人生はチョコミント色(脚本)
〇カウンター席
美音(私の名前は猪口美音(ちょこみんと))
美音(名前の通りチョコミントが大好き)
美音(服装もチョコミント色だし)
美音(思想もチョコミント色)
美音(え、どうせにわかだろって?)
※誰も言ってない
美音(私はいつでも本気だよ)
美音(お前ら見とけよ、見とけよ)
店員「ご注文をお伺いします」
美音「チョコミントアイスとチョコミントクレープとチョコミントドーナツとチョコミントケーキとチョコミントフラッペで」
美音(オラ見たか!!)
美音(これがチョコミント財閥・トップの実力だよ)
美音(一瞬で全てのチョコミントを把握し)
美音(それをチョコのごとく甘い声色で)
美音(ミントのごとく爽やかに読み上げる)
美音(素人には到底できまい)
店員「あのーお客様・・・」
美音「ん?何か文句ありますか?」
店員「注文の量が・・・」
美音「え、チョコミントを沢山頼んじゃ駄目って決まりはないですよね?」
美音「それともあなたの価値観において変だとでも言いたいんですか?」
美音「これの何が変なんですか?」
美音「前例が無い?気に入らない?」
美音「それだけで変と決め付けるなら」
美音「私は“変”という概念そのものを否定します」
美音「私のチョコミント愛は“不変”です」
美音「誰も止められない、止まらない」
(厨房に侵入しようとする)
店員「お待ち下さい」
店員「私の言及はチョコミントについてではなく」
店員「単に注文の多さについてです」
美音「え、沢山注文しちゃ駄目って決まりはないですよね?」
店員「確かに無いのですが」
店員「最近はSNSの為に写真を撮るだけ撮って」
店員「殆ど食べ残していく方が跡を絶えず」
店員「念の為確認をですね・・・」
美音「あーーー」
美音「なるほどそういうことでしたか」
美音「はいはいはいはい」
美音「その事例については私もニュースで見ました」
美音「食べ物を写真の道具としか思っていないなんて最低ですよね」
美音「二度と食べ物を口にする資格がないですよね」
美音「しかしそういう人を実際目の当たりにすると」
美音「端から食べる気がなかったのか」
美音「それとも口に合わなかったり体調不良だったり用事があったりして」
美音「食べたくても食べられなかったのか」
美音「頑張って食べようとしたものの食べられなかったのか」
美音「その見分けがつきずらく」
美音「一概に怒れないのが悩ましいところですよね」
美音「だから店側としては」
美音「注文の多い客にはこうして」
美音「食べられるのか事前に何気なく確認してみるという」
美音「丁寧且つ配慮のある対応が為されているんですね」
美音「素晴らしい店です」
美音「来て良かったです」
美音「チョコミントのメニューも豊富ですし」
美音「チョコミントが・・・」
美音「チョコミントを・・・」
美音「チョコミントを棚に上げた発言をして大変申し訳ありませんでした・・・」
店員「お客様・・・」
美音「言いたいことは分かります」
美音「自覚があるならなぜもっと早く直せないのかと」
美音「なぜこんな事態に陥ってしまうのかと」
美音「しかし私のようなチョコミント信者は」
美音「チョコミントのことになると我を忘れてしまうのです」
美音「いや、我が出すぎてしまうといったところでしょうか」
美音「“チョコミントが一番だ”」
美音「“チョコミントの愛を認めてほしい”」
美音「“チョコミントを馬鹿にされたくない”」
美音「そんな我欲に飲まれ、逆に相手を馬鹿にしてしまうのです」
美音「こんな私は誰がどう見ても」
美音「変、ですよね・・・」
店員「変ですね」
店員「だから良いんですよ!!」
(手を伸ばす)
(コップが倒れる)
(それでも手を握り続ける)
美音「ほ、本当ですか・・・?」
店員「本当に私、感心したんです」
店員「我を貫けるあなたは凄いなって」
店員「私、見ての通り仮面を被っています」
店員「自分の顔を見せたくないんです」
店員「自分で変な顔だって思ってるし」
店員「なら周りから見ても絶対変だと思うし」
店員「だから仮面を被ることに納得しています」
店員「納得した、はずでした」
店員「被っても尚、周りの視線が気になるんです」
店員「外そうよ、自信持ちなよ、変だよって言われると」
店員「それもそうだなと思ってしまって」
店員「被っても変、外しても変」
店員「それじゃあ私の顔はどこへ行けばいいのって・・・」
店員「消えたくなることも多々あります」
店員「でも今、あなたを見て思ったんです」
店員「変でも不変で良いんだなって」
店員「私、変な仮面のままでいます」
店員「自信を持って堂々と変なままでいます」
店員「だからあなたも、変なチョコミント信者でい続けて下さいね」
美音「え、変って・・・」
美音「私、変じゃないって否定してほしかったんですけど」
美音「何勝手に変ってことにしてるんですか?」
美音「何勝手にあなたと一緒にしてるんですか?」
美音「あと今“変なチョコミント”って言いましたよね」
美音「やっぱりチョコミントが変だって思ってるんじゃないですか」
店員「いえ、私は“信者”の方に変とつけたつもりで・・・」
店員「うーんでも確かに」
店員「私の我を出して発言すれば」
店員「チョコミントって変な味ですよね」
美音「あ?」
店員「だってどう考えても歯磨き粉の味じゃないですか」
店員「それを食べ物にした人も食べてる人も変ですよ」
店員「なのに売り上げが異様に良くて」
店員「この店もいつの間にかチョコミントまみれになってしまって」
店員「そう考えると自分が変だと思ってるものって」
店員「案外“普通”なのかもしれませんね」
美音「良いようにまとめても無駄だからな」
美音「お前は今、禁句を口にした」
美音「それは私にとって“殺害”を意味するものだ」
美音「お前は今、私を一度殺し・・・」
店員「あぁ、“歯磨き粉の味”のところですか?」
美音「お前は今、私を二度殺したな」
店員「だって事実じゃないですか」
店員「チョコミント好きの人は」
店員「“歯磨き粉の味”だってことを分かった上で」
店員「それでも平気だから食べているんでしょう?」
美音「お前は私をいくら殺せば気が済む」
美音「私は今、お前を殺さないと気が済まない」
店員「ダイナマイトですか」
美音「あいにくこれしか手持ちがなくてな」
店員「残念ですね、爆発したら」
店員「念願のチョコミントが食べられなくなってしまうというのに」
美音「勿論食べてからだよ」
店員「勿論食べさせませんよ」
店員「何なら“人気につき一人一品限定”の文字も読まずに」
店員「大量のチョコミントを頼んだ時点で」
店員「ブラックリストにぶち込んで追い払うつもりでしたからね」
美音「やっぱり端から食わせる気なんかなかったのか」
美音「どうりで変な店だと思ったよ」
店員「あなたにお似合いじゃないですか」
美音「かもな」
美音「チョコミントの概念を、そして」
美音「変と普通の概念を覆してくれる店だったよ」
美音「お前のこと、殺しはするけど」
美音「嫌いじゃないぜ」
店員「ふふ、流石美音さん」
店員「後味も甘く爽やかなようで」
普通に逮捕された
チョコミントで、これだけセリフを書けるのすごいですね!!
コントの才能がおありですね!
Xで話題の、サブウェイの石丸構文を思い出しましたww
確かにチョコミントって歯磨き粉みたいですね。
アイスのベスト10で、女性側は珍しいものを上位に入れてきますが、
男性側はオーソドックスが上位。
結果、バニラが1位というのが、いつの世も変わらぬ真実と思っていますww
僕もチョコミントは好きですが、この作品に出てきたヒロインは苦手ですね。
危険物持ち込んで営業妨害してるし……。