エピソード4(脚本)
〇インターネットカフェ
桐生 優希「で、失敗だったと」
高木 誘作「まさか許可されるとは思わなかったんだ」
高木 誘作「次は別の手を考えるよ」
桐生 優希「ふーん」
高木 誘作「苦言なら受け付けないよ」
高木 誘作「戻って来るまでに散々言われたからね」
桐生 優希「何も言ってませんよ」
高木 誘作「言いたそうにしてる」
平川 盗愛「安心して頂戴」
平川 盗愛「あなたの分まできちんと言っておいたから」
桐生 優希「ありがとうございます」
高木 誘作(妙な絆が出来てる・・・)
高木 誘作「まぁアポイントには事欠かないから、何度かトライしてみよう」
平川 盗愛「随分と悠長ね」
平川 盗愛「ところで、いったい誰を探してるの?」
高木 誘作「ああ、言ってなかったか」
高木 誘作「榊権藤って男を探してるんだ」
高木 誘作「半グレで、かなり上位の人間らしいんだが」
平川 盗愛「その男、知ってるわよ」
「ええ!」
高木 誘作「な、なんで」
平川 盗愛「私もマッチングアプリで客取ろうとしてたし、挨拶するのが筋かなって」
高木 誘作「冗談でしょ?」
桐生 優希「盗愛さんも、その、業者さんみたいなことを?」
平川 盗愛「まぁ、そんなところね」
高木 誘作「本当は?」
平川 盗愛「ホテルまで行ったら財布だけ失敬してずらかるのよ」
平川 盗愛「これがてっとり早くて、存外やめられないのよ」
高木 誘作「んな、島荒らしみたいなことを」
平川 盗愛「だからこそ、挨拶すべきかなって」
平川 盗愛「後で揉めたら面倒だし」
高木 誘作「一応聞くけど、本当にそれだけ?」
平川 盗愛「まぁ、概ねは」
平川 盗愛「ちょっとだけ交渉してみたりもしたけど」
高木 誘作「どんな」
平川 盗愛「業者詐欺が蔓延っている噂の溢れている中、私みたいな本物にも出会えるって知れたらアプリの利用者が増えるでしょ?」
平川 盗愛「結果的に客を取れる機会も多くなるわけで、その分の利益のうちの数パーセントをくれないってお願いしたのよ」
高木 誘作「揉める気満々じゃん・・・」
平川 盗愛「我ながらいい案だとは思ったんだけど」
高木 誘作「まぁ、聞き入れられないだろうね」
平川 盗愛「何でよ」
高木 誘作「そんなことしなくとも何も知らないカモは次から次に現れるし、」
高木 誘作「何より盗愛のおかげだなんて証明できないでしょ」
平川 盗愛「そういうもんかしら」
高木 誘作「第一、ホテルで財布擦って姿晦ますんだから本物とも言い難いし」
桐生 優希「よくご無事でしたね」
高木 誘作「確かに。ただじゃ済まないと思うけど」
平川 盗愛「普通に帰してくれたわよ」
高木 誘作「いくら積んで?」
平川 盗愛「一銭も払ってないわ」
高木 誘作「逃げたな?」
平川 盗愛「失礼ね、きちんと玄関からお暇したわよ」
高木 誘作「玄関から逃亡を図ったのか」
平川 盗愛「だから違うって!」
平川 盗愛「いいわ、そこまで言うなら会わせてあげる」
平川 盗愛「いつでもどうぞって言われてるんだから!」
高木 誘作「ふーん」
平川 盗愛「何よ、その疑わしそうな目は!」
平川 盗愛「今に見てなさい! 後悔させてやるわ!」
高木 誘作「悪役かよ」
高木 誘作(いや悪人だろうけどさ、俺も盗愛も)
〇古いアパートの居間
下っ端「ボス、いいですか」
榊 権藤「駄目だ」
榊 権藤「いつも言ってるだろ、そんなふうには呼ぶなと」
下っ端「へ、へい。すいません」
榊 権藤「で、何の用だ」
下っ端「へい、それが榊さんに会いたいという奴が来ていまして」
榊 権藤「通せ」
下っ端「い、いいのですか? 得体のしれない奴ですよ」
榊 権藤「そんなこと言うもんじゃない。失礼だろ」
下っ端「いや、しかし・・・」
榊 権藤「いいから通せ。あまりお待たせするんじゃない」
下っ端「へ、へい」
下っ端「では」
榊 権藤「・・・ったく」
平川 盗愛「数か月ぶりね、ごんちゃん」
高木 誘作(ごんちゃんって・・・)
榊 権藤「ん? ああ、平川さんか」
平川 盗愛「悪いわね、急に押し掛けて」
榊 権藤「いや、いいさ。いつでも歓迎だ」
平川 盗愛「その割には驚いてた様子だけど」
榊 権藤「得体のしれない奴なんて言うからてっきりな」
平川 盗愛「ああ、それは彼のことね」
榊 権藤「彼?」
高木 誘作「初めまして。俺は──」
榊 権藤「存じてますよ。誘拐プランナー、高木誘作」
榊 権藤「狂言誘拐ビジネスの第一人者、ですよね?」
高木 誘作「驚いたな」
榊 権藤「何がです?」
高木 誘作「俺の仕事を正確に知る人がいるとは思わなかった」
平川 盗愛「私も知らなかったわ。そうだったのね」
榊 権藤「噂はかねがね窺ってます」
高木 誘作「いい噂だといいけど」
榊 権藤「噂は得てしていいものですよ」
榊 権藤「どんな悪評でも評判には違いありませんから」
平川 盗愛「相変わらず前向きね、ごんちゃんは」
榊 権藤「して、どういったご用件で?」
榊 権藤「まさか結婚のご挨拶ですか?」
平川 盗愛「んなわけないでしょ」
高木 誘作「あんた、盗愛のなんなんだよ」
榊 権藤「冗談ですよ、冗談」
榊 権藤「それで? どういったご用件で?」
高木 誘作「兵藤高藁。知ってるでしょ」
榊 権藤「そりゃあ知ってますよ。あれだけ大々的に演説をやっているんですから」
高木 誘作「そうじゃなくて、居場所の話だ」
榊 権藤「居場所?」
平川 盗愛「白を切らなくてもいいわ。ごんちゃんと兵藤高藁が繋がってるのは知ってるの」
榊 権藤「いやはや、平川さんにまで言われちゃあ仕方がないですな」
榊 権藤「ですが、聞いてどうするんです?」
高木 誘作「営業を掛けたい」
榊 権藤「狂言誘拐のですか?」
高木 誘作「ああ。兵藤の対抗馬となっている奴を選挙が終わるその日まで誘拐する」
高木 誘作「決して悪い話じゃないはずだ」
榊 権藤「ご足労頂いたところ悪いですが、お断りですな」
高木 誘作「なぜ?」
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色々捜査して闇の世界へ潜入するところが、
リアルで生々しくて面白いですね!!
危ない連中がたくさん出てスリリングで楽しみです😀