第53話 ティソーナの輝き(脚本)
〇ダブルベッドの部屋
2021年 イリノイ州 デュページ郡 ネイパービル 氷壁に覆われた街 ホテルの一室
鸞「で、しばらくの間協力してくれると···随分と急だな···」
エル・シッド「よろしくなネエちゃん!しっかしあれだな···随分カワイイの連れてるなルーキー」
斎王幽羅「見た目は可愛くても強さは充分あるし、機転も利くんだ。二人とも大切な『仲間』だよ」
エル・シッド「ふーん···じゃああれか、ルーキーは『手出してない』のか。もったいねぇなぁ···」
斎王幽羅「えぇ···?!いや、だってそういうのはほら···もっとお互いを知って···」
エル・シッド「かァー···なんでアジア系ってこんな『奥手』なんだよ、そのうちどこの誰か知らんヤツに取られるぞ?」
鸞「···話を戻してもいいか?『二人とも』」
斎王幽羅「ご、ごめん!続けて、鸞」
鸞「ひとまず現状を纏めると··· ··· ···」
鸞「コンキスタドール建設が管理している各現場で工具類の『盗難』が続出。数週間前から起こってる事がこっちで調べてわかった」
鸞「そして斎王が感じた違和感である『アジア系の多さ』···エンチャントの言う通り、長いことその国に居ないと」
鸞「周辺国の人種が何となく『区別』できないのは確かだ。斎王では区別がつかなくて当然だ」
鸞「そうなると殺し屋として各国を転々としていたフェードより、俺と凪園の方が区別は付きやすいという事になる」
斎王幽羅「そうだね、エル・シッドさん明日現場ってどこまで再開できそうかわかる?」
エル・シッド「報告通りなら明日再開できそうなのは『電気工事系』だ。建物内は全業者の道具揃ってからって事にしてるからな」
斎王幽羅「となると···もう少し居た方がいいのかも。全業者が集まるまでは様子見ていたいし」
鸞「ならその間、俺は変化の術で現場内を監視しておく。悪いがエル・シッド、明日から俺が『辞めた』って事にしておいてくれ」
エル・シッド「おう、問題ねぇ。じゃあ···ひとまず寝るか!男ども、恋バナしようぜ恋バナ!」
鸞「何普通に一緒に寝ようとしてる、お前は俺達と一緒だエル・シッド」
エル・シッド「えぇー···いいじゃねぇかよ別にー···まぁいい、じゃあな!nos vemos mañana!(また明日!)」
〇工事現場
翌日 建設現場構内
その日はやけに現場内が騒がしかった。工事の音より人の声が大きかったのである
斎王達は人混みを避け進む。その先にあったのは···
エル・シッド「ホセ··· ··· ···おい!誰か説明しろ、なんで『ホセが殺されてる』のかを!」
斎王幽羅「む、惨い···鼻と両足が『切断』されてる···しかも体に『文字』が刻まれてる···」
フェード「五刑(中国の刑罰)···それを3つも行っている···」
フェード「墨(いれずみ・体に文字を刻む)、劓(ぎ・鼻削ぎ)、剕(ひ・足切り)···こいつが大量虐殺者でもなきゃこうはならんが」
エル・シッド「シャビエル···ホセの家族には伝えたか?」
現場監督「いえ、まだ···伝えておきますか?」
エル・シッド「伝えとけ。嫁さんには酷だが···知っておかなきゃならん」
斎王幽羅「フェード、刻まれてる文字読める···?漢字っぽいけど俺読めないからさ···」
フェード「不···要再··· ··· ···撬···动···不要再撬动か、これ以上詮索するなって意味だ」
斎王幽羅「敵は俺達が探ってるのを···『知っている』···?一体どうやって···」
エル・シッド「おい!職長会議するから職長は会議室に来い!」
エル・シッド「お前らは休憩室にいろ、職長会議が終わったらすぐ行く」
そして一部の人間とエル・シッドだけが会議室に向かい、斎王達は指示通り休憩室へ向かった
〇店の休憩室
休憩室
斎王幽羅「まさか死人が出るなんて··· ··· ···それに『これ以上詮索するな』の文字···皆どう思う?」
フェード「五刑による拷問、刃物で体に中国語を刻み、アジア系の多い環境···紅色派が関与してて間違いないだろう」
エンチャント魔導法士「問題は『理由』だな。こんな事をしてもコンキスタドール建設をずっと拘束できる訳じゃない」
エンチャント魔導法士「ワシは何か···『別の目的があると考える』」
斎王幽羅「別の目的···?どんな···?」
エンチャント魔導法士「例えばだが···紅色派がこの街に『一斉攻撃』を仕掛けるというのはどうだ?もっと他に理由があるかもしれんが···」
斎王幽羅「全然ありえ··· ··· ···あれ?でも確か紅色派って『北西部』に拠点が多いんじゃなかったっけ?」
斎王幽羅「イリノイ州全体が革命軍名残り雪の拠点ってのは知ってるだろうけど、だったらさ···」
斎王幽羅「普通『西部』から攻撃しない···?ここってイリノイ州の『東部』だよね?わざわざまわり道してまで攻撃するかな···?」
フェード「もしかして目的は攻撃ではなく···『拘束』?では紅色派全体が拘束にまわるとして、一体誰が『攻撃』をしかけるんだ···?」
そんな中、一匹の雀が休憩室に入り込み、雀は鸞へ姿を変える
鸞「戻ったぞ、色々気になってるだろうがまず···俺から報告させてもらう」
鸞「結論から言うが、外注業者を見た感じ『中国人』っぽいなと思った人間が『大勢』いる」
鸞「そして今朝見つかった死体、カラス達から情報を集めて分かったことだが···」
鸞「『中国語』を話していた奴らが居たそうだ。恐らく紅色派だろう」
フェード「決まりだな。後は目的だが···」
フェードが話そうとした瞬間、会議室の方で大きな物音が聞こえた。皆は不審に思い、鸞が先行し中の様子を覗いてみると···
〇アジトの一室
仮設現場事務所
そこには銃口を突きつけられた作業員と、ライトマシンガンを持って硬直しているエル・シッドがいた
紅色派の中国人「大人しくしてもらうぞエル・シッド!今コンキスタドール建設に動かれたら『迷惑』なんでな···!」
紅色派の中国人「さぁまずはそのバカでかい銃を捨ててもらおうか!」
現場監督「親方!俺らのことは気にせず、派手にブッ放してください!」
エル・シッド「うるせぇ!てめぇらにも家族がいるだろうが、早々に腹括ってんじゃねぇよ!」
エル・シッド「絶対に守る···アタシはエル・シッド。héroe del campo de batalla(戦場の勇者)、エル・シッドだ」
エル・シッド「一か八か···やってやる···!」
そう言うとエル・シッドは持ってるライトマシンガンを天高く掲げ、ライトマシンガンが光始めた
エル・シッド「見せてやる···『ティソーナの輝き』を!」
To Be Continued··· ··· ···