第14話 日記の真実(脚本)
〇ファンシーな部屋
水杉花奈(パスワードってもしかして!?)
花奈は、はっとひらめいた数字を日記アプリのパスワード欄に入力してみる。
水杉花奈(今度こそ開いて!)
そして、祈るような気持ちでおそるおそる実行ボタンを押すと──。
水杉花奈「開いた!」
ついに、日記アプリが開かれた。
パスワードは謙弥が引っ越してきた日。
すなわち、3人が初めて顔を合わせた日だった。
水杉花奈「どうして、今まで忘れていたんだろう」
トップ画面には日記を書いたらしい日付がずらりと並んでいる。
水杉花奈(ずっと読みたいと思ってたけど。 でも、いざ読めるとなったら、今度は読むのがちょっと怖い・・・)
今さら、花奈はおじけづいて日記本文を読むのをためらってしまう。
水杉花奈(でも・・・このままじゃいけない。 階段から落ちる前の自分の気持ちは、やっぱり知りたい!)
水杉花奈(知っておかないといけない気がする・・・)
どうにか勇気を振り絞って、花奈はスマホの画面をしっかりと見つめた。
水杉花奈(今年の6月3日から始まってる。 そして、階段から落ちた日が最後だ・・・)
水杉花奈「よし、読むぞ!」
花奈が自分に言い聞かせるように言った後、最後の日記が目に留まった。
水杉花奈(6月18日・・・)
『決めた。私、修司の気持ちに応えようと思う』
水杉花奈「えっ!?」
水杉花奈(・・・修司なの? ようやく、自分の気持ちが謙弥にあると思ったのに・・・)
花奈はスマホを手に呆然としてしまったものの、すぐに気を取り直して、再び日記と向き合う。
水杉花奈(どうして、修司に決めようって思ったのか、確認しないと・・・)
花奈は、最初から順に日記を読んでいくことにした。
〇黒
6月3日(月)
頭が混乱してわけがわからなくなったので、この日記をつけることにした。
謙弥と修司のことを、私はずっと大事な幼馴染みだと思っていた。
そうとしか思ってなかった。
それなのに・・・。
〇ファンシーな部屋
水杉花奈(あっ、この日に告白されてから日記を書き始めたんだ!)
水杉花奈(最初に修司が「今年は花火大会、花奈と2人で行きたい」って言いだしたって書いてある)
水杉花奈(・・・そこから、同時告白されたって。 2人から聞いたとおりだ)
〇黒
6月4日(火)
1人じゃどうしようもなくて、明日香に相談した(こんなことを話せるのは明日香しかいない)。
〇教室
松木明日香「へえ、幼馴染み2人から告白!? 花奈ってばモテモテだね~」
水杉花奈「そんな、のんきなこと言ってる場合じゃないんだってば!」
水杉花奈「私、どうしたらいいのか・・・」
松木明日香「花奈は2人の気持ちに気づいてなかったの?」
水杉花奈「うん、まったく・・・」
松木明日香「そっか。それじゃあ、戸惑うのも無理ないんじゃない?」
水杉花奈「うん・・・」
松木明日香「大事なのは花奈の気持ちだよ。 花奈がどうしたいか、じっくり考えてみたら?」
水杉花奈「私がどうしたいか?」
松木明日香「うん・・・って、こんな当たり前のことしか言えなくてごめんねー」
水杉花奈「ううん! ・・・ありがとう、明日香」
〇ファンシーな部屋
水杉花奈「明日香・・・」
水杉花奈(階段から落ちる前も私、明日香にずっと励ましてもらってたんだなあ)
〇黒
6月5日(水)
2人に告白されてから、なんだか私たちはいつもと違う。
確かにもう高校生なんだから、昔みたいにいつも一緒にいて遊んだり・・・なんてことはなくなっていた。それでも──
〇通学路
水杉花奈「あっ、謙弥!」
川崎謙弥「お、おう・・・」
水杉花奈「今、帰り?」
川崎謙弥「ああ、お前もか?」
水杉花奈「そうだよ」
それ以上会話が続かず、2人とも黙って歩いた。
川崎謙弥「・・・・・・」
水杉花奈「・・・・・・」
水杉花奈(どうしてだろう、いつもみたいに笑って話せない・・・)
〇学校の廊下
水杉花奈「あ」
吉岡修司「あ」
吉岡修司「・・・・・・」
水杉花奈(今、目をそらされちゃった・・・)
吉岡修司「あ、いや、その・・・」
その時、ちょうど予鈴のチャイムが鳴った。
水杉花奈「授業だ。じゃあ、またね」
吉岡修司「うん・・・」
水杉花奈(謙弥とも修司とも、今までどおりじゃなくなっちゃった)
水杉花奈(やだなあ、今の感じ。普通に仲のよかった、幼馴染みに戻りたい・・・)
〇黒
6月6日(木)
同じクラスの本谷拓人くんと初めてちゃんと話した。
〇教室
水杉花奈「痛っ!」
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