瓦礫の街の不死鳥(1)(脚本)
〇川沿いの原っぱ
ヒナ「むむむ・・・」
ヒナ「むむむむむむ・・・」
ヒナ「おりゃあああああ!」
ヒナ「くっそう」
バロン「プププッ・・・」
ヒナ「・・・チッ」
ヒナ「だりゃあああああ!」
バロン「ププププッ・・・!」
ヒナ「うるっっせえんだよプリプリプリプリ!」
ヒナ「っていうか、踊りの練習 覗くなっつってるだろ! タマ〇ン蹴り潰すぞこのやろう!」
バロン「こっちも言ってるだろ? ダンスは笑顔で踊れって」
バロン「蓬莱街は自由の街。 心持ちひとつで天国にも地獄にもなる」
バロン「俺達芸人は ここを天国にするために歌い踊るんだ」
ヒナ「自由の街・・・」
バロン「俺はな、ヒナ。 いつかこの国全体が、本当の自由の国に なるんじゃねえかって思ってる。 良くも悪くもな・・・」
バロン「お前が大人になる頃には、 きっとそうなってる。 だからこの国のみんなを 天国に導いてやるんだ」
バロン「まず笑え。 必死で笑え。 その笑顔に世間様は金を払ってくれるんだ」
バロン「それが懸命に生きてる世間様から、 俺達遊び人が金を頂くってこった」
ヒナ「お、おう。分かったぜ父ちゃん」
ヒナ「こ、こうか?」
ヒナ「う、うっふ~ん」
バロン「方向性は違うが、まあいいか」
〇古い競技場
ヒナ「・・・」
ヒナ「・・・ププッ」
ヒナ「はははっ!」
ケン「何が楽しいんだよ。 みんな死にもの狂いで戦ってんだぞ」
ヒナ「おお、これはこれはケンちゃん。 そういう君も鎧脱いだのかい?」
ヒナ「どうだこの衣装!ゲロカワイイっしょ!」
ケン「だからなんだ。 今は俺達にとっても復讐の時だろ!」
ヒナ「おっ、物騒な言葉使うようになったな」
ケン「悪いかよ!だいたい、さんざん俺を 物騒な目に合わせてきたのは、 この国の連中の方じゃねーか!」
ケン「ヒナも同じだろ。クソ外人共に 遊び半分で産み捨てられてさ。 この国でしか生きられねえのに、 この国から白い目で見られてさ」
ヒナ「それでもみんなで歌ってる時だけは 楽しかったろ?」
ケン「ああそうだよ。だから俺は・・・」
ヒナ「なんだそれ?」
『ここにいたのね』
ヒナ「姫さん」
トラ「ケン、その機械をよこせ」
ケン「俺にくれたんじゃなかったのかよ」
デンキ「非常事態なんだ。 自由の女神の声を国じゅうに伝えるしか、逆転の道はないんだ」
ヒナ「どういうこった?」
ケン「よくわかんねえけど、少しの間だけ ラジオ放送を乗っ取れる機械みたいだ」
ヒナ「ははっ!そりゃいいや! みんなで歌って踊ってるところを 放送しちゃおうぜ!」
タジマ七郎「バカを言うな!五分しか使えないんだぞ!」
バリトン豊「遊んでる場合じゃないんだ! 桜子さんの言葉には 蓬莱街の未来がかかってるんだよ!」
マネ玄人「さあ。機械を渡してくれ、ケン」
ロン「戒厳兵は親分たちが食い止めてくれてるがいつまで持つか・・・」
クラムぼんぼん「チャンスは今しかない!早く!」
ダリア「みんなのためよ。分かって」
ケン「ダリアまで・・・」
ケン「姫さんも同じ気持ちなの?」
桜子「綺麗ごとを言ってごめんなさい。 何もかも私の力不足でした」
桜子「私にジャミングを使わせて。 私の声をこの国全てに届けさせて」
『ダメだ』
ヒナ「それはお前が貰ったもんだろ。 河原者は手に入れたもんは、 絶対に手放しちゃなんねえ」
桜子「ヒナさん・・・」
〇廃倉庫
天粕「構わん、撃て」
「・・・」
義孝「ならん。撤退せよ」
「・・・」
天粕「あれは亡き来栖川閣下と瓜二つの道化師。 バロン吉宗の猿芝居だ」
義孝「私がその来栖川義孝だ。 私は軍部の権力闘争の最中、 天粕と大泉の姦計に嵌り 命を失いかけた所をバロン吉宗に救われた」
義孝「報道された遺体はバロンのものだ」
天粕「下らぬ詐術、に惑わされるな! お前達は秩序の要であろう!戒厳兵!」
義孝「私を撃てば軍法会議どころでは済まぬぞ! 分かっているのか!戒厳兵!」
『その通り』
謎のモガ「この御仁が本物の来栖川閣下であることは 正体こそ名乗れぬがこの私が保証しよう」
謎のモガ「氏素性こそ語れぬがこの私はかねてより 天粕司令が推進する帝都秩序再構築構想、ユートピア―ド計画の存在を調査していた」
謎のモガ「天粕はその計画に意を唱える来栖川閣下を排除し出世を果たし、軍事参与に昇格することを目論んでいたのだ」
謎のモガ「そう!全ては天粕の臣民統制の野望! そのために奴はテロリストとも共謀した! 観念しろ!証言は全て揃っているんだ!」
謎のモガ「まあ、私の正体こそ明かせんがな!」
天粕「黙れ最上」
最上「何故分かったーーーっ?」
つづく