好きの在処

夏名果純

第13話 日記のパスワード(脚本)

好きの在処

夏名果純

今すぐ読む

好きの在処
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇教室
  7月16日(火)
  翌日、花奈は登校しても朝からぼんやりしてしまっていた。
水杉花奈(昨日まで、3人の男の子と順番にデートするなんて、なんだか不思議な休日だったなあ・・・)
松木明日香「かーな!」
水杉花奈「わっ!?」
  突然、背後から声をかけられて、花奈はびくっと身体を揺らした。
水杉花奈「明日香か、びっくりしたー・・・」
松木明日香「ふふっ、おはよう!  それで、どうだったのよ?」
  見ると、明日香の目は期待に満ちている。
水杉花奈「そんな目で見られてもたいした進展はないよ?」
水杉花奈「でも・・・」
松木明日香「何!?」
  明日香が目を見開いて、花奈の言葉を待っている。
  花奈は頭の中で自分の気持ちを整理しながら、明日香に話した。
水杉花奈「・・・というわけなんだ」
松木明日香「そっかそっか。 やっぱり本谷くんは違ったんだね」
水杉花奈「うん。拓人くんには悪いことしたなって思ってるんだけど」
松木明日香「そんな、気にすることないと思うよ?」
松木明日香「花奈は花奈なりに精一杯、本谷くんの気持ちに向き合ったんだから」
松木明日香「むしろ、誠実でよかったと思うよ」
水杉花奈「うん・・・」
水杉花奈(でも、拓人くんに話した時はさすがに胸が痛んだな・・・)
松木明日香「それで? 謙弥くんと修司くんは?」
水杉花奈「うーん、今のところ、そんなに大差ないのかなあ・・・まだわからなくて」
水杉花奈(もうほとんどあきらめてるけど、まだ記憶は戻らないし・・・)
水杉花奈(階段から落ちる前、私は2人に返事しに行ったんだから、何かしらの答えは出ていたんだろうけど)
松木明日香「もういっそのこと、3人で付き合っちゃえば? 彼氏が2人!」
水杉花奈「えーっ、何言ってんの!  そんなこと、できるわけないよー」
松木明日香「ちぇっ、ダメかー」
  軽口をたたきつつ、明日香が励まそうとしてくれていることは花奈にも伝わってきた。

〇階段の踊り場
  昼休み、花奈がひとり階段を上り終えた時、向こうの廊下から謙弥が歩いてきた。
水杉花奈「あっ、謙弥!」
川崎謙弥「おう。こんなとこで会うなんて珍しいな。 そうだ。ちょうど今、送っといたから」
水杉花奈「何を?」
川崎謙弥「ほら、土曜の写真」
川崎謙弥「全部送ったと思ったら、まだ1枚送り忘れててさ」
川崎謙弥「授業中に気づいたから」
水杉花奈(遊園地で何枚か写真を撮ったのは覚えてるけど・・・)
水杉花奈「ありがとう。でも、なんで授業中なの?」
水杉花奈「さては授業、聞いてなかったでしょー?」
川崎謙弥「だって、すげー退屈だったんだよ」
川崎謙弥「わけわかんねぇんだけど、数学!  腹も減ってたし」
水杉花奈「聞いてなかったら、さらにわけわかんなくなるからね?」
水杉花奈「・・・あっ!?」
  バンッ
  花奈が眉をひそめたその時、誰かが走ってきて花奈の肩に勢いよくぶつかった。
川崎謙弥「おいっ!」
  その拍子によろめいた花奈を、とっさに謙弥が抱きとめる。
川崎謙弥「気をつけろよ!」
男子生徒「わ、悪いな!」
  ぶつかった男子は一言焦ったように言って、去っていった。
水杉花奈「・・・・・・」
  謙弥が支えてくれなければ、花奈はまた階段から落ちたかもしれない。
  まだ謙弥の腕の中にいる花奈は、突然のことに何も言葉が出てこなかった。
川崎謙弥「花奈、大丈夫か?」
水杉花奈「う、うん・・・。 ちょっとびっくりしただけ」
水杉花奈(階段からまた落ちるかもって、確かにそれも思ったけど・・・それだけじゃなくて)
  花奈は謙弥のぬくもりに包まれている今の状況にひとり戸惑う。
  しかし、花奈の胸中を知らない謙弥は──
川崎謙弥「・・・焦った。 また落ちたらどうしようかと思った」
  つぶやくように言って、花奈の身体をぎゅっと強く抱きしめた。
水杉花奈「!」
  それは先日された、お化け屋敷でのハグとは違い、とても力強くて情熱的だった。
水杉花奈「け、謙弥?」
川崎謙弥「もう、花奈を悲しい目に遭わせたらいけねぇのにな」
川崎謙弥「俺が守らないといけねぇのに・・・」
水杉花奈「謙弥・・・大丈夫だから。ね、もう放して?」
川崎謙弥「嫌だ」
水杉花奈「・・・っ」
  花奈が謙弥の腕から逃れようとすると、ますます強く抱きしめられてしまう。
川崎謙弥「花奈・・・」
  ようやくわずかに離れたと思ったら、今度は謙弥が花奈の瞳を熱心に見つめてきた。
川崎謙弥「・・・・・・」

このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です!
会員登録する(無料)

すでに登録済みの方はログイン

次のエピソード:第14話 日記の真実

成分キーワード

ページTOPへ