吸血鬼との共存を頑張ろう

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5話 主食の自覚(脚本)

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〇水色(ライト)
  〜LIME画面〜
K・Y「よろしくお願いします!」
秋「よろしく」
K・Y「お名前、秋って言うんですね!」
秋「秋は一番快適な季節だからな」
K・Y「そうですね!」
K・Y(どういうこと?)
秋「お前のそれはイニシャルなんだろうが」
秋「KYじゃ悪い意味に捉えられるぞ」
K・Y「『空気読めない』ですよね?」
K・Y「大丈夫ですその通りなので!」
秋「自己評価低すぎるのも考えものだな」
K・Y「余計なこと考えなくていいですよ💦」
秋「本当に考えるわけないだろ」
秋「その汗の絵文字腹立つな」

〇水色(ライト)
秋「じゃあ早速アドバイスに移る」
秋「友達になるには積極的に話しかけることが大事だ」
秋「毎日の挨拶は基本」
秋「質問で相手を知りつつ自分もアピールして共通点を見つけろ」
秋「とにかく共感し、褒め、優しくし」
秋「相手の機嫌を良くして好印象を与えろ」
秋「そうすればあっという間に友達の出来上がりだ」
K・Y「おぉ〜なるほど!ありがとうございます!」
秋「まぁ全部ネットのコピペだがな」
K・Y「馬鹿にしてるんですか?」
K・Y(あっしまったつい!)
  K・Yが送信を取り消しました
秋「それで肝心の条件だが」
秋「例の女を放課後サミゼリアに連れて来い」
K・Y「え、藍原さんと知り合いなんですか?」
  〜15分経過〜
K・Y(未読スルー!?)
K・Y(天音さんが言ってた通りこの人全然駄目だ・・・)
K・Y(でもネット記事のことは一応信用してみるか)

〇教室
影野夜月「あ、藍原さんおはようございます!」
影野夜月「先週は本当にありがとうございました!」
藍原しずく「ん」
影野夜月「おぉ、朝からトマトジュース飲んでる」
影野夜月「本当にお好きなんですね!」
藍原しずく「ん」
影野夜月(ストロー咥えたままで話にならない・・・)
影野夜月「そうだ、趣味は何ですか?」
藍原しずく「トマトジュース飲むこと」
影野夜月「あっ分かりきったこと聞いちゃった」
影野夜月「じゃあ好きな本は?」
藍原しずく「トマトジュース図鑑」
影野夜月「好きなテレビは?」
藍原しずく「トマトジュース工場ドキュメンタリー」
影野夜月「好きな曲は?」
藍原しずく「トマトジュース哀歌」
影野夜月(狂ってる!!)
  ガクッ
影野夜月(もしや遠回しに拒絶されてる?)
影野夜月(嫌だ、嫌われたくない!)
影野夜月(また一人ぼっちになりたくない・・・!)
藍原しずく「そんなに飲みたいなら飲む?」
影野夜月「え?いやそういうわけでは」
影野夜月(てかそれ間接キスでは!?)
藍原しずく「そう、嫌なんだ」
影野夜月「あっいや飲みます飲ませて下さい!!」
  バッ(奪い取る)
影野夜月(う、ここに藍原さんの唇が・・・)
影野夜月(意識しちゃダメだ意識しちゃダメだ意識しちゃ)
  ゴクッ
影野夜月「ヴエェェ!!」
藍原しずく「は?」
影野夜月「す、すみません!」
影野夜月「吸血鬼は味覚が敏感なので」
影野夜月「味の濃い物が苦手で・・・!」
藍原しずく「トマトジュースが苦手なんて信じられない、味覚を疑う」
藍原しずく「吐いたトマトジュース返してほしい」
影野夜月(あ、終わった・・・)
花園清香(あらあら影野くんと藍原さん)
花園清香(いつの間に仲良くなったのかしら!?)
花園清香(二人共お似合いで素敵だわ♡)
花園清香(私も合コン頑張るわよ〜!)

〇教室
影野夜月(もう帰りたい・・・布団に包まりたい・・・)
影野夜月(そんな僕の気も知らず藍原さんは)
藍原しずく「Zzz・・・」
影野夜月(一日中堂々と寝てるし!!)
影野夜月(あのマイペースさが腹立たしいほどに羨ましい)
影野夜月(正直友達にならなくてもいい気がしてきた)
影野夜月(でも僕が心変わりしたからといって)
影野夜月(条件を破るわけにはいかない)
影野夜月(あの秋とかいう変な人)
影野夜月(気に入らないことがあれば平気で殴ってきそうだし)
影野夜月(殴られないように頑張れ僕!)
影野夜月「あの、方向同じですし」
影野夜月「良ければ一緒に帰りませんか・・・?」
藍原しずく「いいけど」
影野夜月「やった!」
影野夜月「あ、それで途中サミゼリアに寄って・・・」
藍原しずく「無理」
影野夜月「え!?なんで!?」
影野夜月「サミゼリア好きですか?」
藍原しずく「うん」
影野夜月「寄り道好きですか?」
藍原しずく「普通」
影野夜月「ぼ、僕のことは・・・?」
藍原しずく「さぁ」
影野夜月「アアアやっぱ嫌いなんだアアア」
藍原しずく「うるさい」
藍原しずく「あそこゴキブリがいるから行きたくないんだけどな」
影野夜月「え?衛生管理なってないんですか?」
藍原しずく「いや虫じゃなくて吸血鬼」
影野夜月「吸血鬼型のゴキブリ・・・?」
影野夜月「それ僕のことですか!?!?」
藍原しずく「面倒だな」
藍原しずく「分かった、行けばいいんでしょ」
影野夜月「わあっ良かったです!」
藍原しずく(七転八起の起き上がりこぼしみたい)
藍原しずく(武器の良い練習台になりそう)

〇ファミリーレストランの店内
  チリンチリーン
赤城「ようこそお待ちしておりました!」
赤城「さぁさぁどうぞこちらへ!」
藍原しずく「帰る」
影野夜月「え、やっぱり嫌でしたか・・・?」
藍原しずく(邪魔者がいて帰りづらい)
赤城「ではこちらのお客様を少々お預かりしますね〜」
  グイッ
藍原しずく「催涙スプレーで目潰すよ」
赤城「あーっ営業妨害はおやめ下さいお客様ー!」
藍原しずく「チッ」
  バタン
影野夜月「やっぱり知り合いなのかな?」
影野夜月「世界って狭いんだなぁ」
影野夜月「あ〜とにかくすごい達成感!」
影野夜月「すみません特大激苦ティラミスくださ〜い!」

〇ビルの裏
赤城「おい藍原しずく」
藍原しずく「店長さーんお宅のゴキブリが暴れてるー」
赤城「おいおいおい!!」
赤城「トマトジュースでも咥えとけ!!」
藍原しずく「むぐっ・・・」
藍原しずく「うまうま〜〜〜」
赤城「この世にトマトジュースがあって本当に良かった・・・」
赤城「おい、どうやらあのガキに」
赤城「女神面して血をお恵みなさったそうじゃないか」
赤城「俺の時はあんなに嫌がっていたのになぜ?」
赤城「理不尽だと思わないか?」
藍原しずく「なんでそのこと知ってるの?」
藍原しずく「あと名前も」
藍原しずく「個人情報盗難は犯罪だよ」
赤城「GPSを駆使するお前に言われたくないわ」
赤城「あのガキが勝手にペラペラ話してくれたんだ」
赤城「すんなり命令にも従うし便利だ」
藍原しずく「ふぅん、それ本人に伝えとくね」
赤城「あっ今のは聞かなかったことにしてくれ、頼む」
藍原しずく「夜月くんはあなたほど気持ち悪くないから及第点」
藍原しずく「あなたは論外」
藍原しずく「二度と関わらないでって言ったよね」
赤城「・・・そうかそうか、そんなに気持ち悪いか」
赤城「確かにこないだの発言はデリカシーに欠けていたな、謝る」
赤城「だが俺は一度気に入った血は」
赤城「どんな手を使ってでも手に入れたい性分でな」
赤城「それが吸血鬼の在るべき姿だとも思っている」
赤城「だから何が何でも俺と専属契約してもらう」
藍原しずく「言っておくけど『謝る』って謝罪の内に入らないから」
藍原しずく「契約って何?死んでもするわけないでしょ」
藍原しずく「また力尽くで奪えると思ったら大間違いだからね」
赤城「安心しろ、二度とそんなことはしない」
赤城「契約とは対等な立場で合意するものだ」
赤城「対等なパートナーとして俺だけに血を捧げてほしい」
藍原しずく「これ以上気持ち悪くなって何がしたいの?」
藍原しずく「刑務作業?」
赤城「気持ち悪い言い過ぎだろ!!」
赤城「勿論タダでとは言わないぞ」
赤城「あれが報酬だ」
赤城「中身を見ておいで」
藍原しずく(急に声色が優しくなった)
藍原しずく「何かの罠か。燃やしてみよう」
赤城「ギャアアア平然と火炎放射器を取り出す奴があるか!!」
赤城「銃刀法違反で通報するぞ!!」
藍原しずく「ならあなたも強制わいせつ致傷罪に問う」
赤城「勘弁してくれ、あの中身は」
赤城「お前の大好きなトマトジュースだ!」
藍原しずく「えっ」
  タタッ(駆け寄る)
藍原しずく「わあっ何これ、いっぱい、嬉しい」
赤城「フフ、凄いだろう」
赤城「俺と契約した暁には」
赤城「トマトジュースを月30本用意してやる」
赤城「どうだ、互いに良い条件だと思わないか?」
藍原しずく「思う、契約してあげる」
赤城「まさかここまでチョロいとはな」
藍原しずく「なんか言った?」
赤城「いいや?」
赤城「じゃあルールとして決まってるもんだから」
赤城「早速首に契約の証を付けさせてもらうが・・・」
赤城「一旦飲むのやめてくれないか?」
藍原しずく「やだ」
赤城「誰も取らないから、ほら」
藍原しずく「やなものはやだ」
赤城「いッッた!!」
赤城「人を引っ掻いていいのは猫だけだぞ!!」
藍原しずく「にゃん」
赤城「可愛こぶっても駄目だ!!」
藍原しずく「トマトジュースタイムを邪魔する者はこうなるのだ」
赤城「ったく、どんだけ好きなんだ・・・」
赤城「まぁ気持ちは分かるが」
赤城「何でもかんでも量が多ければ良いってもんじゃないぞ」
赤城「跡をつけるから多少痛いだろうが我慢しろ」
藍原しずく「ん」
  ガブッ
赤城「・・・あー美味い」
赤城「この生き血だって限りがあるから美味いんだ」
赤城「希少性のある高級品のようにな」
藍原しずく「ふぅん、そういうものなんだ」
赤城「あぁ、そういうものだ」
赤城「よし、これで契約完了だな」
藍原しずく「なんかこれキスマークみたい」
赤城「ばッ・・・馬鹿言え」
赤城「これは正式な儀式の一環だ」
赤城「茶化すようならもっと痛々しい傷を付けるぞ」
藍原しずく「付けられるものなら付けてみればー」
赤城「馬鹿にしやがって・・・」
赤城「そうやってむやみに人前で首元晒すなよ」
赤城「誰が吸血鬼か分からないからな」
藍原しずく「急に心配して何?」
藍原しずく「失った好感度取り戻そうとしてるの?」
赤城「違う!!」
赤城「俺の主食になった自覚を持てって意味だ」
藍原しずく「主食て」
赤城「俺以外に与えたら許さないからな」
藍原しずく「それ振り?」
赤城「振りなわけがあるか!!」
藍原しずく「献血はセーフ?」
赤城「うーん全然アウトだな」
赤城「血が勿体無い」
藍原しずく「日本赤十字社に謝って」
赤城「・・・すみません」
藍原しずく「赤十字社ってどっち方面かな」
藍原しずく「う、眩しい」
藍原しずく(いつもはオレンジ色なのに)
藍原しずく(今日の夕日は血みたいに赤く染まってる)
藍原しずく(偶然とはいえ、やけに綺麗だな)
藍原しずく「ほらいつまでも謝ってないで」
藍原しずく「箱運ぶの手伝って」
赤城「お前が謝らせたんだろうが」
赤城「夜月は置いて帰るのか?」
藍原しずく「あぁ存在忘れてた」
藍原しずく「まぁ別にいいよ、無理やり連れて来たのはあっちだし」
赤城「そうやって適当な対応してると友達いなくなるぞ」
藍原しずく「いなくていいよ」
藍原しずく「私はトマトジュースにしか興味ないから」
  スタスタ
赤城「確かに俺も血にしか興味ないな」
赤城「よく分かってるじゃないか・・・」
赤城「って手ぶらで先行くな!!」

〇シックな玄関
赤城「最低週2回ここに吸いに来るからな」
藍原しずく「んー」
  ちゅーーー
赤城「おい聞いてるか?」
藍原しずく「家あんまり知られたくなかったな」
赤城「お前が来させたんだろうが」
赤城「来週水曜日と金曜日、ちゃんと覚えとけよ」
藍原しずく「その日私が失踪したら餓死する?」
赤城「餓死する」
藍原しずく「ふぅん、どうしようかな」
赤城「どうしようかな、ではなく」
赤城「お前に命を懸けてるんだ」
赤城「本当によろしくな」
藍原しずく「・・・・・・」
藍原しずく「勝手に命懸けられても困る」
赤城「え、あぁ、今の表現は大袈裟だったか」
藍原しずく「でもその分私も」
藍原しずく「トマトジュース愛懸けるから」
藍原しずく「よろしくね、トマトジュース配達員」
赤城「よろしくしたくなくなってきたな」
藍原しずく「それにしても人の金で飲むトマトジュースは最高」
藍原しずく「スペシャル2本飲みも可能」
赤城「やめろやめろ無くなるぞ」
藍原しずく「あ、もう無い」
赤城「異常者か!?」
藍原しずく「30本じゃ足りない。せめて100本にして」
赤城「ひゃ、ひゃく・・・」
赤城「出費がかさむ・・・」
藍原しずく「ドンマイ」
赤城「他人事みたいに言うな」

〇まっすぐの廊下
  〜翌週〜
藍原しずく「♪トットットッ」
藍原しずく「♪トマトジュース〜」
藍原しずく「♪君の赤みが強すぎて〜」
藍原しずく「♪眼球全部・・・」
  ♪ピロン
藍原しずく(あ、トマトジュース配達員からLIME)
藍原しずく(そういえば今日水曜日だった)
藍原しずく(わざと遅れて帰ってみようかな)
藍原しずく「♪眼球全部焼けちゃった〜」
藍原しずく「♪嗚呼トマトジュース哀歌〜」
花園清香(あらあら藍原さんご機嫌ねぇ)
花園清香(何か良いことあったのかしら・・・)
花園清香(ハッ!!)
花園清香(藍原さんの清らかな首に)
花園清香(キッ、キキッ)
花園清香(キスマーク!?!?)
花園清香(相手はどこの馬の骨よ!?)
花園清香(あ、まさか)
花園清香(影野くん!?!?)
花園清香(影野くんともうそこまで行っちゃったの!?)
花園清香(転校早々狩りだなんて)
花園清香(あの子控えめに見えてなかなかやるのねぇ!)
花園清香(今どきの若者は瞬速だわ!)
花園清香(私も1000kmマラソンで足鍛えるわよ〜!)
花園清香「・・・藍原さん」
藍原しずく「はい」
花園清香「あなたの背中、追わせてもらうわねッ!!」
藍原しずく「はい?」
  つづく🍅

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