エピソード5(脚本)
〇山中の坂道
藤城 啓二「優作」
藤城 啓二「優作ったら」
藤城 優作「何? 兄さん」
藤城 啓二「いったいどこまで行くんだよ?」
藤城 優作「もう少しだよ」
藤城 啓二「もう少しって・・・」
藤城 啓二「いや、他でもない優作の頼みなんだからな」
藤城 啓二「無碍にしちゃあ兄が廃るってもんだ」
藤城 優作「兄さん」
藤城 啓二「何だ?」
藤城 優作「そういう言葉遣い、お父様が嫌がるよ」
藤城 啓二「お前の前だけさ」
藤城 啓二「兄弟ってのは特別なんだよ」
藤城 啓二「特に俺たちは、協力し合って生きて行かなくちゃ」
藤城 優作「・・・そう」
藤城 優作「もう着いたよ」
藤城 啓二「おお!」
藤城 啓二「って、何もないじゃないか」
藤城 啓二「いったい、ここに何が──」
片桐 拐斗「まさか本当に連れて来るとはな」
藤城 啓二「誰だ、あんた」
片桐 拐斗「誘拐請負人さ」
藤城 啓二「雇われの誘拐屋か」
藤城 啓二「薄汚い商売だ」
片桐 拐斗「随分と厳しいことを言うんだな」
藤城 啓二「違うとでも?」
片桐 拐斗「いいや、合ってるさ」
片桐 拐斗「所詮、俺たちは人の不運で飯を食ってる」
片桐 拐斗「今日ここで会ったのも、運がなかったと思ってくれ」
藤城 啓二「自分のやってることを棚に上げてよく言うよ」
藤城 啓二「優作、下がっていろ。お前は俺が必ずまも──」
片桐 拐斗「ご苦労だった、優作」
藤城 優作「大したことじゃないよ」
藤城 啓二「な、なに言ってるんだよ優作」
片桐 拐斗「もう察してるんだろ?」
片桐 拐斗「それとも一から十まで説明してほしいのか」
藤城 啓二「嘘、だろ」
藤城 啓二「嘘だよな? 優作」
藤城 啓二「俺たちは兄弟なんだ」
藤城 優作「そう」
藤城 優作「だから助け合っていくんだよね?」
藤城 優作「今がその時だよ、兄さん」
〇ビルの裏通り
桐生 和佳「優希の奴、こんなところに呼び出して何の用だ」
桐生 和佳「しかも一人で来いだなんて」
桐生 和佳「優希か?」
高木 誘作「お久しぶりです。桐生 和住(きりゅう わずみ)さん」
桐生 和佳「なんだ、貴様か」
桐生 和佳「なんの用だね。まさか四年越しのアフターフォローじゃないんだろう?」
高木 誘作「どちらかというと、そのツケです」
高木 誘作「来ていただけますね?」
桐生 和佳「駄目と言っても無駄なんだろうな」
高木 誘作「素直に従ってくれて何よりです」
〇走行する車内
高木 誘作「では参りましょうか」
桐生 和佳「・・・・・・」
高木 誘作「いやぁしかし、晴れてよかったですねぇ」
高木 誘作「日中はいつ雨降るかと、気を揉みましたが」
桐生 和佳「優希から依頼されたのか」
高木 誘作「・・・わかりますか」
高木 誘作「親の感、というやつですかね?」
桐生 和佳「少しは隠す努力をしたらどうだね」
高木 誘作「これは手厳しい」
桐生 和佳「しかし、優希にも困ったものだ」
桐生 和佳「妙な恰好はするし」
桐生 和佳「男の趣味も悪いときた」
高木 誘作「それに関しては俺に言われても困ります」
桐生 和佳「度々、会っているんだろう?」
高木 誘作「ええ、まぁ」
高木 誘作「ご存じだったんですね」
桐生 和佳「無論だよ」
桐生 和佳「貴様の目的は知らんが、」
桐生 和佳「少なくとも優希は前より生き生きとしているよ」
高木 誘作「よく見ていらっしゃるんですね」
桐生 和佳「もちろんだとも。あの子は私の息子だ」
高木 誘作「それ、本人に直接言ってあげた方がいいですよ」
桐生 和佳「ふん、余計なお世話だな」
桐生 和佳「それで、いつになったら解放してくれるんだ」
高木 誘作「生憎、今回は事情が混みあってましてね」
桐生 和佳「貴様はいつもそうだな」
桐生 和佳「で、いくら払えばいいんだ?」
高木 誘作「いえ、本当に混みあっているんですよ」
桐生 和佳「何! 私からもたかるつもりじゃなかったのかね」
高木 誘作「いつもならそうしているところですがね」
高木 誘作「今回ばかりはちょっと」
桐生 和佳「降ろせ」
桐生 和佳「私は本来、こんなところで油を売ってる場合じゃないんだ」
高木 誘作「存じてますよ」
高木 誘作「だけど諦めてください」
桐生 和佳「ふざけたことを──」
高木 誘作「ん?」
桐生 和佳「どうしたんだね?」
高木 誘作「いや、あの前方の車」
高木 誘作「真っ直ぐこっちに向かって来ていませんか?」
桐生 和佳「何を馬鹿な──」
桐生 和佳「んなっ!」
桐生 和佳「避けろ! 避けろ!」
高木 誘作「今やってるよ!」
桐生 和佳「うわぁぁぁぁ!」
高木 誘作「クソ!」
桐生 和佳「駄目だ! ぶつかる!」
高木 誘作「いつつ・・・」
高木 誘作「大丈夫ですか? 桐生さん」
桐生 和佳「う、うーん・・・」
高木 誘作「伸びてる・・・」
片桐 拐斗「久しぶりだな、誘作」
高木 誘作「あ、あんた・・・」
片桐 拐斗「悪いが時間がなくてね、感動の再会というわけにはいかなんだ」
片桐 拐斗「桐生和住は貰っていくよ」
高木 誘作「え! ちょっと!」
高木 誘作「ああくそ、シートベルトが」
〇川に架かる橋
高木 誘作「はぁ・・・はぁ・・・」
高木 誘作「いったいどうなってるんだよ」
高木 誘作「片桐さん・・・」
〇インターネットカフェ
平川 盗愛「で、今回も失敗したと」
高木 誘作「いやぁ、あはは」
平川 盗愛「何回、しくじれば気が済むのよ!」
高木 誘作「面目ない」
平川 盗愛「優希だって、なんか言ってやりなさい」
桐生 優希「誘作さん・・・」
高木 誘作「あー、お手柔らかに」
桐生 優希「怪我はありませんか?」
高木 誘作「え、ああ、何とかね」
桐生 優希「なら、よかったです」
平川 盗愛「ちょ、ちょっと待ちなさいよ」
平川 盗愛「優希が言わなかったら、私がだけが感じ悪いみたいになるじゃない」
高木 誘作「知らんよ」
平川 盗愛「ちょっと、大丈夫なの? 誘作」
平川 盗愛「怪我、見せてみなさい」
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