第59話 ロックフォードの真相(脚本)
〇ホテルの部屋
2021年 イリノイ州 ウィネベーゴ郡 ロックフォード モーテルの一室
斎王幽羅「ヒスパニック系のアメリカ人がチンピラを使って強盗をしてる···?何の為に?」
エンチャント魔導法士「わからん。それがロックフォードの財政難とどう繋がるかも不透明だ」
エンチャント魔導法士「現時点でフェードと見つけたのは『3箇所』、特に法則性も感じられんから目的も掴めん」
フェード「コンキスタドール建設と同じでロックフォードの行動を制限することが目的だったりしないか?」
エンチャント魔導法士「どうだろうな···仮にそうだとしたらコンキスタドール建設の時のように忍び込んでるヤツが大勢いるはずだ」
エンチャント魔導法士「街の感じや商業組合ビル内で見た感じ『アジア系』は多いようには見えんかった。もっと···他の目的かもしれん」
斎王幽羅「そこはもう少し探ってみよう。それとキングの錆なんだけど···ゲライントさんが『治し方』を見つけてたらしい」
斎王幽羅「ただ『魂の欠片』ってのが必要で、それが何なのかはわからないんだ。エンチャントさんなんか知ってたりする?」
エンチャント魔導法士「聞いたこともないな··· ··· ···鸞はどうだ?」
鸞「ギルドにあったかなり昔の資料に何か書いてあった記憶はあるが···悪い、思い出せん」
斎王幽羅「うーん···鸞も覚えてないかー···なんかヒントがあればいいんだけど」
キング「別に今すぐどうこうの話じゃねえんだ、ゆっくり探せばいい。それに俺はまだピンピンしてる」
キング「そんな辛気臭い顔しなくても俺は心配ねえからよ、気にすんな!」
皆はキングの言葉を受け『無理するなよ?』と声をかけた。しかし斎王だけ納得がいってない表情を見せ、キングを見つめていた
斎王幽羅(出会った頃より『錆は増えてる』。このまま行けばキングは人の体を保てなくなって、武器の姿のままに···)
斎王幽羅(それなのに···なんであんなに『笑ってられるんだ?』キングは···俺達と居れなくなるのが『怖くない』のか···?)
皆の気持ちを他所に、斎王は静かに焦り始めていた。
〇西洋の市街地
翌日 市街地
斎王達はそれぞれ2人1組となり街を歩き、少し歩いていると鸞が斎王に話しかけてきた
鸞「キングの事心配か?」
斎王幽羅「え?あ···もしかして顔に出てた···?」
鸞「いや?だがお前とは付き合いが長いんだ、多少の変化は気づく」
斎王幽羅「ふふっ···鸞には敵わないね」
斎王は少し悲しげに笑を浮かべながら、鸞に胸の内を吐き出す
斎王幽羅「キングはなんであんなにさっぱりしてるんだろ。心配させない為かもしれないけど、俺キングが『諦めてる』ようにも見えるんだ」
斎王幽羅「キングは昔から身を呈して仲間を守る所があるから···自己犠牲を『躊躇わない』んだ」
斎王幽羅「だから···ひょっとしたらキングがいなくなっちゃうんじゃないかって···!」
鸞は不安に押しつぶされそうになっている斎王を見て、静かに話す
鸞「気持ちは分かる、俺もお前程じゃないがキングとは付き合いが長いんだ」
鸞「だがな斎王、お父さんの遺言覚えてるか?」
鸞「今の状況を変えようと足掻いても状況は変わらない。焦る気持ちもわかるが···」
鸞「『できることを探して少しづつ進めていこう』」
斎王はそんな鸞の言葉に少し複雑な表情を見せながらも、しかし言っている事は正しいと思い
鸞に『そうだね···ありがとう』と返し、そのまま街を歩いていった
〇西洋の市街地
エンチャント、フェードサイド
エンチャント魔導法士「しかしまぁ流石はロックフォード、観光客が多いな。フェードはこういう旅先でお土産とか買うか?」
フェード「無論だ。立地の把握をするために見て歩いたりする、特に買うのは···お酒だな」
エンチャント魔導法士「ミンが好きだからか?」
フェード「あぁ。あまり飲みすぎて体を壊さないで欲しいが、私ができる恩返しはできるだけしたいって気持ちが強くてな」
エンチャント魔導法士「いい心がけだな。その感じだとあいつが実は『ぬいぐるみ好き』っての知らないな?」
フェード「なんだと?おい、詳しく聞かせろ」
エンチャント魔導法士「あいつあんなナリで『可愛いもの』が好きでな、最初は模様替えの為に買ったのが始まりらしいが」
エンチャント魔導法士「今じゃ部屋の四隅にぬいぐるみ置いてるからな。あ、ミンに会ってもワシから聞いたって言うなよ?」
フェード「わかった。しかしミンさんにそんな趣味が···知らなかった···」
エンチャント魔導法士「まぁあいつは話したがらないだろうな···腹も減ったし、そこで食べていくか?」
〇ファミリーレストランの店内
飲食店内
店員「Welcome, please take a seat over there.(いらっしゃいませ、あちらのお席へどうぞ)」
フェードとエンチャントは席に案内され、メニューを開く。しばらくしてフェードがメニューを閉じると
エンチャントが険しい表情をしていたので、フェードはエンチャントに訳を尋ねた
エンチャント魔導法士「いくらなんでも『高すぎる』。観光地だからなんて理由じゃ片付けられないぞ···」
フェード「そうなのか?相場とどれくらい違うんだ?」
エンチャント魔導法士「『1.5倍近く違う』。観光地だから高いのは仕方ないがそれにしても高すぎる」
フェード「ロックフォードの財政赤字の要因かもな、一旦店を出てみるか?」
エンチャント魔導法士「いや待て··· ··· ···フェード、ワシに話合わせてくれるか?」
するとエンチャントは店員を呼び、注文をすると店員に話し始める
エンチャント魔導法士「Things here are more expensive than Hawaii(ここの物はハワイより高いな)」
エンチャント魔導法士「I'm sure they use good ingredients?(きっといい食材を使ってるのだろう?)」
エンチャント魔導法士「I have a friend who is a police officer.(警察の知り合いがいるからな)」
エンチャント魔導法士「I'll bring you next time(今度連れてくるよ)」
店員「We look forward. What about you?(お待ちしてます。そちらの方は如何なさいますか?)」
フェード「No Thanks. I used it in Hawaii(遠慮します、ハワイで結構使っちゃったんで)」
店員「I got it. Take your time.(かしこまりました。ではごゆっくり)」
立ち去る店員の様子を見て、エンチャントはフェードに話始める
エンチャント魔導法士「あの様子だと警察の存在は恐れていない。それに···」
エンチャント魔導法士「ハワイより物価が高い事を『認知』している様子だ。恐らく店側は手一杯なんだろ」
フェード「なるほど···店側は仕方なく値上げはしているが、特段困ってはいないという事か」
エンチャント魔導法士「恐らくロックフォードに入る組合費を各店舗が削ってるのだろう。だからロックフォード商業組合は『赤字』なんだろ」
エンチャント魔導法士「フェード、ほかの店も回るぞ。ロックフォードは博物館や歴史資料館、庭園もあるんだ。各場所での変化も見てみる必要がある」
フェード「わかった。案内を頼んだぞエンチャント」
〇西洋の市街地
凪園、キングサイド
キング「んで?どこよ、その『少年』がいる場所ってのは」
凪園無頼「この辺だけどー···あ、おーい!今日も来たよー」
アレックス「あ、昨日のお兄さん!そちらの方は···?」
キング「おう、俺はキングってんだ。よろしくなボウズ」
凪園無頼「今日はうっさいのもいないし、お前の手伝いできるよー?」
アレックス「え?いや···!大丈夫です!お兄さん達を巻き込んじゃ···それにお兄さん達観光客ですよね?」
アレックス「少ない予定はちゃんと自分の為に使ってください!」
キング「俺らは今まさに自分の為に使ってんだ、黙って俺らに甘えとけ!」
アレックス「で、でも··· ··· ···」
凪園無頼「いいからやろーぜー。家事の手伝いでしょ?力仕事ならなんとかなっしー?」
キング「あ、でも俺ら英語話せねえぞ···どうする?」
凪園無頼「んー···あ、いい事思いついたー!」
凪園無頼「ダンボールとかに『家事手伝いします!』って書いて俺らが宣伝すりゃいいじゃん!」
キング「お、いいなそれ!じゃあダンボール取ってくるか!」
数分後
観光客「次どうしようかしら···ん?ねぇ、あれ見て···」
観光客「アレックス・ハウスワークサービスって書いてる···あそこの子供露店かしら?」
観光客が話していると、凪園が近づき笑顔で『少年の方へ指を指す』
観光客「行けってことかな?えー···どうしようー···お兄さんかっこいいし、行きたいけどなー」
観光客「ダメよ、ハウスワークって家事手伝いよ?私達観光なんだからあんまり長居できないし、所持金も限度があるんだから···」
凪園無頼「あれ?日本人?俺も一緒だよー!ねー、お願いだからあいつに金落としてくんね?」
観光客「え~···どうしようかな~···」
そう言って迷ってる女性に対し凪園は手を繋ぎ『お願い』と上目遣いで見つめた
観光客「顔が···顔が良すぎる···!ねぇ、見るだけ見てみようよ。詐欺かどうかはそこで判断すればいいじゃん!」
女性はしぶしぶそれに了承し、凪園と共にアレックスの元へ向かう。
キング「よう凪園、て···もう客引き成功したのかお前。すげぇな···」
観光客「え、ちょっと!こっちの人の方がイケメンじゃん!お兄さんお名前伺っても?」
キング「俺か?俺はキングってんだ、しかしネエちゃん見る目いいねー。やっぱり凪園より俺の方がイケメンって訳だな!」
凪園無頼「え~?それ有り得なくね~?」
観光客「ほんとおじ専だよねアンタって···あ、ごめんねアレックスくん。早速お手伝い頼める?」
アレックス「はい!あ、お兄さん達はここで店番してくれますか?お願いします」
凪園無頼「いいよー。いってらー」
To Be Continued··· ··· ···