第68話 別れの意味(脚本)
〇墓地
2021年 イリノイ州 ウィネベーゴ郡 ロックフォード 郊外の墓地
「··· ··· ··· ···」
静かな時間が流れる
その数14の変化武器の墓地にキング達は居た。キングとゲライントはただ静かに祈っていた
そして瞳を開けた2人に鸞は静かに声をかける
鸞「2人で話したいこともあるだろう。ゆっくり話すといい···キング、俺達は先にモーテルに行ってるからな」
キングはそこで何も返さず、ゲライントとその場に立ち尽くしていた
重苦しい空気が流れる中、遠くから『泣き声』が聞こえてきた。それは女性の声だった
キング「ゲライント···誰呼んだんだ?今いるの俺らだけじゃねぇのか?」
ゲライント「マリちゃんよ···ヘンリー・ワイズマンは仲間だったでしょ?だから呼んだんだけど···」
キング「··· ··· ···マリア・イアハートだったか?普段からこんな泣くのか?」
ゲライント「いいえ··· ··· ···私も初めて聞いたわ。こんなに泣いてるマリちゃんは···」
別れを拒むように泣く声を聴きながら、キングはしゃがんで墓石に触れる
キング「··· ··· ···俺ら『泣けねえな』ゲライント。なんでだろうな?『死別』に慣れすぎちまったのかね?」
ゲライント「そうね··· ··· ···私達を作ったパパ、私達を我が子同然に愛してくれたママ、兄弟のように接してきた仲間」
ゲライント「私達···『別れに泣けなくなっちゃった』わね。エルちゃんやシャルちゃん達が死んでもそうなっちゃうのかしら···」
ゲライントの言葉を受け止め、キングはとある言葉を口にする
キング「ゲライント··· ··· ···俺くたばりかけた時『親父』に会ったぞ」
ゲライントは驚いた様子でキングを見つめると、キングは続けた
キング「真っ白い空間で···親父に言われたんだよ」
キング「『俺と死んだ奴らと一緒に暮らすか』『錆を全部治して斎王達の所に戻るか』ってよ」
キング「ふっ···俺親父殴ってから二つ返事で『斎王達の所に戻る』って言っちまってよ」
キング「返事言う前にもうちょいボコボコにしとけばよかったって後悔してるぜ」
ゲライント「··· ··· ···パパはどんな様子だったの?」
キング「『機械的』だった。流れ作業みたいに感情を込めず淡々と言ってきたぜ」
ゲライント「皆の事は聞いた?」
キング「聞いたさ。だがよ···あいつ『与えた質問に関する答え以外答えられない』ってずっと言ってきて何も聞けなかった」
ゲライント「··· ··· ···パパは私達をどうしたいのかしら?」
キング「さぁな···だがよゲライント」
キング「親父は最初にこう言ってたぞ」
そうしてキングは立ち上がり、ゲライントの肩を叩く
キング「『辿り着いてくれてありがとう。お前達に残せず本当にすまなかった』ってな」
キング「···親父は俺達の命なんてどうでもいいなんて思ってない。親父は変化武器一人一人を愛していた」
キング「それだけは···忘れんなよ」
その場を立ち去るキング、そしてゲライントはその場に膝を落とし
ただ呆然と『涙を流した』
〇墓地
同所
斎王幽羅「マリ姉··· ··· ···大丈夫そう?」
マリア・イアハート「お気遣い···ありがとうございます··· ··· ···申し訳ございません、幽羅様···はしたない所をお見せしてしまって」
斎王幽羅「全然大丈夫だよマリ姉··· ··· ···辛いよね?こんな別れ方で···」
斎王はマリアを抱きしめながら、背中を撫でる。ゲライントは初めて見たと言っていたが
マリアは以前も1度だけ『このように泣いていた事』がある。
斎王はそんな時を思い出していると、マリアは斎王に問いかける
マリア・イアハート「幽羅様···ワイズマンは···私を恨んでいましたか?私だけ逃げた事を···悔いていましたか?」
斎王幽羅「そんな事ないよ···キャプテンはただマリ姉の『安否』を気にしていた。俺が解放した時にもほんの少し話したけど」
斎王幽羅「マリ姉が生きてるって伝えたら『よかった···プレジデンテの意思は終わっちゃいない』って言ってたよ」
マリア・イアハート「プレジデンテ···私が頼様の意思···?どういう事ですか···?」
斎王幽羅「マリ姉は婆ちゃんの右腕で、婆ちゃんの意思を最もよく理解していた」
斎王幽羅「婆ちゃんの意思ってのは『非能力者の徹底排除』じゃなくて『第二の雪月雪羅を生まない事』だ」
マリア・イアハート「第二の···雪羅様···」
斎王幽羅「マリ姉は過激だし男嫌いだし、潔癖な所があるけど」
斎王幽羅「裏を返せば『婆ちゃんの裏の思いを感じ取ってる』って事になる。四代目の時代からずっと一緒にいたキャプテンが言ったんだ」
斎王幽羅「誇っていいと思うよ。だからさ···キャプテンもそうだしどこかに捕まってるエドモンドさんも···」
斎王幽羅「マリ姉を『恨んでないと思う』。だから···マリ姉はこの事で自分を責めちゃダメだよ。いい?」
マリア・イアハート「···わかりました幽羅様。お気遣いありがとうございます」
落ち込む様子のマリアに斎王は一言、言葉をかける
斎王幽羅「マリ姉···『俺達と来る?』皆歓迎してくれると思うよ」
マリアはそれを聞き、斎王から離れる
マリア・イアハート「幽羅様のお言葉に甘えたいですが···私には姫騎士達が居ます。私は頼様から託された一個大隊」
マリア・イアハート「『失楽園の天使達』がおりますので···私だけが離れるわけにはいきません。なので···」
斎王幽羅「わかった。でも···辛くなったら言って?俺はいつだってマリ姉の『味方』だからね?」
マリア・イアハート「ありがとうございます幽羅···なんだか頼様がお亡くなりになった時も同じような事をした気がします」
暗い空気が流れ続ける中、斎王はふとある事を思い出す
斎王幽羅「だね··· ··· ···あ、そういえばあの後ってキャプテンが皆連れてカラオケ行ったっけ···」
マリア・イアハート「ワイズマンの奴皆を無理やりアンヒーリング・フロスト(癒えぬ凍傷)号に乗せて来たんですよね」
斎王幽羅「そうそう、それでマリ姉や姫騎士達が「こんな薄汚い場所に乗せるな!」って怒ったんだけど」
マリア・イアハート「幽羅様が宥めてくださって、着いた場所が···」
斎王幽羅「Xヒーローのギルドだったよね。そこで街の人も交えてカラオケ大会やって···」
マリア・イアハート「結果、近所の見知らぬ老婆が優勝したんですよね。懐かしい···」
斎王とマリアはそんな他愛もない昔話をしていると、斎王は立ち上がりマリアに尋ねた
斎王幽羅「今日さ···やらない?ロックフォードならカラオケの機械あるだろうしさ。ほら、あの時みたいに皆誘ってさ」
マリアは斎王の誘いを受け、断ろうとするとある事を思い出す
マリア、貴女は何にでも気を張りすぎよ。いつか見えるものも見落とすわ
Feel free to always(いつでも気楽に)。忘れないでね?
マリア・イアハート「··· ··· ···Feel free to always」
斎王幽羅「え?」
マリア・イアハート「いえ··· ··· ···行きましょう。護衛の姫騎士達とゲライントも誘って来ます!」
斎王幽羅「え、あ、うん···行ってらっしゃい」
斎王幽羅「··· ··· ···よくわかんないけど、元気出たっぽいからいいかな。俺も皆誘って来よ!」
To Be Continued··· ··· ···