読切(脚本)
〇ラジオの収録ブース
パーソナリティー「今日、3月10日は佐藤の日らしいです。 語呂合わせなんでしょうね」
パーソナリティー「日本で一番多い苗字は佐藤さんだそうです。 沢山の佐藤さんにとって、 今日が良い日であると良いですね」
〇走行する車内
そんな話がラジオから流れていた。
俺は、外回りの車の中で聞いていた。
すると、俺のスマホが鳴った。
車を止めて、スマホを見ると
知らない番号だった。
佐藤(誰だろう?)
佐藤「ハイ、佐藤です」
アキ(もしもし・・佐藤君?)
佐藤「そうですが・・」
アキ(わたし・・アキです)
佐藤「アキ???」
アキは高校の同級生だった。
アキ(久しぶり・・・20年ぶりかしら・・・)
佐藤「高校以来だから20年ぶりだね。 どうしたの?」
アキ(今、ラジオ聞いてたら今日は 佐藤の日って言ってたから・・・)
アキ(ふと佐藤君の事思い出して 懐かしくなって・・電話しちゃった)
アキ(迷惑だった?)
佐藤「迷惑だなんてトンデモナイ!嬉しいよ!!」
アキ(良かった・・・)
アキとは恋人同士って訳じゃなかった。
お互い好きだったとは思う。
なんか友達以上恋人未満の関係より
進めず卒業して、それっきりだった。
佐藤「元気でやってるのか?」
アキ(元気と言えば、元気かな・・・)
佐藤「なんか有るのかよ?」
アキ(まぁ・・それなりに色々あるわよ・・)
アキ(そう言う佐藤君はどうなのよ?)
佐藤「俺も色々あるよ・・・」
それからしばらく高校時代の思い出話をしていた。
ふと気づくと結構時間が経っていた。
もっとアキと話していたいが、そう言う訳にもいかない。
佐藤「アキ・・・ゴメン・・・ 俺そろそろ仕事に戻らないと・・・」
アキ(ごめんなさいね・・ 佐藤君も身体に気を付けて頑張ってね!)
佐藤「アキもな!」
アキ(あ!そうだ・・ 佐藤君、高校の時バレンタインに チョコもらってくれて、ありがとうね!)
そう言えば高3のバレンタインに
アキからチョコもらったなぁ・・・
佐藤「あの時はゴメンな。 俺・・凄い嬉しかったのに、 素っ気ない態度とって・・・」
アキ(私も、あの後よそよそしい態度とって ゴメンなさい)
佐藤「謝る事ないよ! 俺の態度に頭来たんだろ?」
アキ(そうじゃないの・・・ 自分の気持ちをあなたに言った事が 恥ずかしくなったの)
佐藤「そうだったんだ。 俺はてっきり怒ってるんだと思って ホワイトデーに告白しようと思って・・・」
あれ?
確かプレゼントも買ったし、
告白の練習もやってた。
そう思った瞬間、俺は思い出した。
俺は告白できなかった。
なぜならアキはホワイトデーの前に
事故で亡くなっていた。
って事は今まで話していたのはアキの幽霊?
アキ(そうじゃないわ。 今日は佐藤の日だから、 何人かの佐藤さんに 小さな奇跡が起きるの)
佐藤「だから、アキとこうして話しが出来たのか?」
アキ(私は、佐藤君に言いたかったの。 佐藤君に出会えて幸せだったって・・・ そして本当にありがとうね)
佐藤「俺の方こそ、ありがとう!」
アキ(そろそろ奇跡も終わりだわ)
佐藤「また、話せないのか?」
アキ(奇跡は一度だけよ。 それに過去に縛られたら前に進めないわ。 佐藤君、良い人生を送ってね!)
「さよなら」
佐藤「もしもし!!アキ!アキ!」
いくらか叫んでも返事はなかった。
すると急に気が遠くなってきた。
〇黒
〇電車の座席
気づくと俺は帰りの電車の中で座席に座っていた。
全て夢だったのか・・・・
たとえ夢でもアキと話せて嬉しかった。
懐かしさと刹那さと嬉しさの
入り交じった不思議な気分になっていた。
そして、今度のホワイトデーには
プレゼントを持ってアキの墓参りに
行こうと思った。
おわり
切なさや甘酸っぱさが込められた、とても綺麗な物語ですね。全国の佐藤さんにはこのような小さなステキな奇跡が起こってほしいですね。
高校時代の彼女さんは自分の思いを佐藤さんに伝えるために霊界から電話をしたんだろうか?それにしても佐藤さんの日とかよく語呂合わせを考えましたね。
小さな奇跡、、素敵な3/10佐藤の日でした!最後に2人とも想いを伝えられてよかったなって思ったし自分もちゃんと後悔しないように伝えようとも思いました