エピソード5(脚本)
〇野球場
エリートピアの参加票を持った大勢の学生たちが、アリーナへと向かっている。
若山柿之介「紅音(くおん)さ、歩くの早いべ」
真田紅音「・・・僕に構わないでくれるかな」
若山柿之介「あ、そこのお兄さん。 梅干し一つ、どうだべ?」
藤原一茶「おっ」
真田紅音「ああ、どうも」
藤原一茶「へぇ・・・」
藤原一茶「なんや、あんたも合格か。 ホンマに運が良かったんやな」
真田紅音「まあ、そちらも、運があるみたいですね」
藤原一茶「はは、せやな」
真田紅音「・・・・・・」
真田紅音「・・・しろよ」
真田紅音「馬鹿にするのもいい加減にしろよ!!」
藤原一茶「あ? 何がや」
真田紅音「僕は人の嘘が分かる」
藤原一茶「はあ?」
真田紅音「君は、嘘をついている」
藤原一茶「なんや、新手の詐欺商法かい?」
真田紅音「・・・選考の何を知ってる?」
藤原一茶「ふんっ、なんでやねん」
藤原一茶「自分で考えや、馬鹿丸出しやで」
藤原一茶「それに、次に備えな乗り遅れるで」
若山柿之介「東京の人は冷たいべ、誰もばあちゃんの梅干し食べんでよ」
真田紅音「・・・・・・」
真田紅音「馬鹿にすんなよ、くそ」
若山柿之介「紅音さ?」
中園瑚白「梅干し、一つ頂ける?」
若山柿之介「ん、ああ、もちろんだべ!」
中園瑚白(なかぞのこはく)が、梅干しを食べながら酸っぱそうな顔をする。
中園瑚白「おいしい、ありがとう」
若山柿之介「はー、うれしいべー」
中園瑚白「クエン酸で疲労回復して、次に備えないとね」
若山柿之介「おらのばあちゃんが漬けてんだ、うめぇのは当たり前だ」
若山柿之介「欲しかったらいつでも言え、いくらでも食わせてやる」
中園瑚白「ふふ」
中園瑚白「ねぇ、そこのあなた」
真田紅音「!」
中園瑚白「人の嘘がわかるの?」
真田紅音「え、ええ」
中園瑚白「ふーん」
真田紅音「あの、なんですか?」
中園瑚白「市場調査。 どんな人がいるかって」
真田紅音「はあ・・・ていうか、さっきの僕の会話聞いてたんですか?」
中園瑚白「ああいうのは気にしない方がいい」
中園瑚白「人のことおちょくって、かき乱して、少しでも自分の有利に進めようとしてるだけだから」
中園瑚白「本当は心の中で、生まれたての小鹿みたいにプルプル震えてるのよ」
真田紅音「まあ別に、乱されてないですけどね」
中園瑚白「ああ、そう」
中園瑚白「なんにせよ、彼の最後の言葉は事実」
真田紅音「最後の言葉?」
中園瑚白「次に備えないと、乗り遅れる」
そのとき突然、会場全体にファンファーレの音が鳴り響く。
「!」
〇野球場
戸川仁「はい、お疲れ様です。合格発表を突破した皆さま、おめでとうございます!」
戸川仁「今ので五万人から一万人に絞られました。すばらしいですね、倍率五倍の試験をもう突破してしまった」
戸川仁「いやはや、懐かしいですね・・・」
戸川仁「私が君くらいの時も、同じように選考を受けまして。その時もセンタードームだったんですけど、私新宿から間違えて山手線まで行ってしまって・・・」
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