〇渋谷のスクランブル交差点
蒼汰「東京すげ～～!!!!」
蒼汰「なんだこのでっかいビルは!?アニメでしか見た事ないぞ～!?」
　　新潟県から上京して約１週間。
　　今日は高校の入学式。
　　学校へ行くために俺は渋谷のスクランブル交差点に立っている。
　　それにしても・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
蒼汰（マジですげーなおい）
　　田舎者の俺には真新しい光景だ。
　　雲にも届きそうなビルが立ち並び、そこら中に人、人、人。
　　スーツを着ている人や、学生服を着ている人。はたまた宇宙人みたいな電波な服装をしている人まで様々だ。
蒼汰（町だけじゃなくて、人も凄いな......）
蒼汰（服装だけじゃなくて、量も......）
　　人ごみで酔いそうになる。
　　引っ越してから、入学のどうこうやら初めての一人暮らしでドタバタし過ぎてまともに東京観光もしていなかった俺だ。
　　テレビやアニメでしか見た事ない光景におれは終始口をあんぐり開けているのだった。
蒼汰（それにしても信号が長い......）
蒼汰（そもそも俺の地元に信号と言う概念があまりない。町にだって２、３個ある程度だ。 まぁ田舎すぎただけかもしれないが....）
　　高校への地図をスマホで見ながら、ビルやら人ごみを交互に見ている。
　　すると、反対側の信号にとある１人の少女が見えた。
　　俺が入学する高校と同じ制服に身を包み、カバンを両手に持って可憐な立ち姿で信号待ちをしている。
蒼汰（か、かわいい）
蒼汰（東京ってこんな可愛い子が学校にいるのか!?まるでモデルみたいじゃん！）
　　目の前の華奢な彼女に、俺は見惚れる。
　　そうしていると....
蒼汰「あ、青になった」
　　やっとの事で、信号が青になった。
蒼汰（あの子、こっちに向かっているけど、学校逆なのに大丈夫なのかな？）
蒼汰（俺が見ている地図アプリも合ってるし、他のルートでもあるのかな？）
　　と、思いつつ交差点を渡り始める。

〇渋谷の雑踏
　　歩いていると、こちらに向かってくる彼女が目に入る。
蒼汰（やっぱ可愛い....）
　　近づく彼女を、スマホを見るふりをしながらチラチラと見る。
　　そうしていると....
　　彼女と目が合った。
　　俺はどぎまぎと慌てつつ、反射的にぺこりと頭を下げる。
　　すると彼女も、同じ制服だからかニコリと笑顔で会釈を返してくれた。
蒼汰「んっ....」
　　彼女の可愛い笑顔に、俺が思わず声が出る。
蒼汰（間近で見ると、さらに可愛さが増してるよ......笑顔も最高に可愛かったし...）
蒼汰（ちょっと声でも掛けてみようかな）
　　そんな事を考え、彼女に話かけようとすると、
蒼汰「あ、あれ？」
　　彼女の姿はなかった。
蒼汰（せっかく可愛い子と話せると思ったのに、絶好な機会を逃してしまった...）
蒼汰（学校であんな美少女と話したって自慢できるし、ついでに地元の友達に自慢しようと思ったのに...）
蒼汰「はぁ...」
蒼汰（学校で話せたらいいな...）
　　肩を竦めながら、俺は入学式に遅れないよう高校へと足を進めた。

〇学校の校舎
蒼汰「なんとか間に合ったぁ～！」
　　入学式20分前、やっとの事で俺は高校の前にたどり着いた。
　　ここに来るまで、道は間違えるし、スーツの怖い人に話掛けられるし....さんざんだった....
蒼汰（でも、なんとかだどりつけてよかった....）
　　正門には入学式と大きく書かれた看板があり、あたりには綺麗に桜が咲いている。
蒼汰（ここから俺の高校生活が始まる！）
　　大きく深呼吸をして門をくぐろうとすると、
「あ、あのっ！」
　　後ろから声を掛けられた。
蒼汰「は、はい。僕になにか用ですか・・・・・・・・・って!!」
　　まさかの人物に、俺は度肝を抜いた。
梓「さっき、交差点ですれ違いましたよね！」
　　先程の彼女が立っていた。
蒼汰「先程はどうもです。素っ気ない挨拶しか出来なくてすみません」
　　あははと軽く首を下げながら笑うと、
梓「わ、私こそ！軽い挨拶です、すみません」
　　あわあわとしながらそう言った。
蒼汰「その制服でここに居るって事は、同じ一年って事ですか？」
梓「は、はい！私、岡野梓って言います！よろしくね？えっと....」
蒼汰「蒼汰。函南蒼汰だよ。よろしくね岡野さん」
梓「梓でいいよ」
蒼汰「なら、梓。改めてよろしくね」
梓「こちらこそよろしくね！蒼汰くん！」
　　彼女は弾けるような笑顔をした。
蒼汰「なら、ついでに一緒に教室まで行く？」
　　照れくさそうにそう言うと、
梓「うん！行く！」
　　梓は俺の手を引っ張り門をくぐった。
　　この時、俺は想像もしていなかった....
　　ここから、彼女。岡野梓とのラブコメが始まる事を....