第30章 両義性(脚本)
〇綺麗なコンサートホール
「『譲れない想い抱きしめ』〜♪」
ゆき「楽しそうだね」
ゆづき「うん、やっぱり笑顔が1番だよ」
はるか達は、会場の前で楽しそうに歌うgladiolusを見ていた
雨雲は去り、すっかり晴れ模様だ
はるか「今日のgladiolusのステージより、ずっと素敵な歌声・・・」
はるかはここまで言ってから、言葉を途切れさせた
はるか「ねえ、うちら・・・ ずっと忘れてたんじゃないかな・・・」
〇劇場の楽屋
ゆき「講評、「何も伝わってこなかった」って書いてある・・・」
〇綺麗なコンサートホール
はるか「勝たなきゃ、勝たなきゃ、って焦って・・・ ステージを楽しむこと、忘れてたよね・・・」
さくら「たしかに・・・そうかもね」
4人は再びgladiolusの方へ目をやった
楽しそうな笑い声が聞こえる
こちらまで自然と笑顔になるような暖かさを感じた
はるか「うちら今日まで、たくさん頑張ってきたよね」
ゆき「練習もライブも、たくさんやったもんね」
さくら「つまんない言い合いもたくさん・・・なんてね」
はるかは頷いた
はるか「もう一回、思い出そう もう一回、原点に帰ろう」
はるか「MoonlightCupには出られなかったけど・・・ また自分達らしく楽しくライブしようよ!」
はるか「それが、”Happy♡Parade”だから・・・!」
「うん・・・!」
4人は手を繋いだ
全員、清々しい顔をしている
はるか「私たちも、再出発しよう!」
「うん!!!」
4人は笑い合った
これからはしっかり進んでいける、そんな予感がした
まみこ「こらこら、なに青春しちゃってるの!」
まみこ「手なんか繋いじゃって!」
さくら「そっちだって、青春しちゃってたくせに〜!」
まみこ「ま、まあね〜?」
まみこは照れたように笑った
ゆづき「再結成おめでとう! 私たちまで、じーんと来ちゃった」
りょう「ありがとう・・・ いろいろ迷惑かけちゃったけど、早く4人でステージがしたいな!」
りょうが笑った
次のライブが待ちきれない、という顔だ
はるか「ねえ、それなんだけど・・・ いい案があるの」
〇ファミリーレストランの店内
──30分後、ファミレス
「合同ライブがしたい?!」
はるか「そう! 再結成ライブも兼ねてさ、どうかな?」
ゆき「いやいやいやいや、何言ってるの・・・ gladiolusは超大御所で、大先輩で・・・」
りょう「でもその前に、私たち友達でしょう?」
あやか「そうね、それに出場権を失って、やることもないし・・・」
あやかの反応を聞いて、はるかはゆきにニンマリと笑いかけた
さくら「楽しそうだけど・・・いつやるの?」
はるか「準備とかもあるし、冬休みがいいかなって思うんだけど・・・」
まみこ「じゃあクリスマスなんてどう? クリスマスライブ!」
「めっちゃいい!!」
2人が同時に声を上げた
さくら「聖なる夜に、「SAY!鳴る!夜!」ってね〜!」
かの「ひどいギャグだね・・・」
はるか「それでもう一つ提案があって・・・」
はるか「アンコールステージ、8人でやるのはどうかな?」
ゆづき「合同チームってこと?」
はるか「そう!」
あやか「なるほど・・・いい化学反応になるかもしれないわね」
あやかがジュースをすすりながら言った
完全に「ノっている」時の顔だ
あやか「ここまできたらとことんやりたいわね・・・」
あやか「りょうちゃん、曲の用意ってできるかしら?」
りょう「うん、頼んでみるよ!」
ゆづき「えええっ、新曲まで?!」
ゆづきは驚いてポテトを落とした
はるか「りょうちゃん、曲書けるの?!」
りょう「ううん、ちょっとした”コネ”ってやつよ」
りょうは照れ臭そうに言った
まみこ「りょうちゃんの家、色んな事業をやってるから、今までもたくさん助けてもらったんだ」
さくら「そうそう!」
〇華やかな寮
さくら「学校だって、あの超お嬢様学校の白鳴館!」
はるか「白鳴館?! すごい!本物のお嬢様!!」
〇ファミリーレストランの店内
りょう「いやいや、さくらだって中等部までは白鳴館だったじゃない・・・」
「えっ・・・そうだったの?!?」
さくら「あれっ、言ってなかったっけ・・・」
「言ってない!!!!!」
さくらは頭をポリポリとかいた
まみこ「さあさあ、そうと決まったら仕事はいっぱい!」
ゆづき「そうね、うかうかしてられない!」
はるかはドリンクカップを高く掲げた
はるか「よ〜〜〜し、合同ライブ、がんばろ〜〜っ!!!」
〇空
「お〜〜〜っ!!!」
〇雑踏
──同時刻、サルビアプロダクション内
〇個別オフィス
むつみ「今日、MoonlightCupの予選が終わったわ」
むつみ「今から本戦出場者一覧を配るから、目を通しておいて」
そう言うと、むつみはてきぱきと資料を配り始めた
あさか「MoonlightCupってなんだっけ?」
さとこ「・・・うちが主催する大会 プロならそれくらい覚えたら?」
むつみ「さぁ、配り終えたかしら」
むつみは書類の枚数を確認すると、自分のデスクに座った
むつみ「この大会は、「CRESCENTのプロモーションとして大きな成果がある」と期待して開催したものよ」
むつみ「決してお粗末なステージにしないこと、いいわね?」
むつみがCRESCENTを睨んだ
あさかが欠伸をした
むつみ「本戦出場の10チームはどこも強豪よ、特に・・・」
むつみは言葉を途切らせ、書類の隅から隅まで再度目を通した
むつみ「あれ・・・gladiolusは本選出場者じゃなかったかしら?」
スタッフ「ああ、gladiolusはメンバー構成変更により出場権がはく奪になりました」
メガネのスタッフがあたふたと答えた
むつみ「そう、なら出場者をもうひとチーム追加してくれるかしら?」
むつみ「ファン投票のB選考・・・これなら本戦にも間に合うはずだから、1枠追加できるわよね?」
スタッフ「はあ、わかりました・・・直ちに」
むつみ「期限はそうね・・・1ヶ月」
〇空
むつみ「──クリスマスの日なんてどうかしら」
──運命の歯車が動き出す音がした