Sparking Carats!

西園寺マキア

第27章 浅はかな関係?(脚本)

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西園寺マキア

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〇殺風景な部屋
  ──それから数週間後
ハナ「・・・」
  サルビアプロダクションの練習室で、ハナはスマートフォンを眺めていた

〇SNSの画面
  「gladiolus、一周年記念ライブ翌日にメンバー脱退」というタイトルの記事には、
  「メンバー構成変更により、MoonlightCup出場権のはく奪」という文言がでかでかと掲示されている

〇殺風景な部屋
ハナ「・・・りょうちゃん」
ハナ「MoonlightCupで戦えると思ったのに、残念・・・」
  ハナが暫く画面を見つめていると、ドアががちゃりと開く音がした
きり「こんばんは・・・」
ハナ「あぁ、こんばんは」
  ハナはきりのほうをちらっと見ると、再び画面に目を落とした
きり「・・・あの、他の皆さんは?」
ハナ「・・・さあ? ザカは撮影って聞いたけど・・・」
  ハナは画面を見つめたまま、面倒くさそうに答えた
きり「芸能人みたい・・・すごいですね」
ハナ「・・・ザカのこと知らないの? プロデューサーの言う通り、本当に世間知らずなのね」
  「ザカ」とはCRESCENTのメンバー、「あさか」のことである

〇テレビスタジオ
  幼いころから子役として芸能活動を続けており、

〇テレビスタジオ
  通称「ザカちゃん」として、オーディション番組から現在に至るまで、CRESCENTの中でもかなりの人気を誇っている

〇殺風景な部屋
ハナ「・・・ところで、何か用?」
きり「個人レッスンの帰りで・・・ みなさんと仲良くなれるかなって」
???「そんな時間、必要ない」
  部屋の隅から声がした
ハナ「あぁ、いたのね」
さとこ「居たっていなくたって、関係ないでしょう?」
  さとこの言葉を聞いて、ハナは肩をすくめた
さとこ「ねえあなた、私たちは芸能人で、プロなの 私たちのために、大勢の大人が動いてくれている」
さとこ「全てスケジュール通り、予定どおりにこなさなければスタッフに失礼でしょう?」
さとこ「私たちの一分一秒にお金が発生しているって・・・ 少し考えればサルでもわかるわ」
さとこ「なれ合いなんて、時間の無駄なの」
  さとこはきりをじっと見つめて言った
さとこ「・・・でもまあ、いい機会だから聞く」
さとこ「あなた、どうして芸能界に?」
きり「・・・世界中の人に、わたしを見つけてもらうため」
さとこ「ふぅん・・・」
  さとこは鼻を鳴らした
さとこ「ま、野望だけは結構だけど・・・」
さとこ「とにかく、プロという意識だけ忘れずにやってくれればいい」
さとこ「私たちのすべての行動が多くの人の収入・・・生活に関わることを肝に銘じて」
  さとこは荷物をまとめると、ドアノブに手をかけた
さとこ「この活動をする上で、私たちやほかのアイドルと馴れ合う必要はないから」
  さとこは吐き捨てるように言うと、練習室を出ていってしまった
ハナ「まあ、そういうことだから・・・」
  ハナも荷物をまとめはじめる
きり「・・・あの、よければハナさんの話も・・・」
  きりの言葉を聞いて、ハナは気だるげに振り返った
ハナ「ごめんなさい・・・」
  荷物を持ち上げ、ドアノブに手をかける
ハナ「これから録音なの、集中力を邪魔しないでちょうだいね」
  そう言うと、ハナも練習室をあとにしてしまった

〇開けた交差点
  ──その日の夕方
  きりがとぼとぼと帰路についていると、道路の脇から聞き慣れた声が聞こえてきた

〇大きな公園のステージ
はるか「ありがとうございましたっ!」
  目線の先にいたのは、公園の小さなイベントに出演するHappy♡Paradeの4人だった
  曲が終わり、いそいそとステージを降りている姿が見えた
はるか「おつかれさま・・・ 投票、どう?」
さくら「ま、あんまりあがってないね〜」
はるか「ま、まあ、現実はそんなもんだよね・・・」
  携帯を囲み、みんなで落ち込んでいるようだ
ゆづき「Moonlight CupのB選考・・・あと一枠だよ」
ゆき「わかってるけど・・・ 人気投票はどうしても、資金力のあるチームが有利だし・・・」
  4人は眉間にしわを寄せ、うーんと唸った

〇SNSの画面
  CRESCENTと戦うことができるという「MoonlightCup」の出場権は残り二枠
  ファンからの人気投票で選ばれるB選考から一枠、11月下旬に控える「トパーズコンテスト」での優勝チームから一枠だ
  現時点でB選考は大手事務所所属のアイドルが多くを占めているが、
  これは事務所所属のアイドルがプロモーション費用や露出機会という面で圧倒的に有利だからである
  よほどのインパクトがなければ、アマチュアのチームがB選考に選ばれるのは難しい
  現状Happy♡ParadeがMoonlightCupへの出場権を得るためには、
  次回開催される「トパーズコンテスト」での優勝が必須となるといっても過言ではない

〇大きな公園のステージ
はるか「やっぱり、次の大会で絶対優勝しなきゃだね・・・」
  はるかが焦ったように声を出した
ゆき「練習を詰め込みましょう、gladiolusのように完ぺきなステージをやってみせるのよ」
さくら「gladiolus、ねぇ・・・」
  「gladiolus」というワードを聞いて、さくらはつまらなさそうに足をぶらぶらさせる
ゆづき「せっかく仲直りしたばかりだったのにね・・・」
  控えテントの中の空気はさらに落ち込んでいく
さくら「りょうちゃんも連絡付かないし、他のメンバーもりょうちゃんのこと話したがらない」
さくら「正直あのタイミングでCRESCENTを出すなんてさー」

〇開けた交差点
さくら「芸能人だか何だか知らないけど、正直”鬼畜”でしかないよねー」
きり「・・・」
???「耳を貸しちゃだめだよ」
  突然、誰かがきりの耳をふさいだ
きり「あ、チームメイトの・・・」
  あさかはきりの脇からひらりと飛び出して、諭すような口調でつづけた
あさか「一般人の意見に耳を傾けていたら、いつか潰れちゃうんだよ」
  あさかはきょとんとしているきりの顔を一瞥し、背を向けた
あさか「じゃあね、新入りさん」
  去っていくあさかの背中を見つめながら、きりは考えた
  Happy♡Paradeを見て、楽しいと思ったからアイドルに興味を持った
  あのライブを見て、もっと世界が広がると思ったから誘いを受けた
  Happy♡Paradeのように、チームメイトと支えあって楽しくやっていくと思っていたから契約書にサインした
  ──だが現状はどうだろう
  ビジネスフレンド以下のチームメイト、冷たい世間
  そして当のHappy♡Paradeでさえ、最近はまったく楽しそうにしていない
  きりはおもむろに空を見上げた

〇空
  どことなく、夕焼けが霞んでいるような気がした

次のエピソード:第28章 憂鬱な空気

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