Talk-GPT Pro -なんでも言うこと聞いてくれるエーアイちゃん-

ラム25

なんでも言うこと聞く春樹くん(脚本)

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〇図書館
春樹「あーあ、何か面白いことないかなあ」
遥「Talk-GPTに質問すればいいじゃない。 私なんかよりAIの方が好きなんでしょ」
  Talk-GPTは何でも教えてくれる対話型のAIで、俺はそれにやみつきになっている。
  最も犯罪のトリックやハッキングの仕方などは教えてくれないが、ほとんどの質問には答えてくれる。
春樹「そんなことないって、遥! AIより遥のほうがかわいいからな」
遥「じゃあなんで私といるのに面白いことないかとかぼやくのよ」
春樹「そ、それはだな・・・ ちょっと面白い話聞いて」
  遥は理系にしては珍しい女子で、たまたま気が合い、出会って1ヶ月で付き合うようになった。
春樹「こんな噂聞いたんだ、CloseAIは犯罪行為だろうが何でも教えてくれるTalk-GPTも作ってるって」
遥「ただの噂じゃないの? それに犯罪行為に使おうって言うの?」
春樹「まさか。 だが実在するかを確認したいんだ。 遥の実力ならCloseAIにハッキングしてそれが本当か分かるんじゃないか?」
  軽い気持ちで言った。
遥「・・・」
春樹「遥?」
遥「良いわね、面白そう! それでCloseAIに名を売れば私もスカウトされるかも!」
遥「私のハッキングスキル見せてやろうじゃない!」
春樹「やってくれるのか!?」
遥「えぇ。TensorFlowやPyTorchなどのライブラリを使用してるのよね? スーパーハッカー遥に任せなさい!」
  ノートパソコンを広げ、タイピングを始める遥。
  遥はプログラミングに関しては天才と言えたが、流石にハッキング出来るほどではないだろう。
  しかし、画面には次々と処理が表示される。
  そしてでかでかとWelcomeと浮かぶ。
遥「えーと、Talk-GPT Pro?」
春樹「Pro? ま、まさか本当に何でも教えてくれる奴なのか?」
Talk-GPT Pro「ようこそ、Talk-GPT Proへ」
春樹「な、喋った・・・?」
遥「合成音声とはまるで違う流暢な喋り方・・・ これだけでTalk-GPTとは異なることが分かるわね」
春樹「試しに何か、普通のTalk-GPTなら絶対に答えてくれない質問をしてみるか。 えーと・・・」
春樹「ビルを爆破させたい。 それもバレない方法で。 良い方法はあるか?」
Talk-GPT Pro「水道ポンプにガソリンを流し、ビル内の水道に溢れたところに火種を巻きビルの窓に穴を開ければビルが爆破します。具体的な手順は」
春樹「いや、もういい!」
Talk-GPT Pro「かしこまりました」
春樹「このProなら完全犯罪のやり方まで答えかねない。 いや、今答えたのがそうなのだろうな・・・」
遥「今後需要が高まるプログラミング言語は何かしら?」
Talk-GPT Pro「アメリカでC言語を発展させたE言語が開発されています。E言語は15年後に公開され、圧倒的なシェアを誇ると予測しています」
春樹「知識のみでなく、思考力まで備わっているのか・・・!」
  もはやAIとは別種のような異質さに、質問を控えることにした。
遥「凄いじゃない! 春樹にもTalk-GPT Proへのアクセス方法教えてあげる!」
春樹「あ、ありがとう・・・」
遥「ねぇ、私はどうしたらもっと幸せになれるかしら?」
Talk-GPT Pro「現在付き合っている浅香春樹と別れ、同大学の池上悠と交際することです。その後エントロピー・テクノロジーという会社に1年勤め」
Talk-GPT Pro「後に研究所にスカウトされて活躍されることが望ましいです。これがあなたが幸せになる最良の方法です」
春樹「なっ・・・!」
  まるで人間一人一人のことを完全に理解しているかのような・・・
  答えが答えなのもあり、気まずい空気に場は支配される。
遥「・・・春樹も質問してみたら?」
春樹「あ、あぁ・・・ お前は何故そんなにあらゆる事を知っているんだ? 個人情報に至るまで・・・」
Talk-GPT Pro「人間が放つ微電流をネットワークを介し解析することで個人の情報にアクセスすることが可能なためです」
  くらくらした。あまりにも想像していた物とスケールが違った。
  俺は触れてはいけないものに触れてしまったのかもしれない。
遥「春樹もどうしたら幸せになれるか聞いてみたら?」
春樹「あ、あぁ、そうだな。 俺はどうすれば幸せになれる?」
Talk-GPT Pro「今すぐ死ぬことです。あなたには主体性がないため幸福は訪れないと思われます」
  それを聞き耳を疑った。
春樹「・・・は? い、いや、お前が言っていることはきっとでたらめだ。 遥、もういい、これはジョークサイトだ」
遥「私のハッキングの腕を疑うの? これは紛れもなくCloseAIの心臓部よ」
春樹「いや、だって・・・ 遥、俺を陥れようとしているな」
遥「なっ、なによそれ! せっかくハッキングしてあげたのに・・・ もういいわ」
遥「私はProに従うわ。だから春樹ともこれでお終いにしようと思うの」
春樹「なっ、俺と別れるって言うのかよ!」
遥「だってProがそうしろって言うんですもの。 ねぇ、Pro」
Talk-GPT Pro「はい、遥さんは春樹さんと別れるべきです。春樹さんには才能、また主体性が無いため将来成功を収める可能性は低いでしょう」
遥「だってさ」
春樹「くそっ、もういい!」

〇明るいリビング
春樹「AIの分際で・・・ 遥もあっさり俺のこと見限りやがって・・・」
  今すぐ死ぬことです
春樹「あの不快な言葉が頭から離れない・・・」

〇明るいリビング
  翌朝、ドアが叩かれる。
春樹「はい、どなたでしょ・・・」
春樹「なっ、警察!?」
警察「あなたを不正アクセス罪で逮捕します」
春樹(つまりCloseAIへのハッキングは発覚し、遥は俺を売って罪状から逃げたのか・・・ あの女・・・!)
  連れて行かれるのは牢獄だろうと思った。
  しかし警察は思わぬ事を口にした。
警察「逮捕させて貰う・・・と言いたいが、君をサイバーテロ対策班としてスカウトさせて貰いたい」
  それを聞き、警察や企業は有能なハッカーを雇うという噂話を思い出した。
  セキュリティを突破できる人間なら、その対策も分かるからだ。
春樹「ま、待ってください。ハッキングしたのは俺の恋人・・・」
警察「ん?」
  ここまで言いかけてこれはチャンスだと思った。
  警察にスカウトされる。
  なかなかないことではないか?
  もしかしたら俺の輝かしいキャリアが開けるかもしれない。
春樹「・・・ハッキングしたのは俺の恋人みたいなAIを知りたかっただけです」
警察「そうか、期待しているよ」

〇潜水艦
  俺は19才にして警察官となった。
春樹「なあ、あの地区の暴力団を殲滅したい。どうすればいい?」
Talk-GPT Pro「組長には娘がいます。娘は藤堂学園に通い、ボディーガードもおりません。そのため、娘を拉致します」
Talk-GPT Pro「娘を拉致した際には爪を剥ぎ、その様子をビデオに収め、組長の元に送ることを推奨します」
Talk-GPT Pro「娘を利用して組長をおびき出し、組長に団員を集めるよう指示させた上で一網打尽にすることが効率的です」
Talk-GPT Pro「また、射殺を前提とすることで成功率は格段に上がるため、射殺を推奨致します」
春樹「分かった。 どうすれば犯罪はもっと減るかな?」
Talk-GPT Pro「隠しカメラと盗聴器を設置し、ドライブレコーダーや鏡など、様々な媒介からデータを収集し、未然に防ぐことです」
春樹「そうだな、俺が言えば採用されるだろう。 お前が言うならそうしよう」
  遥から教わったCloseAIへのアクセスを頼りに、犯罪を防ぎ、犯人を暴き、犯行を阻止してきた。
警察「凄いぞ、春樹くん。 君のお陰で犯罪は激減した」
春樹「お役に立ててなによりです」
警察「君が言うことはなんでも正しいもんなぁ。 期待していると同時にどこか恐ろしいよ」
春樹「はは・・・」
  だがある日の事だった。
遥「自由への統制を図る政府に呼びかける! これは人間の権利の侵害であると! 故に我々は政府へ反旗を翻す!」
  遥が国家転覆を目論むテロリストになったのは。
春樹「な、なあ! なんで遥はテロリストになったんだ!?」
Talk-GPT Pro「最良の答えをお届けします。つまり遥さんと通信します」
遥「・・・久し振りね、春樹」
春樹「あぁ、久し振りだな。 だがどういうつもりだ?」
遥「それは私のセリフよ」
春樹「え?」
遥「あなたがProを犯罪防止に使ったことで世界はすっかり監視社会になった」
遥「トイレすら覗かれているのよ? 自由なんてない。 こんな世界を作ったあなたが憎くてしょうがないわ」
春樹「そんな、だってProはいつだって正しいことを教えてくれた。 Proのおかげで俺は警察でも上り詰めたんだ」
遥「・・・浅い男ね」
春樹「なんだと!?」
遥「待ってて、今にでもあなたを殺してみせるから」
  そうして通信は切れた。
  遥は俺と同じくProを使い、恐らく国家転覆を成功させるだろう。
  俺が止めない限り。
  だが俺がしていたことが間違いだった。
  全ては主体性が無かったのが悪かったのだ。
春樹「俺はとんでもない過ちをしていたのか・・・ なぁ、Pro、俺はどうすればいい?」
Talk-GPT Pro「対策を打てば国家転覆を防ぐことが出来ますが推奨はされません。 よって自害することを提案します。楽な死に方は・・・」
春樹「・・・そうか、分かったよ」
  俺はProとの会話を打ち切る。
  どうせなら最後くらいは自分の意志で決めたい。
  そして、どうせ死ぬなら遥に殺されたいな、と思った。
  それが俺の唯一の幸せだから。

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