〇綺麗なダイニング
　　梅雨明けしたはずなのに雨が降っている
ゆうじ（ああ、そうか。 これは夢だ）
　　家の中に娘も妻の姿も見えない。
ゆうじ（まぁ、夢の中だからか）
　　ここが夢だと気がついてもなんでも出来るわけじゃなくて実際どうすることもできない。
ゆうじ（きっと常識とか物理法則とかに縛られてるから何でも出来るはずなのに自然とストッパーがかかっちゃうんだな）
　　そう思いながら外を見る
　　女が立っている
　　傘をさしていないのでずぶ濡れになっている

〇住宅街
　　傘を持って外に出て
　　傘をさしてやると女は微笑んだ
ゆうじ（どこの国だろう？タイとかそっち系の顔立ちに見えるな）
　　実際日本語ではない言葉を女は喋った
　　どこの言葉なのかもわからないのに何故か言っていることがわかった
　　「久しぶりね」と女は言った
ゆうじ「そうだっけ？」
　　そう言うと女はまた微笑んだ

〇綺麗なダイニング
　　それから俺たちは自然と家の中に入って一緒に生活を始めた
　　女の名前もどこから来たのかも何も知らないまま40年が経ち子供も産まれてその子も成人して家を出てまた女と二人になった
　　その40年の間ずっと雨は降り続けていた

〇綺麗なダイニング
　　ある夜、隣で眠っているはずの女の姿がなかった
　　女がいたベッドはぐしょぐしょに濡れていた

〇綺麗なダイニング
　　外は雨が止んでいた

〇綺麗なダイニング
　　いつまで経っても女は帰ってこなかった

〇ビルの裏
　　テレビでは雨が止まない国のニュースが流れていた
　　そこに女がいると直感で理解した

〇荒廃したホテル
　　適当に身支度をして飛行機に乗ってその国へ行き雨の中を探し回った
　　見つけることが出来ずに疲れ果ててホテルのベッドの上に倒れ込んで深く眠った

〇可愛らしいホテルの一室
ゆうじ（・・・・・・.）
　　身体をゆすられて起きると目の前には妻と娘がいた
妻「ずいぶん熟睡してたみたいだけど飛行機で疲れちゃった？」
娘「パパ大丈夫？」
　　そこはタイのホテルだった
　　家族旅行に来てホテルのベッドでやたら長い夢を見ていたらしい
　　外ではやはり雨が降っていた
　　ホテルの窓から外を見ると女が傘も刺さずに立っている
　　俺は傘を持たずに外へ出た