2 ダリルとトート(脚本)
〇外国の田舎町
回想。30年ほど前
ダリル「私と弟であるトートは、田舎街に生まれた。私は弟が可愛くて可愛くて仕方がなかった」
トート「見て見てお兄ちゃん!そこにね、猫さんがいたから猫さん描いたんだよ!上手に描けてるでしょ?」
ダリル「弟は昔から絵を描くことが好きだった・・・・・・」
ダリル「いや、絵を描くことしかできなかった。そのくらい不器用な子だった」
ダリル「だからこそ、この子は私が面倒を見てあげなきゃ、守ってあげなきゃと思った」
〇英国風の部屋
回想。25年前。都会のとあるアパルトマン
ダリル「遠くからご苦労だったね。さあ上がって上がって」
トート「ありがとう兄さん」
トート「でも、本当に良かったの?僕をこっちに呼んだりして」
ダリル「いいんだよ。お前が絵を描くのに、あんな片田舎じゃしょうがない」
ダリル「街にいれば画材もすぐ手に入るし、いろんな刺激を受ける。お前の描く作品がますますいいものになるに違いない」
トート「でも、僕が来た分、家計に負担がかかっちゃうだろ?僕はろくに働いたことないし」
ダリル「そこら辺は心配するな。お前が思っているよりも俺は結構稼いでるんだぜ?弟1人養うくらいわけないさ」
トート「そっか・・・・・・そうだよね」
トート「兄さんは僕と違って優秀だもんね」
ダリル「確かに俺は優秀だが、僕と違って、は余計だ」
ダリル「お前には俺にはない、素晴らしい才能を持っている」
トート「でも絵、まだ一枚も売れてないんだよ?僕のことをそんな風に言ってくれるの、兄さんだけだ」
ダリル「まだ世の中がお前を見つけていないだけだ。見つかったらきっと、世界中の人たちが、お前の絵を欲しがるに違いない」
トート「ありがとう、兄さん。世話になった分を返せるように、僕頑張るよ」
ダリル「そんなことは気にしなくていい。お前は好きな時に、好きなように、自由に絵を描けばいいさ」
〇公園のベンチ
別の日。公園。トートが絵を描いている。
ダリル「子どもたちが遊んでる絵か・・・・・・」
トート「そう。子どもたちの楽しそうな声が聞こえて来たから、ちょっと描いてみたくなって」
ダリル「最近よくこの公園にいるよな。気に入っているのか?」
トート「うん。ここは賑やかだし、流れる空気も穏やかで、好きだよ。制作も捗る」
ダリル「それは良かった」
ダリル「公園なんて普段使わないから、あまり気にしたことなかったけど、改めて見るといい場所だな」
トート「兄さんは昔からそうだよね。自分の関心のないものにはまるで興味がない」
ダリル「そこに関して言えばお前の視野が広すぎるだけだよ。俺は普通だ」
トート「そうかな?」
ダリル「そうだとも。そういえばお腹空いてないか?」
トート「言われてみれば・・・・・・今日何か食べたっけ?」
ダリル「全く、集中するのはいいけど、ちゃんと食べないと体に毒だぞ?」
トート「今日は気をつけようって思ってたんだけど・・・・・・」
ダリル「まあいいや。すぐそこでサンドイッチの屋台が出てたんだ。なにか買ってくるよ」
トート「うん。ありがとう」
トート「・・・・・・」
エミリ「・・・・・・」
トート「あれ、兄さん、何か忘れ物?」
エミリ「・・・・・・」
トート「兄さん・・・・・・?」
トート「ってうわ!!」
エミリ「あっ・・・・・・ああ、ご、ごめんなさい!」
トート「あ、いえ・・・・・・こちらこそすみません。勘違いした上に急に大声出してしまって」
トート「僕に何かご用でしたか?」
エミリ「いえ、何かあるってわけじゃないんですけど」
エミリ「あなたの描く絵があまりにも素敵だったから。ついつい見入ってしまって・・・・・・」
トート「え?あっ・・・・・・ありがとうございます」
エミリ「・・・・・・あまり、褒められ慣れていないみたいですね」
トート「え?」
エミリ「反応がそんな感じでしたので。あっ。お気を悪くしたようでしたらごめんなさい」
トート「いいえ。大丈夫です。あなたの言う通りですから」
エミリ「そう・・・・・・なんですか?」
トート「ずっと1人で描いてきたせいもあるんでしょうけどね」
トート「この間も個展を開いたけどお客さん全然来なくって」
エミリ「絵で生活していきたいんですか?」
トート「はい・・・・・・僕には、絵を描くことしかできませんから」
エミリ「・・・・・・この絵、完成したら私に売ってくれませんか?」
トート「・・・・・・えっ。ええ!?」
エミリ「私、何かおかしなこと言いました?」
トート「いえ。おかしくはないですけど・・・・・・いいんですか?なんか・・・・・・同情とか入ってません?」
エミリ「同情が全くないといえば嘘になりますが・・・・・・」
エミリ「あなたの事情を抜きにしたって私、この絵が気に入りました。だから私に売ってください」
数分後。
ダリル「悪い、遅くなった。思ったよりも列ができててさ・・・・・・」
トート「・・・・・・」
ダリル「どうしたんだ?ぼーっとして」
トート「兄さん・・・・・・」
ダリル「だからどうしたんだ?」
トート「初めて・・・・・・」
ダリル「初めて?」
トート「初めて売れた・・・・・・」
ダリル「売れた?」
トート「僕の絵が・・・・・・初めて売れた・・・・・・」
ダリル「本当に?」
トート「ああ。今描いてるこの絵が気に入ったから売ってくれって!!」
ダリル「すごいじゃないか!!よかったな!トート!!」
トート「うん・・・・・・うん。なんていうか・・・・・・すごく嬉しい・・・・・・」
ダリル「それはそうだ!!俺だって嬉しい!やったな!!」
トート「うん!!」
〇公園のベンチ
ダリル「弟の絵が初めて売れた日。まるで昨日のことのように思い出せるよ」
ダリル「あんなにはしゃぐ弟を見るのは初めてだった」
ダリル「それからかな。弟の絵がどんどん売れ出したのは」
ダリル「きっかけ、とでもいうんだろうか。そういうの、本当にあるんだなって思ったよ」
ダリル「それと同じ時期だったかな。弟に、初めての恋人ができたんだ」
ダリル「彼女の名前はエミリ」
ダリル「公園で弟の描いた絵を買った女性だ」
ダリル「仕事もうまくいって、大事な人もいて。幸せそうな弟を見て、私まで幸せな気持ちになったよ」
やっと絵が売れたんですね!恋人も出来て兄とも仲良く順風満帆!このまま幸せでいてほしいですが...続けて読もうと思います!
芸術家の回想録みたいな展開、面白いです👏
作品に色々いわくがついてまわってるみたいですが、これから色々な激動が起きていく、って感じなんでしょうかね…
読みやすくてスっとお話入ってきたので、思いのほかすらすらタップ進んでいきました!また読ませていただきます!😂
画家の話は珍しい題材なので、とても楽しみですね!!
呪いの謎も興味を引きますね。
人に認められるのは大変ですよね!
救ってくれる女神のような女性がいて、羨ましい限りです😅
作者様は助け合える仲間がいますか?