Xヒーロー

語り部

第60話 纏わりつく言葉(脚本)

Xヒーロー

語り部

今すぐ読む

Xヒーロー
この作品をTapNovel形式で読もう!
この作品をTapNovel形式で読もう!

今すぐ読む

〇個別オフィス
  2021年 イリノイ州 ウィネベーゴ郡 ロックフォード 商業組合ビル 社長室
組合員「組合長、お客様をお連れしました」
ゲライント「はーい、入れてちょうだーい!」
  そうして3人の男が部屋に入る。組合員は一礼した後その場を立ち去ると、男達が話始める
謎の男「夜分遅くにすいませんねゲライントさん。大変申し上げにくいのですが···」
謎の男「ロックフォードに流す商品の原材料を値上げしました。何分うちも苦しいのでね」
謎の男「まぁこちらの条件を飲んでいただけれ特別原材料を値下げしても構いませんが···」
  カチッと鍵が閉まる音ともに2人の男は振り返る。重苦しい空気の中、ゲライントはパソコンの作業をしながら彼らに話始める
ゲライント「ボスの居場所は吐かないわよ?悪いけど私達フィンガーズは『尻軽』じゃないの、わかるわよね?」
ゲライント「諜報機関『WoOS』の工作員さん?」
  しかし男はゲライントの言葉にへらへらしながら、言葉を返す
謎の男「WoOS?なんですかそれ。我々はオハイオの農業組合の人間ですよ?」
ゲライント「しらばっくれるわけ?じゃあ証拠教えてあげましょうか?」
ゲライント「1つ目。数ヶ月前からロックフォードで観光客を狙った強盗や暴行が多発しているわ」
ゲライント「そいつらを捕まえて聞いてみると全員『頼まれてやった』と言ったわ。ヒスパニック系、アジア系、黒人系にね」
ゲライント「2つ目、私の仲間から送られた情報によるとWoOSという組織は『白人が世界で1番優れた人種』と思い込んでるとわかった」
ゲライント「3つ目。3人もいるのに交渉役は白人の貴方だけ、横2人のヒスパニック系の坊や達はさっきの反応を見るに練度が低いのがわかるわ」
ゲライント「4つ目。監視カメラを見ていたけど、貴方受付の子に『yellow monkey』って言ったわよね?」
ゲライント「白人がアジア系に対して言う差別用語の1つよ。清掃員のおばちゃんには紳士的に対応したのにね?やっぱり『白人』だったから?」
謎の男「言い分はわかりました。確かに私は白人至上主義者ですが、それがあなたの言っているWoOSに直接関係するとは限らないでしょう」
  ゲライントは男の様子を見て、作業の手を止めながら深く腰掛ける
ゲライント「··· ··· ···それもそうね。私どうかしてたみたいね」
謎の男「わかっていただけましたか、ゲライントさん。では話の続きですが···」
  しかしゲライントは男の話を遮るように言葉を放つ
ゲライント「そういえば私『ゲライント』って1度も名乗ってないのになんでわかったの?」
謎の男「それは貴方が来た時に名乗ったじゃないですか、冗談はやめてくださいよ!」
ゲライント「いえ?私組織の長である以上そういう所警戒するの。気づいてない?右足首見てご覧なさい?」
  男達が言われたように足首を見る。そこにあったのは小さな『弾痕』であった
ゲライント「初めての人は必ず私の異能で『幻覚を見せる』ようにしてるの。貴方達の幻覚で私が何を話したかは知らないけど」
ゲライント「随分都合よく話が通ったそうね。普通その時点で『おかしい』と思うべきなのよ?」
ゲライント「なのに貴方達は調子に乗って2回も3回も来ては『氷帝の居場所を教えろ』って迫ってきては原材料の値上げをして来たわね」
ゲライント「それもこれも貴方が『白人が最も優れている』という根拠もない過信で起こしたミスよ」
ゲライント「どうするの?私とダンスを踊るなら『高くつく』けど。やる?」
  すると男は銃をゲライントに向け、まくし立てるように言葉を放つ
謎の男「たかが変化武器如きが···調子に乗るな。ハエより価値のないクズ鉄の分際で白人である俺を侮辱する気か!?」
ゲライント「あら、ダンスをご所望なのね。いいわよ···ちゃんとリードしてくれるわよね?愛しの『ロメオ』」
謎の男「ジュリエットの墓に来たパリスのように『殺してやる』ぞ···変化武器!」
  男が引き金を引いた瞬間ゲライントは武器の姿に戻り、回避する
  地面に着地するその瞬間にゲライントは人の姿に変化し、男がいた方向に一発射撃し、排莢を行う
工作員「い、今の銃···『ウィンチェスターライフル』···?あれがあの変化武器の姿?」
  男は問答無用で机の下を発砲するが、既に後ろにいたゲライントに二人とも発砲される
謎の男「ウィンチェスターライフルはいちいち排莢しなきゃならん銃だ!撃った瞬間を狙え!」
  後ろを振り向き様3人はゲライントに向け集中砲火をするも、ゲライントは銃を投げ渡し
  瞬間的に人間から武器へ、そして武器から人間へ変化し男の首に脚を絡ませて、無理やり首を曲げさせ
  射撃の方向を変えさせる。そして入口付近の消化器を撃ち、当たりは煙に覆われた
工作員「な、なんなんだあいつ!『排莢するのが早すぎる』!呼吸をするかのように射撃と排莢を···!」
謎の男「黙れ!クソ···使えない奴らめ、やはりヒスパニック系じゃお荷物だったな···!」
  煙が晴れ彼女が姿を晒す。そこにいた彼女は『頭を下げていた』
  そして彼女は歌いながら『踊り始めた』。当然絶好のチャンスなので男達は銃を撃とうとする。しかし、銃弾はでず
  仕方ないので襲いかかろうとするも、なぜか男達もつられて踊り始めた
謎の男「クソッ···『幻覚』か!本物はどこに···!」
ゲライント「あぁ···カスヴァール卿、私の身は神に捧げるもの。私と貴方は決して結ばれてはいけないのです」
工作員「おぉ、我が愛しのジュリエット。私の愛は神をも許しえる穢れなきもの、さぁ!どうか私の手を取って···共に結ばれましょう!」
  ゲライントのセリフに男達は役に入り込んだかのように答える。男は不機嫌そうにしながらも、男達は弁明をする
工作員「く···口が勝手に···!これ本当に『幻覚』なんですか!?いくらなんでもおかしいですよ!」
謎の男「『マンデラ効果』か···どうやって突破できるんだ···?」
  マンデラ効果とは集団幻覚一種で『実際に起きていない事を集団が知覚し、それ体験した』と思い込むものである
  日本でも有名ゲームのリメイクや有名漫画の続編をSNSであたかも体験したように、発言されることもあり
  現代では一種の『ネットジョーク』にもなっているものである
ゲライント「あぁ···いけませんわカスヴァール卿。私には心に決めた人がいるのです。ですから貴方には貴方の幸せを掴んでいただいて?」
ゲライント「どうか貴方様の遥かなる旅路に神の祝福を···」
  ゲライントが離れると先程の男は突如複数の剣に貫かれ、その場で倒れる。もう1人の男も同様に剣に貫かれると
  ゲライントは白人の男の手を取り、その場で踊り始める
ゲライント「我が愛しのロメオ、私達の愛は永遠なのかしら?私凄く不安ですわ···」
謎の男「我が愛しのジュリエット、例え他の誰が遮ろうと私の恋は燃え上がる炎のように消えることはないでしょう」
謎の男「クソ···いつまでこんな茶番を続けさせる気だ!?」
ゲライント「しかし炎はいつか消えてしまいますわ···私は川のせせらぎのように清く穏やかな恋がしたいですわ···」
ゲライント「そう···こんな風にね」
  すると踊りながら男に肘打ちや膝蹴りを『流れるように』打ち込み、倒れそうになる度に手を掴み自身に引き寄せ
  攻撃を加え続けた。そしてトドメに男を蹴り飛ばした後、ゲライントにスポットライトが当たり
  ゲライントはポーズをとり、一言
ゲライント「悲哀の夢(ソロー・ザ・ドリーム)」
  どこからともなく聞こえる拍手の音と共に幻覚の景色は消える。白人の男が周りを見ると連れてきた2人の男は2人とも失神していた
ゲライント「さて···どうせ身分証もないでしょうし、望み通り『ボス』に合わせてあげるわ」
ゲライント「もちろん、貴方をガチガチに縛ってからね?」
  するとゲライントはロープで男を拘束し、机の『裏』にあったボタンを押す。
  ドアが開けられた後、組合員が入り中の様子を確認し、拘束された男を連れて行った
組合員「お見事です。あの男はシャルルさんの所へ送り、後ほど『尋問』を行います」
ゲライント「そうして頂戴?シャルちゃんには私から連絡しておくから」
ゲライント「ということで早く出ていってくれる?一応貴女達にも連絡しているところは見られたくないの」
組合員「これは···失礼致しました。壊れた備品は後でホワイトボードに書いておいてくださいね?」
ゲライント「わかってるわよー、ほら早く行った行った!」
  ゲライントはそう言って急いで組合員を外に出すと、その場に座り込み肩を抑える。
ゲライント「···弱い所なんて見せられないわ。私はパパに『期待』されてたんだもの、皆を心配させちゃダメ···」
ゲライント「皆が目の前の事に集中できるように私は動かなきゃ···止血止血···」
  ゲライントは机に入っている薬箱を取り出し、治療しながらシャルルに電話をする
ゲライント(明るく···明るくしなきゃ···シャルちゃんにも心配は掛けられないわ)
ゲライント「シャルちゃん?今そっちにWoOSの諜報員を送り付けたわ、悪いけど尋問お願い出来る?」
シャルル「承認」
ゲライント「じゃあお願いねー?」
  ゲライントが切ろうとしたその時、シャルルはゲライントに話しかける
シャルル「げら辛そ、大丈夫?」
ゲライント「私が?んもう、大丈夫よー?心配しないでも平気だったわよ?」
シャルル「ならいい。げらすぐ···無理する」
シャルル「『お父様』に、縛られな···いで。あの人は、もういない」
シャルル「私達、変化武器···は『前を、見るって···決めた』。だから、ゲラも···前だけ見···て」
ゲライント「···わかったわ、ありがとうね?シャルちゃん」
  ゲライントは電話を切り、ゆっくり椅子に腰掛ける。
  父と呼び慕った男を思い出しながら、彼女はそれでも『過去を見ていた』
  To Be Continued··· ··· ···

次のエピソード:第61話 侵食する影

成分キーワード

ページTOPへ