9-ミラクルレター(脚本)
〇教室
赤井緋香琉「そうだ。沙織知ってるか?」
ある日のこと、教室に来ていた緋香琉の切り出しに彩音と沙織、そしてクロスの視線は緋香琉に向けられた。
赤井緋香琉「最近クラスで流行ってるんだけど」
鈴木沙織「え、何々、何か面白い噂?」
赤井緋香琉「いや・・・何か都内で有名な『都市伝説』らしいんだけど・・・」
神月彩音「都市伝説・・・?」
赤井緋香琉「前にもそういう噂があるってのは聞いたんだけどさ、この連休中にクラスメイトがその『都市伝説』に遭遇したらしいんだよなあ」
クロス「あぁ、それでクラスが騒然となっていたのよね。沙織も聞いたことある? あの・・・」
とクロスが問いかけかけた時、沙織が何かを思いついたように表情を変え口を開いた。
鈴木沙織「それってもしかしてあれかな?」
鈴木沙織「数多くある都市伝説の中でも割と経験談も多いし、度々女子高生の中でも話題に上がるし」
神月彩音「何それ?」
鈴木沙織「『ミラクルレター』 ・・・って言われてる都市伝説だよ」
日本を始め世界各地では実体がなくかつ科学的に証明されていない話はいくつもあり、
都市伝説もその名の通り都市を中心に起こる怪奇現象の事である。
鈴木沙織「悩みを持った人に手紙が届いて、気がついたら知らない場所にいるんだって」
鈴木沙織「そこにいる人達が抱えてる悩みを解決してくれるらしいよ」
赤井緋香琉「しかも解決してくれるのはまさしくイケメンや美少女だって聞いたぞ?」
神月彩音「何それ、ホラーじゃないの?」
占いなどもそうだが、言い伝えのみで実証はなく、目に見えない者を信じると言う事に違和感を感じる人も現れる。
本人にとって誰にも話せない悩みを解決してくれた存在として『奇跡の手紙』・・・ミラクルレターと呼ばれるようになった。
映像に残っているわけでもなく、それを証明するものはどこにもない。
だが他の都市伝説より遥かに見たという者が多い事から実在するのではないかと言われている。
〇電車の中
そんなとある休日、一日家で過ごす予定だった彩音は
沙織より呼び出されるのだった。
『今日午後三時から販売される限定パフェがあるんだよー! 折角だから彩音も行こうよ!
新宿にあるんだけど・・・』
と店と時刻限定パフェの文字がある画像を送られ、彩音はあの騒動の起きた新宿駅に向かっていた。
神月彩音(この線で合ってるよね・・・?)
線路を見直しながらも誰にも言えぬ不安が過り
神月彩音(さ、最悪フローラで家に帰ればいいし帰れない事はないから・・・)
と携帯を取りに鞄に手を伸ばした時、何かを掴んだ。
違和感を感じ、そんなものを入れた覚えもなく、掴んだままに取り出した。
神月彩音(手紙?)
度思い返せどこんなもの入れた覚えはなく確認の為裏返しても差出人のような名前はない。
誰かに向けて書いた記憶もなければどうしてもその正体が気になり、封を開けると中には二つ折りの手紙が入っていた。
そして中身を知りたく手紙を開いた途端電車が揺れ、反動で文章から目が離れると違和感に気づいた。
〇謎の扉
神月彩音「・・・え?」
電車内の座席に座っていたとは言え、他にも多くの人が乗車していた。
しかし揺れた途端顔を上げた時、そこには自分以外誰も座っていなかったのだ。
怪奇現象と言える事態に思わず立ちあがり辺りを見渡すとどこにも人の気配はなく、そして気がつけば何も無い場所に立っていた。
神月彩音「なに、これ・・・」
視線は自然と奥へと向かい、その先には周りが何も無いこともあり目立つ焦げ茶の扉。
振り返れば座っていたはずの座席はなく、他に道や扉は見当たらない。
それはまるでそこしか進む先がなく、息を呑むと彩音は扉へ向けて歩き出した。
扉のドアノブに手をかけ、この先何が待ち受けているのか警戒しながら捻ると扉が開き足を踏み入れる。
〇部屋の扉
すると気がついた時にいた不思議な空間とは異なり白を基調とした壁が続くシックな部屋。
先程よりは現実味があり安心感があることから完全に中に入った時、視線の先に誰かが立っていた。
???「今回の迷い猫は貴方ですか?」
茶髪と、結ったヘアゴムに付けられたピンクのアクセサリーが特徴とも言えた少女がそこに立っていて、
少女は彩音を見て『ようこそ』と微笑む。
天王洲ゆかり「貴方は運がいいのですね。さて、貴方の悩みはなんですか?」
神月彩音「・・・・・・・・・」
さっきまで大勢いたはずの人の気配が消え、いたはずの車内から景色は一変し見慣れぬ部屋に。
そして目の前には少女が一人こちらを見ては穏やかな笑みで問いかける。これをなんというのか。
天王洲ゆかり「ミラクルレターを受け取ったということは、貴方は何か悩みを持っているのでしょう?」
神月彩音「悩み・・・?」
天王洲ゆかり「大丈夫ですよ。 恥ずかしがることはありません」
天王洲ゆかり「悩みとは、誰しもが抱える心の陰・・・どんな歪で貴方を苦しませる悩みも解決してみせますから」
神月彩音「・・・っ!?」
彼女の言葉を理解しようとして間もなく、唖然と見つめていた彩音はハッとすると、
あらゆる状況が変わった中手に持っている手紙に視線を落とす。
鈴木沙織「悩みを持った人に手紙が届いて、気がついたら知らない場所にいるんだって」
鈴木沙織「そこにいる人達が抱えてる悩みを解決してくれるらしいよ』」
神月彩音「手紙・・・まさか・・・」
目を丸くし、手紙と少女を視線を交差させると少女は笑みを浮かべていて、やがて彩音は不意に過ぎった言葉を口にした。
神月彩音「『ミラクルレター』・・・?」
天王洲ゆかり「はい。そうですよ」
聞いていた話と状況が一致している。
がこの異変の状況は理解出来てもそれを完全には飲み込めず、混乱していると少女は目の前まで歩み寄り、視線で奥の扉を差すと
天王洲ゆかり「落ち着きましたか? では、仲間の元へ行きましょう」
天王洲ゆかり「私の他にも各分野に長けたエキスパートがいらっしゃるんですよ」
天王洲ゆかり「貴方の悩みに合わせて皆で解決に導く・・・それが私達の使命です」
〇おしゃれなリビングダイニング
少女に誘導されるまま、開かれた扉へ進む少女の後をついていくと部屋が視界に映る。
そしてそこには、少女の他にいくつもの人の姿が目に飛び込んだ。
それは沙織から聞かされたりクラスで噂になっていた通り整った容姿の男女がいて、
そして視線を動かしているとふと見覚えのある姿が目に留まり思わず声を上げた。
神月彩音「え・・・?」
どこにでもいる茶髪、特に目立たない容姿。
この穏やかな気候に適したカーディガンを身につけ、そんな穏やかな印象を持つ彼は彩音の視線に穏やかに返事を返す。
六本木一「やあ神月さん」
神月彩音「・・・・・・」
そこにはクラスメイト、六本木一の姿があった。


