ABS

山本律磨

六話(脚本)

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山本律磨

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〇カラフルな宇宙空間
  天地初めて発けし時、高天原に成れる神の名は、天之御中主神。次に高御産巣日神。次に神産巣日神。
  この三柱神は、皆ひとりがみと成りまして身を隠したまひき。
  次に宇摩志阿斯訶備比古遅神。
  次に天之常立神。
  この二柱の神もまたひとりがみと成りて、身を隠したまひき。
  次に・・・
  省略。
  次に伊邪那岐神、次に伊邪那美神。
  ここに天つ神、諸の命もちて伊邪那岐命、
  伊邪那美命、二柱の神に
  「この漂へる国を修め理り固め成せ」と
  詔て天の沼矛を賜ひて言依さしたまひき。
イザナキ「しからば 吾と汝とこの天の御柱を行き廻り逢ひて、 みとのまぐはひ為せむ」
イザナミ「あなにやし、えをとこを」
イザナキ「あなにやし、えをとめを」
  然れどもくみどに興して生める子は
  水蛭子。

〇沖合
  この子は葦船に入れて流し去うてき。
  亦、子の例には入れざりき。

〇牢獄
エビス「・・・」
ミコ「ぼっちゃん」
ミコ「ぼっちゃん」
エビス「・・・」
ミコ「ちゃんと私の話聞いてるんですか? なにか別のこと考えてません?」
エビス「・・・」
ミコ「あとこれ」
ミコ「ぼんやりしてないできちんと食べないと、ここから先、生きぬけませんよ」
ミコ「さあ、ぼっちゃん。お食べ」
ミコ「何をムスッとしてるんです?ぼっちゃん」
ミコ「しょうがないな~」
ミコ「はい。あ~んして」
エビス「自分で食えるわい!」
エビス「大体そなたの言っていることは、 何もかも的を外れておる」
ミコ「へ?」
エビス「まず神は飯なぞ食さずとも生きていける」
エビス「次にぼんやりしているのは そういう性格で ムスッとしているのは こういう顔だからだ」
エビス「そして最後に、 我はぼっちゃんではない! 恐らくそなたより年上じゃ!」
エビス「全く。 どいつもこいつもここの連中は 神を何だと思ってる」
エビス「神やぞ」
ミコ「で、どこまで話しましたっけ?神様」
エビス「あのスサノオとかいう奴についてじゃ」

〇沖合
  『スサノオはタカマガハラの大神イザナキの子にして海神の総大将』

〇沖合(穴あり)
  『私達人間の独立をもっとも拒み他の獣の如く山野に追い立てようとする荒ぶる神』
エビス「海神」
エビス「ようは魚の親分か」
ミコ「意外とお口の悪いことで」
ミコ「その海神スサノオの目を逃れて この島国に訪れた異邦人は、 坊ちゃんで二人目なんです」

〇先住民の村
  『一人目は私達に鉄の作り方と稲の育て方を教えてくれた』
  『その人が来てから私達は変わった』
  『神に頼らず人間だけの力で新しい時代を築き上げようとしはじめた』
タケル「野郎ども!俺達は自由だーーーッ!」

〇牢獄
エビス「自由・・・?」
ミコ「自らを由とする」
ミコ「私には、 その言葉の意味が正直よく分かりません」
ミコ「でも大王様が大切になさっている言葉なら 私もそれに寄り添いたいんです」
エビス「ミコ、と申したか」
ミコ「はい。偉大なるタケル大王様の幼馴染♪」
エビス「その幼馴染が 何故この砦に捉えられておる?」
ミコ「あら?」
ミコ「やっと私めにご興味をもたれましたか? 異国の小さな神様」
エビス「だ、誰がそなたになど!」
エビス「我が探しておるのはただ一人。 この島国に来たのは、 その者が我を呼ぶ声を聞いたからじゃ」
エビス「そなたのように能天気な 甘ったるい声ではないぞ。 もっとこう落ち着いていて、 それでいて切実で、 それでいて・・・」
ミコ「はいはーい。 じゃあ早くその人に会えるといいですねー」
ミコ「今後のご活躍をお祈りしてマース」
「フン!」
  『ええい。騒がしい』
スサノオ「何故アメノトリフネは、 斯様な連中ばかり捕縛するのだ」
スサノオ「チッ。そこの赤いチビ」
エビス「エビスじゃい」
スサノオ「アメノトリフネに感謝いたせ。 あれもまた神族。 同じ神のよしみで 巻き添えを食わぬように気を回したのだ」
スサノオ「まあ、鳥の考えなどよく分からぬがな」
スサノオ「さてミコよ」
ミコ「何ですか」
スサノオ「此度の戦い。ヒルコが出て来たぞ」
ミコ「・・・え?」
スサノオ「私の挑発にまんまと乗せられてな」
スサノオ「これではっきりしたな。 お前がいなくても、少しの間なら ヒルコは現世に降臨できる」
スサノオ「『神降ろしの術』など不要ということだ」
ミコ「・・・そうですか」
ミコ「よかったです。 これでみんな、 人質の私を気にかけることなく 戦うことができます」
スサノオ「確かに」
スサノオ「お前は人間にとって、 いやタケルにとってもう用済みとなる。 残りの余生、安心して獄を抱き続けろ」
ミコ「・・・」
スサノオ「ヒルコを招き 人間どもに無益な夢を与えた、 罪深き神降ろしのミコよ」
スサノオ「お前の身に光が降り注ぐことは 二度とない」
スサノオ「ハハハ・・・ハハハハハーーーッ!」
ミコ「・・・」
エビス「ふむ。なるほど」
エビス「お前達が 人間に疎まれ嫌われ抗われる理由が 今、はっきり分かった」
ミコ「・・・」
スサノオ「・・・」
スサノオ「なに?」
エビス「あの長老から聞いたが この島国には八百万も神がおるそうだな」
エビス「で、お前のように おなごをいたぶって喜ぶ下劣なヤツは、 何百万人おるのだ?」
エビス「さすがは小さな未開の島国。 反吐が出る」
スサノオ「我が武を知らぬ小さき渡来の神よ。 ほかに言い残すことはあるか?」
スサノオ「大蛇の剣の錆にしてくれる!」
エビス「・・・ふむ」
エビス「試してみるか?」

〇カラフルな宇宙空間

〇牢獄
スサノオ「・・・!?」
ミコ「も、申し訳ありません!スサノオ様!」
ミコ「ぼっちゃんは見たところ、 未だ年若き神! 荒ぶる戦神の恐ろしさを知らぬのです!」
ミコ「そもそも私達の戦とは 何の関わりもない童です! どうか解き放ち下さい!」
エビス「・・・」
スサノオ「それは姉君の采配である」
ミコ「ではアマテラス様にお取り次ぎを! どうかエビス殿だけは解放して下さい!」
スサノオ「差し出がましい! 獣ごときが日輪の女神に物など申すな!」
ミコ「も、申し訳ございませぬ」
スサノオ「・・・」
スサノオ「小さき神よ。獣に救われたな」
エビス「と、いうことにしておこう」
スサノオ「・・・フン」

〇城壁
スサノオ「・・・」

〇カラフルな宇宙空間

〇城壁
スサノオ「震えている?この俺が・・・」
スサノオ「エビス。一体、何者だ?」
  つづく

次のエピソード:七話

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