片耳うさぎ

カジキ

エピソード2 「片思い」(脚本)

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〇病室のベッド
佐藤さん 「ウッ──!!」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「傷が日に日に広がってきているのよ・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・傷の状態を確認しても構いませんか?」
佐藤さん 「どうぞ・・・」

〇病室のベッド
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「かなりまずい状態ですね・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「腕が壊死しかけている状態を見ると、霊の方に体の主導権が渡りかけています」
佐藤さん 「そんな・・・」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「いい加減、早く治してくださいよ!」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「この二週間、何もやってないじゃないですか」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「あなたは・・・人の命をなんだと・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「大変、申し訳ありません」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ただ・・・二週間を無駄に費やしていた訳ではありません」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「生き霊を”祓う” ために、その霊からの信用を得る事が必要なんです」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ですから、二週間掛けてその霊からの信用を」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「そんなのやっているか、どうかなんて私たちが確認できないじゃないですか・・・」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「私たちは霊が見えないんですから」

〇黒
  霊が見えるどうかは遺伝子で決まってしまう
  しかも、霊が見える人もかなり少ない
  だから俺は、体質的に霊媒師に成らざるおえなかった
  しかし、俺は霊媒師の中で特に祓うのに時間が掛かる
  はっきり言って才能がないし、家族も俺に過度な霊媒師として期待をしている訳でもない
  それでも俺は、生き霊で苦しんでいる人を見て見ぬふりをしたくなかった・・・
  だから、自分の差異を活かし霊媒師になった

〇病室のベッド
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──霊の正体と場所は、把握しました」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「後、数日あれば必ず・・・」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「あと数日って、佐藤がどんな状況か分かっていますよね」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「傷が痛くてまともに眠れていなくて、苦しんでいるのに、まだ時間をかけるんですか!」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「────」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「ねぇ!何とか言いなさいよ、あんたは──」
佐藤さん 「やめて!優子ちゃん!」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「──!!」
佐藤さん 「玲司さんは、いち早く私の怪我の現状を把握し、霊を祓うと言ってくれたんです」
佐藤さん 「確かに、私たちは霊を見ることができませんから、嘘かどうかも分かりません」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「だったら・・・」
佐藤さん 「だとしたら、金を取らない玲司さんの考えが分からないんです」
佐藤さん 「だから、玲司さんはただ純粋に助けたいと 思う優しさを、私は信じたい!!」
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「うぅ・・・」
佐藤さん 「私は、霊媒師ではないので、大変さを理解しきれない部分もあります」
佐藤さん 「ですが、何かしら理由がある事は分かります」
佐藤さん 「なので、私の生き霊を祓ってあげてください、お願いします」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「はい、必ず祓う事を約束します!!」
  ガラッ──
羽瀬川 優子 (はせがわ ゆうこ)「アイツの”騙す目”が気に入らないのよ」
  ──ガシャン
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・」

〇黒
  何故、俺が霊を”殺す”と言っていたか分かるか?
  俺にとって、霊も” 人”だからだ
  人の定義なんて曖昧なものだ
  だが、自我があって、考えれて、話すことができるなら、人だと勝手に思っている
  だから、俺にとって生き霊は、人そのもの
  おまけに生き霊は、だいたい子供の事が多いんだよ・・・
  世界をろくに見れてない子供を祓って──
  なんで俺みたいな奴が、って思った事もある
  しかも、生き霊たちって、祓っている時すごく苦しそうなんだよ

〇荒れた公園
生き霊の女の子「──イヤッだぁあ・・・イヤッだぁぁああ」

〇黒
  泣きながら・・・

〇教室
生き霊の少年「──お前みたい奴に消されてたまるか!!」

〇黒
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「抵抗し・・・」

〇菜の花畑
生き霊の少女「・・・あなたを・・・恨みます」

〇黒
  最後に──恨んで消えていく
  生き霊の死にたくないという気持ちも分かるし、祓うべきだと思う奴の気持ちも分かる
  そして俺は、今生きている人たちの意見を尊重した・・・
  ──だから
  ──だから、せめて”祓う”みたいに濁した言い方ではなく”殺す”と言わせて欲しい
  俺たちが生きるための”殺し”をする
  それが、俺の霊媒師としての汚れ仕事だから

〇病院の廊下
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「さあ〜てと、そろそろ決着付けなきゃまずいよな」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「佐藤さんの体も限界が迫ってるし・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「帰って準備するか───」

〇田舎の病院の病室
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「リリナちゃーん❤️ ちょっと、失礼するぞ」
リリナ「玲司さん、こんにちは」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「今日は、リリナちゃんのためにちょっとした料理作ってみたんだけど・・・」
リリナ「これは?」

〇ナイトクラブ
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「みなさん、こんにちは」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「『今から料理してください』のお時間です」
  リリナ
  何か始まったんですが・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──今回のゲストは」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「商店街で、偶然見かけた・・・」
  荒川 玲司 (あらかわ れいじ)
  「俺の母ぁあちゃーーーん!! 」
母ちゃん「買い物中に連れて来られました(怒)」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「今のお気持ちは?」
母ちゃん「早く終わらせなさい」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ゲストのやる気は、十分過ぎるようです」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そして、そのやる気を注がれる料理は──」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「『塩りんご』」
母ちゃん「うん?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「必要なものは、リンゴ・水・塩”だけ”」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「切ったリンゴを食塩水に10分付けて完成」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「こうする事によって、変色を抑える事ができるですよ(お得情報)」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「では、みなさん また来週〜〜!!」
母ちゃん「これ、私 必要あった?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ないw」

〇動物
  荒川 玲司 (あらかわ れいじ)
  ギャァぁああああああああああ!!
  母ちゃん
  あんたって子はぁああ!!!
司会者「番組の途中ですが、突如 親子喧嘩が勃発してしまいました」
司会者「番組途中に喧嘩をするのは、いかがなものかと思い──」
司会者「たった今、スタッフと審議した結果、 番組終了という話でまとまりました」
司会者「ですので、今回でこの放送を終了とします」
司会者「では、みなさま さよなら〜」

〇田舎の病院の病室
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「・・・という事で、はい 塩りんご」
リリナ「長くないですか、この前振り」
リリナ「塩りんごで、よくここまで話を作れますよね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「はあ? 事実だし」
リリナ「だとしたら、放送事故、起こしたことも 事実になりますけど・・・」
リリナ「まったく、玲司さんは元気─ >シャク」
リリナ「──ウッ!?」
  ──バタン

〇田舎の病院の病室
  シューーッッツ
  リリナ
  なんですか・・・これ・・・
  リリナ
  体が・・・消え・・・かかっ・・・
  リリナ
  レイ・・・ジ・・さん・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ごめんね、リリナちゃん・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「りんごに、少し細工さしてもらったよ」
  リリナ
  ──サイ・・ク・?
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「あぁ・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「使った塩が”霊を殺すための塩” で・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──君は、生き霊なんだ」
  リリナ
  ──でも・・私・・・死んでな・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「生き霊は、人の想像から生まれた霊。だから死んでから成るものじゃないんだ・・・」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「リリナちゃんは、佐藤さんから生まれた、 生き霊・・・」
  リリナ
  ────!?
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「そして──リリナちゃんは佐藤さんを殺しかねないんだよ」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──例え、リリナちゃんに意思がなかったとしても」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「だから、人、嫌・・・俺の都合で死んでくれ」
  リリナ
  ・・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「これを使えば、リリナちゃんは完全に 消滅する」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「だから、おとなしく──」
  リリナ
  ────れて
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──なに?」

〇田舎の病院の病室
リリナ「離れてください!!」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──!?」
  ────バアッ─ン
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「────クッッハァッ!!」
  なんだ・・・今の・・・
  生き霊に抵抗される事は何度もあった・・・
  だが、あの塩りんご食べて、あそこまでの
  力を出せるなんて──
  クソッ!さっきの衝撃で注射器も壊れちまった・・・
  あと、ポケットに入った・・・
  ──”霊を殺す塩” 入りの水 か・・・
  コイツを一滴でも・・・一滴でもかかれば

〇荒れた公園
生き霊の女の子「キャァァァアアア───────」

〇教室
生き霊の少年「痛い・・・痛い・・・」

〇菜の花畑
生き霊の少女「──やめて・・・」

〇田舎の病院の病室
  クッッ!!────
  ──やるしか・・・ない、よな・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「いや〜、嘘 嘘、冗談だってば・・・」
  一瞬の・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ごめんね、悪ふざけが過ぎちゃったよね」
  一瞬の、隙さえあれば・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「リリナちゃんが霊な訳ないじゃん」
リリナ「──!!」
  よしっ!今だ・・・
リリナ「”嘘”ですよね」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──!?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「ど、どうしてだい・・・」
リリナ「だって、あんな爆発ありえな──」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──内ポケットに入れた、ドッキリ用の クラッカーが爆発したd─」
リリナ「嘘を付かないでください」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──!!」
リリナ「玲司さん、笑っている時に嘘をつきますから」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「──何言ってんの?リリナちゃん 俺は、笑顔で──」
リリナ「泣いてるじゃないですか・・・」
  ぽた・・・
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「あ・・あれ・・・?」
荒川 玲司 (あらかわ れいじ)「どうして、俺は・・・」
  今・・・泣いているんだ・・・

次のエピソード:エピソード3 「片耳」

コメント

  • ほのぼのしたシーンから始まり、それが生き霊を祓うというシリアス展開に変換していく落差がすごいですね。感動しました‼
    とても上手いなと思いました。笑いながらの涙も落差があり、主人公の気持ちがジーンと伝わってとても良かったです😮

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