『夢』見がちなふたり(脚本)
〇シックなバー
葵「ね~、聞いてよマスター。 またコンテスト駄目だった~」
マスター「・・・」
葵「ほら、この前。 最高傑作が書けたって、話したでしょ?」
葵「これなら書籍化間違いなし!って、 自信満々だったのに」
葵「最終選考に残れなかったの」
葵「はぁ。もう、小説家になる『夢』なんて、 諦めたほうがイイのかな・・・」
葵「・・・あ、みやちゃんから電話だ。 ちょっと、出ますね」
葵「もしも~し、お疲れ! 先に飲んでるよ~♥️」
葵「・・・え? バーの入り口が分からない?」
葵「ちょっと待ってて。 今、迎えに行くから・・・」
〇シックなバー
みやび「あら、素敵なお店」
みやび「葵は・・・って、いないの? 行き違ったのかしら」
みやび「すみません、ココいいですか? ええと、オーダーは──」
みやび「ふあ~ぁ(あくび)」
みやび「失礼。 最近、寝不足が続いていて・・・」
みやび「夢見が悪いって、言うんですかね?」
みやび「毎晩、ドラマみたいな長い『夢』を、 立て続けに見てしまうんです」
みやび「おかげで、朝から疲労感がすごくて」
みやび「そうだ。リラックス効果の期待できる、 カクテルなんてあります?」
みやび「できるだけグッスリ眠れるように」
葵「あ~! みやちゃん、いた~」
みやび「ごめん、タイミングが悪かったみたいね。 じゃあ、改めて──」
「お疲れさま!」
みやび「──で、何があったの? 急に「飲みたい」なんて」
葵「・・・」
葵「私ね・・・ ずっと見続けてる『夢』があるんだけど」
葵「長い夜から、なかなか抜け出せなくて。 今すごく辛いの」
みやび「葵も、『夢』に悩まされてるの?」
みやび「実は私も今、苦しんでるのよ」
みやび「体力的にも精神的にも、そろそろキツくて・・・」
葵「リアリストの、みやちゃんも!?」
葵「ふふっ。打ち明けるか悩んでたんだけど、 同じ気持ちなんて嬉しいなぁ」
葵「ねっ、それじゃあ今夜は、 お互いの『夢』について語り合わない?」
みやび「いいわよ。 隠さず、正直に話すっていうならね」
みやび「──で、葵が見てるのってどんな夢?」
葵「・・・笑わないって、約束してくれる?」
みやび「もちろんよ」
葵「実は、小説家になって本を出す、って夢なの」
みやび「なんだか、楽しそうな夢じゃない」
葵「でも、コンテストは落選続き。 才能がないって、思い知らされるだけで」
みやび「挫折を繰り返す夢、ってこと?」
みやび「いつから見てるの?」
葵「言えなかったんだけど、実は大学の時からなんだぁ」
みやび「な、7年も!? それじゃ、寝不足もいいとこじゃない!」
葵「いや、そんなっ。 寝る間もないほど、ってわけじゃないよ」
葵「でもそろそろ目を覚まさなきゃって思うのに、止められなくて」
みやび「分かるわ。夢って厄介よね・・・」
葵「そう言う、みやちゃんはいつから?」
みやび「6日くらい前よ。 葵に比べたら、大したことないけど」
葵「まだまだ、これからだね」
葵「ねえ、どんな夢か教えてよ♥️」
みやび「誰にも言わないでよ! 実は──」
みやび「異世界転生・・・なの」
葵「えぇっ!?」
葵「あの堅実なみやちゃんが、そんな中二病ちっくな──」
葵「ううん! 壮大な夢を見てるなんて・・・」
みやび「やっぱり、私らしくない?」
葵「そ、そんなことないよ! むしろギャップ萌え」
葵「で、転生先では何を?」
みやび「うん・・・悪役令嬢っていうのかしら?」
みやび「社交界の花に生まれ変わって、 政略結婚した、イケメン公爵に溺愛されて」
みやび「地位と権力と、愛を手に入れるの」
葵「そこまで具体的に!? しかも意外と強欲!?」
葵「(小声) 今の職場、そんなに辛いのかなぁ。 カレシともうまくいってない、とか」
葵「(小声) それともバリキャリ女子の、新たな挑戦ってこと!?」
みやび「私、変かしら?」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)
夢についてすれ違うふたりをニヤニヤしながら読ませていただきました。ここまで綺麗にテンポよくすれ違わせる技術、すごい…!内容もポップで、とても面白かったです。そしてやはり立ち絵がふたりとも可愛いです…✨
目標の夢と、寝る時に見る夢、二人意味を間違えてとらえているけどすれ違ったまま会話が成立して面白い!
しかしコンテストと聞くとなんだかソワソワしてしまう私です。
つぼみさんこんにちは!最後まで読んだ後に拍手してました!勘違いで会話が進んでいき、絶妙な言葉遊びでどんどんお話が進んでいって、すごい!!こんなにキレイにすれ違う言葉がハマると気持ちいい!と思いました🙌