ABS

山本律磨

一話(脚本)

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山本律磨

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〇水中
  『ワタツミ』という言葉がある。
  海神(ワタツミ)
  そう、かつてこの島では、
  神とは空ではなく海から来るものだった。
  そして、その日もまた一人・・・
  いや、ひと柱・・・

〇沖合
「えっほ。えっほ。えっほ」
エビス「えっほ。えっほ。えっほ」
エビス「えっほ。えっほ。よ~そろ~」
エビス「とりかじいっぱ~い。 えっほ。えっほ。えっほ」
エビス「・・・お!」
エビス「おお~~っ!」

〇島

〇沖合
エビス「見えた・・・」
エビス「見えた!遂に見えたぞ!」
エビス「あそこだ!あの島に違いない!」
エビス「あそこに行けばきっと・・・」
エビス「ん?」
エビス「何じゃ?この声は?」
エビス「おお~。これはこれは。 海龍ではないか」
エビス「して、何をいきりたっておるのじゃ?」
エビス「ふ~む左様であるか。 ここはそちの縄張りであったか」
エビス「まあ落ち着くがよい。 別にここを荒らそうという訳ではない。 ちょっと、通り過ぎるだけじゃ」
エビス「と、いうわけで」
エビス「ちと失礼するぞえ~」
エビス「さらばじゃ~」
エビス「ひゃああ!やめよ! 我を誰と心得る!」
エビス「我は・・・我はあああ!」

〇水中
  『我は・・・』
  『我は・・・』
  『ワタツミ・・・』
  『ワタツミ・・・ワタツミ・・・』
  『ワタツミじゃーーーっ!』

〇海辺
アシハラの民「ワタツミじゃ!」
アシハラの民「ワタツミじゃ!」
ドキ「大漁じゃあああああッ!」
アシハラの童「ドキさま!ドキさま!」
ドキ「どうした?」
アシハラの童「こっちの網に 魚と一緒に変な人が引っかかっています!」
ドキ「変な『モノ』ではないのか?」
アシハラの童「変な『人』だよ~」
「わっせ!わっせ!わっせ!わっせ!」
ドキ「待て待て待て待て!」
ドキ「確かに今、 おかしなものが引っかかっておったが」
アシハラの民「これですか?」
アシハラの民「赤いから新種のタコとばかり」
ドキ「忙しいのは分かるが、 そうやって面倒臭いことから 全部目を背けていてはいかんぞ」
ドキ「ふ~む」
ドキ「まず聞くが。わぬし、子供か大人か?」
エビス「子供?」
エビス「大人?」
エビス「我に左様な概念はない」
ドキ「と、いうことはまさか・・・」
エビス「ふっ、ようやく気付いたようじゃな」
アシハラの童「ワタツミ・・・」
アシハラの民「ワタツミ・・・」
アシハラの民「ワタツミ・・・」
ドキ「神・・・!」
エビス「そうじゃ、我は神」
エビス「我は神であーーーーる!」
エビス「もう一度言おうか?」
エビス「神なのであーーーーる!」
エビス「と、いうわけじゃ」
エビス「畏れ敬い崇め奉りたい そんな気持ちも分かるが、 とりあえず楽にするがよかろう」
エビス「貢物などもおいおい承るゆえ、 焦らず騒がずみな一列に並んで」
ドキ「皆の衆!神じゃ! 神が打ち上げられたぞ!」
ドキ「縛り上げて 大王様の下へ引っ立てーーい!」
エビス「そうそう、 早く我を縛り上げて・・・」
エビス「え?何で?」
「大人しゅうせい! この神めがああああっ!」
エビス「なんでえええええええ?」

〇島
  『あ、晴れた・・・』
  『日、出る島国』
  『そう呼ぶことに致そう』
  『確かにここにいるのだ』
  『我に祈ってくれた、ただ一人の人間が』
  『その声に答えるべく我はやってきた』
  『我が名はエビス』
  『海に流されし、ひとりがみ』

〇巨大な城門
  『お出まし下さい』

〇牢獄
ミコ「お出まし下さい」
ミコ「どうか私の声をお聞き届け下さい」
スサノオ「また祈っているのか?」
スサノオ「無駄だ。 いくら祈ってもお前の声など届きはしない」
スサノオ「なぜなら、神は我々だからだ」
ミコ「お出まし下さい」
ミコ「どうか我が声をお聞き届け下さい」
ミコ「神様・・・」
スサノオ「チッ・・・!」
スサノオ「愚かな・・・」
ミコ「神様・・・」
ミコ「神様・・・」
  つづく

次のエピソード:二話

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