじゃねえか」
ヒルコタケル「俺の炎が、 タケルの命の灯になってんだよ」
タケルの父「だ、誰がそんな戯言を信じるか!」
ヒルコタケル「そうかい。じゃあこれまでだ」
ヒルコタケル「我が子の骸を抱いて死ぬまで悔やめ」
タケルの父「タケル!しっかりしろ! 邪神は去ったぞ!」
タケルの母「・・・タケル?」
タケルの父「タケル・・・タケル!」
タケルの母「・・・そんな」
タケルの母「いやあああああッ!」
タケルの父「ミコ! 神を・・・ もう一度ヒルコを降ろしてくれ!」
タケルの母「ヒルコ様! どうかタケルをお救い下さい!」
ミコ「あしはらのおおかみ! はらえどのおおかみ! ひるこおおみかみ! ひるこおおみかみ!」
ミコ「タケル様を救いたまえ! タケル様に宿りたまえ!」
ミコ「あしはらのおおかみ! ひるこおおみかみ!」
タケルの父「あしはらのおおかみ! ひるこおおみかみ!」
タケルの母「あしはらのおおかみ! ひるこおおみかみ!」
ヒルコタケル「ヒルコオオミカミか・・・」
ヒルコタケル「悪かねえぜ!」
ヒルコタケル「聞けや族長!聞けや人間ども!」
ヒルコタケル「タカマガハラが お前達に何をもたらした?」
ヒルコタケル「お前達の嘆きにも苦しみにも 何一つ答えずに、 空の上からヘラヘラ笑って見てるだけだ! そのくせ捧げろ崇めろ奉れだと?」
ヒルコタケル「そんな勝手な連中に 未来永劫這いつくばって生きていく! それでいいのか?」
ヒルコタケル「日輪は神だけのものじゃねえ! いやお前達人間のものだ!」
ヒルコタケル「光が欲しいか?」
ヒルコタケル「ならば俺がお前達の光になってやる!」
ヒルコタケル「炎という光にな!」
〇炎
〇太子妃の御殿
タケル「俺達は自由だァーーーッ!」
『以来私は大王様の荒ぶる心と体を慰め、ヒルコ神の呪い・・・』
『いえ、力を抑え込んできました』
『かの渡来人が現れるまでは・・・』
シバ「いよっ!救世主ヒルコタケル様っ!」
シバ「タケル大王の徳にヒルコ神の力が加われば 必ずや神々との戦いに勝利できま Showターイム!」
シバ「なんちゃってん♪」
タケル「その前にミコだ」
シバ「ふむ?」
タケル「神降ろしのミコは俺の代わりに タカマガハラに捕まってるようなもんだ! 必ず助けだしてやる!」
シバ「いかにも!その前にミコ!」
シバ「そしてその前に肉!」
タケル「そうだそうだ!精をつけねえとな!」
シバ「ふむふむ。大変よろしい。 それでこそ王の器です」
ドキ「チッ、女ごときめが 大王様を操れると思うでないぞ」
シバ「嫌だな~操るなんて~ そんなつもりさらさらありませんよ~」
シバ「私はこの未開の地に 新しい時代をもたらしたいだけです」
シバ「なので~足手まといは そろそろ引っ込んで下さると 有難いんですケド~」
シバ「古い時代のお爺ちゃん♪」
ドキ「ぐぬぬぬ・・・」
『気分を害したらすまぬが・・・』
〇牢獄
エビス「そなたらの王はもしかして・・・」
エビス「バカなのではないか?」
ミコ「う~ん」
ミコ「食べないなら私が頂きますね」
エビス「ふん。同じ穴の狸であったか」
エビス(我は気ままなひとりがみ)
エビス(だからどうした・・・)
〇山間の集落
シバ「そう」
シバ「日輪はただひとつ」
シバ「さあ、昇れーーーーー!」
〇空
〇牢獄
エビス「な、なんじゃ!?」
『敵襲!敵襲!』
『人間どもが攻めてきたぞーーッ!』
エビス「アシハラが!」
ミコ「・・・タケル様」
つづく