吸血鬼との共存を頑張ろう

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8話 詫びるより媚びろ(脚本)

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〇学校の屋上
藍原しずく「はぁ・・・お腹空いた」
藍原しずく(あのフレッシュな甘酸っぱさが恋しい)
藍原しずく(トマトジュースを飲む為なら)
藍原しずく(どんな悪事も働ける気がする)
藍原しずく(・・・吸血鬼もこんな心境なのかな)
藍原しずく(しかもトマトジュースと違って)
藍原しずく(生き血はお金じゃ買えないし)
藍原しずく(人の目を気にして)
藍原しずく(血を飲みたいと口に出せない)
藍原しずく(もっと苦しくて独りぼっちで)
藍原しずく(だから不器用なやり方しかできない)
藍原しずく(分かってるようで分かってなかった)
藍原しずく(あの不器用吸血鬼も今頃)
藍原しずく(私に会いたがってるかな)

〇まっすぐの廊下
赤城(文化祭なんていつぶりだろうな)
赤城(動物園みたいに騒がしくて目眩がする)
赤城(用件だけ済ませてさっさと帰ろう)
赤城(あいつの教室はここだったか)
  ガラガラッ
赤城「おーいしず」
影野夜月「いらっしゃいませご主人様〜!」
影野夜月「乙女の純血をお恵み下さい✨」
赤城「・・・男で悪かったな」
影野夜月「・・・・・・」
影野夜月「ウワーーーッ!!」
  (ドア閉める)
赤城「アーッ!!俺の手挟んでる!!」
影野夜月「来ないでって言ったじゃないですかぁ!!」
影野夜月「こんな醜態見られたくなかったのに!!」
赤城「自意識過剰だな、別に何も思わないぞ」
赤城「ただコンセプトが吸血鬼なのは少々癪に障る」
赤城「まさかお前吸血鬼だと公言したのか?」
影野夜月「したら文化祭どころじゃないですよ」
影野夜月「社会生活終わります」
赤城「だよな、びっくりした」
影野夜月「吸血鬼じゃないふりをしながら吸血鬼を演じる・・・」
影野夜月「自分に嘘をついているようで僕も嫌でしたが」
影野夜月「逆に本当の自分でいられるようで」
影野夜月「やってみたら意外と楽しいです、えへへ」
赤城「弱者はこうやって搾取されていくんだな」
影野夜月「赤城さんも楽しんでいきませんか?」
影野夜月「ケチャップ浸しのオムライスやアセロラジュースなど」
影野夜月「血をイメージした赤いメニューが沢山ありますよ!」
赤城「血じゃないならいらん」
影野夜月「もう、そういうところですよ」
影野夜月「藍原さんと喧嘩したのだって」
影野夜月「歩み寄りが足りないのが原因・・・」
影野夜月「あれ、そういえば藍原さんは?」
赤城「え、いないのか?」
赤城「わざわざ有給取って来た意味ないじゃないか」
影野夜月「もしやメニューにトマトジュースが無いのが気に入らなかったのかな・・・」
赤城「そんなわけは・・・」
赤城「あいつなら十分に有り得るな」
影野夜月「加えて最近トマトジュース不足で元気がなさそうでしたし」
影野夜月「今思えば僕への塩対応もそのせいだったのかも」
赤城「!」
赤城「あいつトマトジュースどれくらい飲んでる?」
影野夜月「ここ一週間は全くですかね」
赤城「・・・まずいな」
赤城「友達ならトマトジュースの一つくらい買ってやればいいものを」
赤城「本当に気が利かないなKYは」
影野夜月「えぇ僕ですか!?」
赤城「いや、今のは八つ当たりだ」
影野夜月「息をするように八つ当たりしないで下さい」
赤城「とりあえず見当がつく場所を探すか」
影野夜月「え、余計な事しない方が・・・」
赤城「余計なことでいい」
赤城「たとえ怒られても殺されても」
赤城「俺にはあいつが必要なんだ」
  (駆け足で去る)
影野夜月「・・・ストーカー?」

〇屋上の入口
赤城「ハァ、ハァ・・・」
赤城「階段きっついな・・・」
赤城(俺も当時は授業や行事をサボっていた)
赤城(唯一の居場所だったのが屋上だ)
赤城(風が気持ち良くて)
赤城(喧騒も鬱屈も)
赤城(自分が吸血鬼であることさえ忘れられるようだった)
赤城(きっとあいつもここに・・・)

〇学校の屋上
  ガチャッ
赤城「ほらやっぱりな」
藍原しずく「え、なんで来たの」
赤城「お前こそなんでこんなところにいるんだ」
赤城「トマトジュースがアセロラに負けたことがそんなに嫌か」
藍原しずく「それもあるけど」
藍原しずく「吸血鬼メイドやるのが嫌だから」
赤城「確かにお前にメイドは似合わないかもな、気持ちは察する」
藍原しずく「違う、そういうことじゃない」
赤城「じゃあ何だ」
赤城「吸血鬼が嫌いだって言いたいのか」
藍原しずく「・・・・・・」
赤城「いいぞ、好きなだけ嫌え」
赤城「実際嫌われるようなことしてるしな」
赤城「古来から人間と吸血鬼は分かり合えた試しがない」
赤城「結局吸血鬼は見捨てられる運命だ」
赤城「そうと決まれば契約も解除・・・」
藍原しずく「誰も嫌いなんて言ってない」
赤城「え?」
藍原しずく「私は吸血鬼のこと嫌いじゃない」
藍原しずく「だからこそ仮装したくないの」
藍原しずく「吸血鬼を分かろうとしない連中には」
藍原しずく「死んでもなりたくない」
赤城「お、お前・・・」
赤城「顔色悪いが大丈夫か?」
藍原しずく「誰のせいだと思ってるの」
赤城「俺のせいなんだろ」
赤城「ほら、念願のトマトジュース買ってきてやったぞ」
藍原しずく「!」
藍原しずく「機嫌取り?」
赤城「あぁ機嫌取りだ」
赤城「全部俺の血の為だ」
赤城「だがそれじゃいけないことも分かっている」
赤城「お前の気持ちを考えられなくて」
赤城「本当にすまなかった」
藍原しずく「・・・・・・」
藍原しずく「別に謝らなくていい」
藍原しずく「その代わり私も謝らないから」
赤城「お互い様ってことか」
藍原しずく「今回はあなたの方が悪いと思うけど」
赤城「お、言ったな?」
藍原しずく「人の話は最後まで聞いて」
赤城「はい」
藍原しずく「死の淵に追い込まれた時」
藍原しずく「生き物は善悪の判断がつかなくなる」
藍原しずく「無理矢理襲ってくる吸血鬼は悪いけど」
藍原しずく「そこまで追い込んだ人間だって悪い」
藍原しずく「私もあなたのこと沢山傷付けたと思うし」
藍原しずく「これからも傷付けると思う」
赤城「その通りだな」
藍原しずく「言ったね」
赤城「理不尽だ!!」
藍原しずく「契約は対等なんでしょ」
藍原しずく「私が気に食わなかったら契約解除していいし」
藍原しずく「あなたがデリカシーない言動したら攻撃するから」
赤城「優しいんだか優しくないんだか・・・」
藍原しずく「私は優しさの塊でできてるよ」
赤城「嘘つけ!!」
赤城「あっ嘘ついたから針千本飲め!」
藍原しずく「私は事実しか言わないもーん」
  バンッ!!
佐藤塩子「アーッこんなとこにいた!!」
佐藤塩子「平然とサボってんじゃねーよ!!」
赤城「うおっ誰だ」
藍原しずく「知らない」
佐藤塩子「クラスメイトだよ!!」
佐藤塩子「今夜月くん一人で接客してんだよ?」
佐藤塩子「申し訳ないと思わないわけ?」
藍原しずく「だって夜月くんに近付かないでって言われたし」
佐藤塩子「あ、それは・・・」
佐藤塩子「それとこれとは関係ねーから!!」
藍原しずく「理不尽」
佐藤塩子「分かった、私の言うこと聞けないなら」
佐藤塩子「お望み通りあんたの事無視するから」
佐藤塩子「クラス全員でね!」
取り巻き「ね〜っ」
藍原しずく「好きにすれば」
藍原しずく(無視なんてとっくに慣れてるし)
藍原しずく(こんなの何とも・・・)
赤城「おい、今どきのガキは」
赤城「クラスメイトにこんな口を利くのか?」
赤城「これじゃしずくと同類じゃないか」
赤城「自分を見直した方がいいぞ」
藍原しずく(・・・余計なことしなくていいのに)
藍原しずく(馬鹿みたい、何がしたいんだろ)
藍原しずく(何がしたいの、私)
佐藤塩子「あ?うるせぇよ不審者通報すんぞ」
取り巻き「110番〜」
赤城「俺は不審者じゃない!!」
佐藤塩子「じゃあ藍原さんの何なの?」
赤城「そ、それはだな・・・」
藍原しずく「何でもいいでしょ」
藍原しずく「その人から離れて」
藍原しずく「二度と私に近付かないで」
藍原しずく「これ以上トマトジュースタイムを邪魔するようなら」
藍原しずく「あなた達も吸血鬼にするよ」
佐藤塩子「アハハ、厨二病ウケるんだけどw」
取り巻き「えっ、藍原さんが吸血鬼って噂本当だったの・・・?」
取り巻き「なんか目据わってて怖いし」
取り巻き「気持ち悪、行こ」
  (取り巻き達が去っていく)
佐藤塩子「え、ちょっ」
藍原しずく「逃げ遅れたね」
藍原しずく「最初の獲物GET〜」
佐藤塩子「ヒッ・・・」
佐藤塩子「イヤアア置いてかないでええ!!」
  バタン
藍原しずく「一年の時から怖がりだな、塩子ちゃん」
赤城「お、お前吸血鬼だったのか・・・!?」
藍原しずく「そんなわけないでしょ」
藍原しずく「あなたに襲おうと思ってもらっただけ」
赤城「なりふり構わず襲わないわ失礼な」
赤城「そんな強気な態度で大丈夫か?」
赤城「後で痛い目に遭っても知らないぞ」
藍原しずく「やられたらやり返すからOK」
赤城「恐ろしいな」
藍原しずく「怒らないで許すのが偉いとか」
藍原しずく「そういう風潮が嫌いだから」
藍原しずく「感情に正直でいる」
藍原しずく「私がやりたいことをやる」
藍原しずく「あなたも人間に対してもっと怒っていいと思う」
赤城「お前の立場はいつもどこなんだ・・・」
赤城「まぁ許せないことは沢山あるが」
赤城「くだらない連中に囚われてても仕方ない」
赤城「俺にとっての人間は」
赤城「今目の前にいるお前だからな」
藍原しずく「・・・そっか」
藍原しずく「私って人間だったんだ」
赤城「自分を何だと思ってた!?」

〇学校の屋上
赤城「そういえば俺も血不足だった」
赤城「目眩してきたから吸ってもいいか?」
藍原しずく「いいけど」
  ガブッ
藍原しずく「あれ、痛くない」
赤城「だろ!?」
赤城「ちゃんと練習したんだ、こんにゃくで!」
藍原しずく「こんにゃく?」
赤城「スーパーで見かけた時まさにこれだと思ってな」
赤城「人肌に似た柔らかい表面を」
赤城「いかに傷付けないように噛むか」
赤城「プロの吸血鬼にかかれば習得は楽勝だったぞ」
赤城「どうだ、何か言いたいことは?」
藍原しずく「にゃく・・・」
藍原しずく「にゃくにゃくこんにゃく〜」
赤城「え?」
藍原しずく「ん?」
赤城「いや尋ね返されても」
赤城「意味がさっぱり」
藍原しずく「ありがとう赤城さんって言った」
赤城「えっ」
藍原しずく「で、何か言いたいことは?」
赤城「・・・・・・」
赤城「にゃくにゃく」
藍原しずく「意味は?」
赤城「どういたしまして」
藍原しずく「にゃくにゃくはありがとうだよ」
赤城「知るか」
  つづく🍅

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