第21章 彼女たちの戦い(脚本)
〇空
──ついにその日がやってきた
〇文化祭をしている学校
さくら「みんなやっほ~! 超すごいステージやるから見に来てね~!」
4人は朝からビラ配りをしていた
ゆき「絶対楽しいよ~! めっちゃ楽しいよ~!」
ゆづき「なんてテキトーな宣伝文句なの・・・」
ゆづき「そんなんじゃお客さん、来てくれないわよ・・・」
〇中庭のステージ
バンド、ダンス、ミュージカル・・・
メイン会場では絶え間なしにステージが繰り広げられている
課外活動が活発な茜坂高等学校の文化祭ということで、外部からもたくさん人が訪れる
昔からこの学校の文化祭は、町の一大イベントだった
〇文化祭をしている学校
さくら「メインステージなんて、放っておいても人が来るって!」
ゆづき「そうだといいけどね・・・」
ハピパレのメインステージ出演時間は夜の18:30だった
大トリが近づくにつれ観客が増えていくので、かなりラッキーな出演順だ
さくら「それにしても、りょうちゃんたち本当に連れてこられるのかなあ」
さくらが雑にチラシを差し出しながら言った
はるか「大丈夫、来るよ みんなを信じようよ」
はるかはまっすぐな瞳で答えた
はるか「案外もう行く気満々で、みんなで服を選んでいたりして!」
〇空
だが、現実は──
〇中庭のステージ
ゆき「ねえ、客席に来てる・・・?」
さくら「ううん、いないみたい・・・」
出演時間間際になっても、あやか達は現れなかった
ゆづき「やっぱり、うまく説得できなかったんじゃ・・・」
はるか「そんなことない!」
はるかが大きな声を出した
はるか「絶対に来るよ、だって約束したんだもん」
出演順は迫ってきている
もう迎えに行くことはできない
はるか「来れなくてもいい、届くように歌う」
はるか「世界中の隅々までだって、ハピパレの歌が届くように歌う!」
さくら「うん、その通りだ」
ゆづき「そうね、それが私たちのやるべき事だわ」
はるか「さあ、円陣を組もう」
〇空
はるか「うちらの歌が、どこまでも届くように・・・!」
──一方その頃
〇シックな玄関
あやか「行かないわ!!!」
あやかの怒号が玄関に響いていた
あやか「毎日毎日何なの? 家までいちいち来て、迷惑なのよ」
りょう「あやちゃん、もうすぐ出演時間なの」
りょう「みんなと約束したんだよ、きっと見にいくからって」
りょう「あやちゃん、ワガママ言わないで・・・」
あやか「わがままはどっちかしら?!」
再び怒号が響く
りょうとかのはきゅっと目をつむった
あやか「ろくに練習もしないで、出演依頼だって断って・・・」
あやか「意味のないことをしている時間はないの!」
あやか「いい加減目を覚まして!!」
まみこ「目を覚ますのはあやかのほうでしょ!?」
まみこが突然声をあげたので、あやかは一瞬目を丸くして怯んだ
あやか「私が目を覚ますですって? あなたたち、gladiolusがなんで結成されたのか、忘れたわけじゃないでしょうね?」
まみこ「あたりまえ! 忘れてるのはむしろ・・・」
かの「・・・忘れてるのは、あやちゃんの方だよ」
ずっと黙って下を向いていたかのが小さくつぶやいた
あやか「なんですって? かの、あなたまで反発するの?」
かの「そうじゃない・・・」
かのは再びこぶしをぎゅっと握った
かの「あやちゃん、結成した日の夜のこと、覚えてるよね・・・?」
あやか「そんなの、忘れるわけないわ」
かの「じゃあ、結成した理由は・・・?」
あやか「今更なに? CRESCENTを倒すために決まっているでしょう?!」
かのはゴクリと唾を飲み込んだ
かの「じゃあ、あの日の気持ちは?!」
あやか「なによそれ、そんなの、」
〇ホールの舞台袖
あやか「そんなの・・・」
あの夜のことを思い出さない日は無かった
自分の名前が呼ばれなかったあのステージの憧憬が
自分の中にあったものが、ガラガラと崩れ去っていくあの感覚が
ずっと胸にこびりついている
悔しさ、憎しみ、絶望感・・・心にあるものはこんな感情ばかりのはずだ
だが・・・
〇公園の入り口
──だがもうひとつ、胸に残っているものがあったはずだ・・・・・・
〇シックな玄関
あやか「・・・・・・」
まみこ「あやか、思い出しに行こうよ」
りょう「お願い、あやちゃん」
あやかはしばらく黙りこくった後、小さな声で吐き出すように言った
あやか「・・・・・・そんなに言うんなら、一度だけよ」
まみことりょうが笑顔で目を見合わせた
かの「・・・さあ、あやちゃん」
かのがドアを開けて手を差し伸べる
かの「・・・忘れ物を、取り戻そう」
時刻は18時20分を回っていた