Serendipity∞Horoscopeつまみ食い!

神月

1_新しい生活(脚本)

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神月

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〇新幹線の座席
  新幹線の車窓から見える通り過ぎていく景色。
  レールを進む度に揺れる音と感覚。
  次第に景色は高層ビルが立ち並び、見下げれば道を行き交う無数の人々に少女は人知れず目を丸くし呼吸を忘れた。
???「・・・・・・」
  しかし彼女の心の中は驚きと戸惑いと、無数の不安に覆われており心とは裏腹に表情は無に等しかった。
アナウンス「『間もなく東京、東京に到着します』」
  やがて車内にアナウンスが流れると扉が開き、少女は立ち上がるとキャリーケースを手に新幹線から降りる。
???((ここが・・・・・・東京))
  颯爽と通り過ぎる人々に圧倒されながら階段を下ると瞬時に動きが止まる。
  そこはまさしく別次元で、想像より遥かに多い案内看板にどこが自分の向かうべき場なのかさっぱりわからない。
  その間にも左右には人が行き交い、
  迷いなく早足で過ぎていく姿とその瞬間に感じる風に怖ささえも感じながら少女は携帯電話を取り出した。

〇おしゃれなリビングダイニング
  間もなく、迎えに来た父と合流した少女は共に新たな住居となる家へとやって来る。
  父はダンボールから食器類を棚に収めながら
父「父さんも東京に用がある時とか、たまには様子を見に来るつもりだけど・・・」
父「サアラのメンテナンスが少し長引いていてね。明日には再起動させられるようにしておく」
父「分かった」
???「サアラがいるからよほど大丈夫だとは思うが、もし何かあれば連絡してくれ。よっぱど僻地にいなければ繋がるはずだ」
  数日後
サアラ「『彩音、起きてる?』」
神月彩音「起きてる起きてる」
サアラ「着替えた?」
神月彩音「まだ。今着替える」
  クローゼットにかかっていた制服を取り出すと睡魔に襲われながらも順番に着替えていく。
  そして夢のひとつであったネクタイを締め、鏡に映る姿に言い聞かせるように呟いた。
神月彩音「大丈夫。まだ始まってもいないんだから」
  リビングに降り、朝食を取るとサアラの親のような確認に呆れながらも答えていく。
  だがその理由を知る彩音は笑い飛ばすように声を上げる。
神月彩音「折角長年夢に見ていた東京に来たんだし、色んな所を見たいよね」
  玄関で靴を履き、扉に手をかけ僅かに開くと後ろを振り返り心配そうな目を向けるサアラに僅かに微笑み告げる。
神月彩音「・・・じゃあ、行ってくるね」
サアラ「いってらっしゃい」
  ──それは新しい芽吹き。
  それは失ったモノを呼び覚ます予兆。
  それは、かつてこの国に絶望し何もかもを信じられなくなった少女が数々の出会いを元に織り成す波乱万丈の物語。

〇大きな木のある校舎
  アスファルトの歩道、その周りで目に入る景色。
  新しい生活にワクワクする気持ちは微塵もなく今すぐにでも帰りたい程で、
  そんな気持ちを抱きつつも目的地についてしまい今日は入学式。
  案内のままにクラス表の張り出された空間に辿り着くと、既に同じ新入生であろう生徒が
  これでもかと言うほど自らの名を探す為に集まっており、その光景に
神月彩音(人多すぎ・・・流石は高校、クラス多すぎ・・・)
  息を吐きながら人がはけるのを待っているとそんな少女へ近寄る影が一つ。
  彩音を目にした少女は目を丸くし、やがて歩み寄りながら声を上げた。
???「あれ・・・もしかして彩音・・・?」
  ふと自身の名が聞こえ心臓が跳ねるが
  故郷は遠い地で、さほど顔も広くない為こんな場に知り合いがいる確率は皆無だろうと思っていた。
  そう分かっていながら妙にそわそわしてしまい視線を動かすと、こちらへ視線を向けるある姿が目に入り
神月彩音「えっ・・・」
  故郷より遠い地。
  知り合いがいるはずが無い。
  だが視線を向け、目に入った先それは全く知らぬ他人では無かった。
神月彩音「沙織・・・?」
鈴木沙織「っ! やっぱり彩音!? なんでここに・・・」
  なぜここに、と疑問しか浮かばないが理由はひとつだろう。
  何故なら、自身と同じ制服を身につけこの場にいることが何よりの答えだったから。

〇教室
「皆、入学おめでとう! 俺の名前は・・・後藤陽凪。教師としては二年目で担当科目は保健体育」
  この時期には誰もが通る道自己紹介。
  名前と出身校などを口に出し、このやりとりを数十回も聞かなければならないのかと退屈そうに聞き流す。
  そしてこれはいずれは自分の番も来るわけで更に憂鬱になる。
神月彩音「やってられん・・・」
  と微かにため息をついた直後、自己紹介は四人目に入ろうとしていた。
  四人目の生徒が立ち上がり
???「名前は上田翔太」
神月彩音「・・・っ!?」
  それまで半分以上に聞き流し、もはや一人目の名前すら記憶にない。
  しかしふいに発された生徒の名が耳に入った瞬間、うんざりした思考は途絶え耳に残り、話している生徒へと向けられた。
  その視線先には黒髪の至って特別な特徴もなく、どこにでもいそうな男子生徒が自身の事を話しているが
  その姿を目にすると思考が止まった。
  知り合いが一人もいないと分かっていたから不安だらけだった。
  しかしそれは思わぬ誤算で、かつて外国で出会った日本人沙織との再会で安心出来
  更には同じクラスという事で第一関門は突破できたように思えた。
神月彩音(なのに・・・)
  手に力が入ると僅かに震え、頭が真っ白になっていたところ我に返ると自分の番が近づいていることに気づき
神月彩音(最悪だ。初日にこんなのって・・・最悪だ)
  桜の舞う日、門出を飾った
  少年少女は不穏な始まりに様々な感情を募らせながら
  新たな生活が始まろうとしていた。
  だが彼女らはまだ知らない。
  まだ見ぬ者達との出会いがこの先待ち受けており、
  数々の出会いとそんな者達が
  織り成す数々の物語が景色を変えることを。
  それは日常のようでいて日常ではなく、
  当たり前のようで特別なこと。
  『日常』と『非日常』が織り成す物語──

次のエピソード:16-1_デンジャラス・ミッション

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