19話 獣人の村の秘密(脚本)
〇黒
ギルバトル・フォルダンテ「いざ! 街へ行くぞ!」
〇原っぱ
スタンスラス・ブラン・エレオノール「一体何を考えている! リアリナ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「もう! 耳が痛い!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「やり過ぎだったと反省してるわ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「でもね。こうでもしなければ、我々と一緒に来てくださらないでしょ?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「街の観光など、ギルがいなくても良いではないか」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「私にも護衛がついている。リアリナ1人ぐらい守れるものを、なのに・・・」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「あんな、約束など・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「問題ありませんわ。きっと無事にことが運べば、それどころではなくなりますから」
リアリナ・シャルルド・グレイ(そうよ。無事に拉致された人々を救えれば、フォルダンテ家は大忙しになるもの)
スタンスラス・ブラン・エレオノール「どういうことだ?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「それより、どうして殿下は月の涙のことを知っていたのです?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「他のご令嬢から誘われたのですか?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「な!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「さ、さ、さ、誘われるなど!」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「ただ、知識として知っていただけだ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「てっきり、使われたことがあるのかと思いましたわ」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「そんなわけが・・・」
リアリナ・シャルルド・グレイ「っきゃ!」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・殿下、重たいですわ」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「リアリナ・・・」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「私は他の令嬢など、どうでも良いのだ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「・・・」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「信じてほしい。 私は、リアリナのことを」
テオフィル・ベフトン「はーい! そろそろ到着するようです!」
テオフィル・ベフトン「お二人とも起き上がれますか?」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「だ、大丈夫だ。自分でできる」
テオフィル・ベフトン「今日はいいお天気ですから。外の風を入れましょう」
〇海辺の街
リアリナ・シャルルド・グレイ「んー。潮風が気持ちいわね!」
リアリナ・シャルルド・グレイ(こんなに澄んだ土地だというのに、どうしてあんな商売をするのかしら)
テオフィル・ベフトン「美しい景色ですね。 一昔前までは海だったのが嘘のようです」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ここは、海だったの?」
テオフィル・ベフトン「フォルダンテ領地のほとんどは、元は海だったのです」
テオフィル・ベフトン「前フォルダンテ公爵様が埋め立てて、大きな宿場町に発展したとか」
テオフィル・ベフトン「中でも、王国随一の高さを誇る灯台のある宿場街は、」
テオフィル・ベフトン「さまざまな国から旅人が訪れるほどに有名です」
リアリナ・シャルルド・グレイ「宿場って、海の近くが有名なの?」
テオフィル・ベフトン「ええ、フォルダンテのリゾートの売りは海でございますから」
リアリナ・シャルルド・グレイ「山とかは? 牧場とかあるじゃない」
テオフィル・ベフトン「景色は美しいですが、あの辺りは農地ばかりでリゾートとは程遠いでしょう」
テオフィル・ベフトン「あるとすれば、簡易的に休む場所を提供する集落かと」
リアリナ・シャルルド・グレイ(集落。じゃあ、やはりあの村は、ハネムーンなどで使うようなリゾートの宿場町でなかったのね)
〇西洋の街並み
ヨハン村長「・・・」
もしかしたら、常習的に人を攫っているのかもしれない
あの村を必ず見つけなくちゃ
〇海辺の街
「海!」
〇沖合
「海!」
〇海辺
「海ー!」
ギルバトル・フォルダンテ「いかがかな? リアリナ嬢、フォルダンテ領の海の景色は格別であろう?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そうですわね。サメに追いかけられた恐怖が蘇って参りますわ・・・」
ギルバトル・フォルダンテ「ん? リアリナ嬢は海がお嫌いかい?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「公爵様。私、宿場町が見てみたいですわ」
ギルバトル・フォルダンテ「では私の別荘がある地へ向かおうか」
リアリナ・シャルルド・グレイ「いいえ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「できれば、さまざまな人種が入り乱れる宿場町がいいですわ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「荒っぽい海の男や、ならず者がいるような漢臭い酒場がある、」
リアリナ・シャルルド・グレイ「こじんまりとした村が好みですの」
リアリナ・シャルルド・グレイ「そこに獣人がいれば完璧ですわね」
ギルバトル・フォルダンテ「ははは。そのような輩どもがいる宿場が見たいとは、リアリナ嬢は変わっている」
ギルバトル・フォルダンテ「しかし、獣人のいる宿場は、リアリナ嬢のような高貴なご令嬢が足を踏み入れる土地ではない」
ギルバトル・フォルダンテ「近くに龍の鱗を磨いてステンドグラスにした教会がある」
ギルバトル・フォルダンテ「其方に相応しい美しい教会だ。案内しよう」
リアリナ・シャルルド・グレイ「お、お待ちください」
リアリナ・シャルルド・グレイ(このままじゃ、領地自慢されてタイムアップになっちゃうわ!)
リアリナ・シャルルド・グレイ(なんとか、公爵をあの村へと向かわせないと!)
リアリナ・シャルルド・グレイ「私、興奮するんです・・・」
ギルバトル・フォルダンテ「今・・・なんと?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「労働で汚れた身体をした、土埃と汗の匂いを放つ殿方が」
リアリナ・シャルルド・グレイ「安酒を乱暴に呑む姿を見ると、とても・・・興奮しますの」
ギルバトル・フォルダンテ「・・・」
ギルバトル・フォルダンテ「そのような場所もあるが・・・、 貴族が踏み入れるというのは・・・なあ」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ここは奴隷も貴族もない夢の島、」
リアリナ・シャルルド・グレイ「であるなら、私が向かっても構わないでしょう?」
ギルバトル・フォルダンテ「そうであるな!」
ギルバトル・フォルダンテ「うむ! 俺様と共になら、構わないだろう」
リアリナ・シャルルド・グレイ「わあ! 嬉しいですわ!」
ギルバトル・フォルダンテ「そういったところは酒場と宿場を兼ねている」
ギルバトル・フォルダンテ「酔ったあとは、其方と二人きりでじっくり時間を重ねられる」
リアリナ・シャルルド・グレイ「じっくり。で、ございますか?」
ギルバトル・フォルダンテ「ああ、存分に」
ギルバトル・フォルダンテ「早く、リアリナ嬢を酔わせたい」
リアリナ・シャルルド・グレイ「楽しみですわ」
ギルバトル・フォルダンテ「はっはっは」
スタンスラス・ブラン・エレオノール「・・・ぐぬぬぬ」
〇睡蓮の花園
リアリナ・シャルルド・グレイ「ここですか?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「何もないですわ」
ギルバトル・フォルダンテ「この国の獣人の扱いをご存知か?」
リアリナ・シャルルド・グレイ「ええ。生まれた時から奴隷として生きるなんて、とても可哀想でならないですわ」
ギルバトル・フォルダンテ「ああ、俺もそう思っている」
ギルバトル・フォルダンテ「獣人の国が敗戦国だからと、いつまでも奴隷扱いするのは国家としてどうかとね」
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