Vermilion(脚本)
〇黒
この物語はフィクションです
実在の人物・団体・出来事は一切関係ありません
〇洋館の玄関ホール
Vermilion
〇洋館の廊下
○○県 ○○市 ✕✕
失踪した沙耶を探しに俺は
廃邸となったここに訪れた
・・・あたりは震えている
拓真「・・・沙耶」
拓真「君がつぶやいたことばをつい反芻する」
沙耶(君が濁したものを、できる限り 私が澄み切ったものへ・・・)
拓真「俺は沙耶の願うように、 痛みを噛み締めて味わおうと ここまで来た・・・」
拓真「手がかりはこれだけ・・・」
拓真「(失踪以来開いてもいない)」
扉開け、まだ見ぬ先へ向かう
拓真「まず先を、急ごう・・・・・・」
〇公園通り
3ヶ月前──
沙耶「拓真は忘れてるかもしれないけどさ」
拓真「・・・・・・え?」
沙耶「今度あそこから帰ったらここでデートして」
拓真「あ、うん・・・」
沙耶「それから・・・」
拓真「・・・」
沙耶「聞いてる!?」
拓真「ご、ごめ・・・聞いてる。聞いてるてば!」
沙耶「ならばよろしい」
正直忘れてた
ここで大事な約束、仕事にかまけて忘れた
だとか言ったら、即終了だった・・・
大事なことは、いつだって・・・
沙耶「忘れたりしないよね?」
拓真「当たり前だろ? ちゃんと用意してるし、 お前の帰りを待ってる」
そう言うと彼女は俺の頭をそっと撫で、
笑って言うんだ
「ぎゅっとするのはそれまでおあずけだよ」
「あ・・・」
〇洋館の廊下
2F 廊下
正直なところ、沙耶が生きている
確証はあまり感じていない
だけど──
・・・この手で魂の救済を
それくらいはせめてもの手向けだ
拓真「・・・沙耶」
拓真「うおっ!?」
突然襲われ思わずひるみ、
俺は咄嗟にその場にあるもので応戦する
・・・手応えはあった!!
暗がりで何を振ったかわからないし
何が襲ってきたものかよくわからないが
拓真「!? まさかこれが!?」
あれが噂に聞いた
『赤い館の怪物』だとすれば・・・
拓真「案外たやすい代物じゃないか──」
楽観的に捉えた
大体こんなもの
だったら彼女も
きっと生きてる
楽観的に考える
悪いことないよ
ああ悪くないさ
〇洋館の一室
2F ゲストルーム
テーブルを見つける
桃地の手帖をそこに置き
俺はそれを開こうとした
拓真「読むか・・・」
それを手にするといるはずのない君に、
赤裸々にすることを赦してくれ、と願う
俺はふと呟いて、
アルペジオ爪弾くよにそれを開く
拓真「・・・・・・これは!?」
拓真「・・・メモか? 一体?」
鴉色のペンで
君が書き記したモノを俺は見る
”遥かかなた望み滲むものを
突き放すために、
きえろ、貶みのことば待つ”
”ひとひら開き読めば
そして訪れたならば
俺というものに興味を持っている”と
拓真「あれ・・・・・・?」
拓真「なんで・・・・・・」
拓真「俺いったい いつまでこんなモノ握ってるんだ・・・ なんだよ、あの暗闇で俺、こんなモノ・・・」
滴る血を見て俺の手が小さく震える
拓真「う・・・こんなに血がついて!?」
血の滴る音が厭にまとわりつく
すっかり赤く染まっている俺に──
黄ばみがかった赤が滴る──
奥に備えられたテレビにスイッチが入る
コンセントなんて
正直繋がっているかさえ分からない
勝手に起動したんだから
勝手に映し出されるモノに見覚えがある
懐かしいなんて言葉で片付けられるか
一言一句──忘れられない
あの笑顔から始まった
〇公園通り
僕が見たモノは
君の純潔だ──
沙耶「安心して──」
・・・え?
沙耶「私たちの 努力の成果は・・・」
強烈な
凄惨な
鮮明な
証しとなって
ここに残るわ──
〇雑踏
3ヶ月前──
拓真「忙しくして忘れてたわけじゃない!!」
実際あの日は──
沙耶「嘘! そういうのもう聞き飽きてる 大体、こないだだって簡単にすっぽかして」
拓真「お前も簡単に予定入れ込んで」
沙耶「悪い!? そういうの、いちいち断り入れてもスルーして、後で理由付けしてくるばっか、もう聞き飽きた!!」
拓真「・・・・・・!!」
沙耶「・・・もう別れましょう?」
拓真「・・・え!?」
沙耶「それがいい、あなた私に一方的な夢見てる」
拓真「・・・まてよ 何だよそれ?」
沙耶「離れて落ち着いて話せばわかる」
拓真「そういうの意味分かんねえよ!!」
沙耶「それで・・・すぐ怒って わめいたりしてなんとかなるわけ?」
拓真「・・・!!」
沙耶「ならないよ、なにも」
おたがいようやく本音を吐露しあう
あの日俺は・・・
拓真「分かったよ・・・」
沙耶「・・・わかってくれた?」
拓真「・・・ああ ・・・分かったよ」
・・・
〇廃ビルのフロア
・・・
夜
障害灯の明減
遮る雲
月
路地裏
吠えるのは24時間換気扇
ナイフの鈍色
足音なんて瞬く間に消える
ストロボのように
〇公園通り
──あなたの真相を話してあげる
沙耶「拓真は忘れてるかもしれないけどさ」
拓真「・・・・・・え?」
──実際望んでいたことはこうでした
沙耶「今度あそこで****で***して」
拓真「あ、うん・・・」
沙耶「それから・・・」
拓真「・・・」
困った顔していたけれどホントはそれ
沙耶「聞いてる!?」
拓真「ご、ごめ・・・聞いてる。聞いてるてば!」
──嬉しかったんだよね?
沙耶「ならばよろしい」
完全に忘れてた
大事な約束、仕事だとか何とか
いいわけがましいこと言って
本当はもうどうでもいいやって
沙耶「ねえ、忘れたりしないよね?」
拓真「当たり前だろ? 当たり前だって! 言ってんだろ!」
そう言うと彼女は俺の顔を見て、こう言うんだ
沙耶「どのクチが聞いてんだ? え? ***ぞ!?」
〇洋館の一室
「・・・こないでって、言ったよね」
拓真「・・・・・・嘘だ」
沙耶「あたし嘘嫌いだよ」
拓真「さ、沙耶・・・・・・」
拓真「あの日、死んだ・・・・・・」
沙耶「そうね、あなたの中ではでショ?」
拓真「・・・・・・は?」
沙耶「あなたの中ではそう なのに私にはちがう 確かに書き残したの これ開けたのもそう ロストしたまま、ね」
拓真「ちが、血が、ちが・・・・・・」
拓真「沙耶やめ・・・・・・」
沙耶「ミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデミナイデ」
――なんで戻ったんだ、と後悔した
沙耶「ニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナニゲルナ」
彼女は実存が許されない!
屋敷中を走り俺は、
彼女を燃やせる何か探す
〇城の会議室
1F 食卓
「ほら、いい運動になった?」
拓真「!?」
拓真「沙耶・・・」
沙耶「3ヶ月前、私殺したとか思っちゃった?」
沙耶「それでこの廃屋同然の洋館に 遺棄しようとしたわけだよね」
沙耶「それ無理あるって・・・・・・」
拓真「あの時あの路上で確かに殺した それから俺は、俺は・・・・・・」
沙耶「泣き虫 言ったじゃない? その手帳を開くなって」
沙耶「開いたら最後、何を見るか」
拓真「手帳にすべて・・・・・・」
沙耶「だとしたら?」
拓真「・・・・・・嘘だ」
拓真「沙耶・・・・・・」
沙耶「ひとりおめでたーく私を助けに来た ヒーローのつもりかも知れないけど」
沙耶「実際問題、あんたが一番血に飢えた 化け物で、そんなあんたをあたしは どうしようもなく、愛してしまった」
沙耶「日和ってんじゃねえよ、そんだけの話 これからも愛し合って、殺し合って 楽しんでいきましょう、ねえ?」
拓真「ぐうう・・・!!」
沙耶「喜んでよ、生きてて、 愛しててあげるって言って こんなに嬉しいことはないでしょ?」
拓真「・・・・・・黙れ」
沙耶「・・・・・・なにそれ?」
拓真「俺はそんな沙耶を見たくない」
拓真「そんな沙耶を見たくなくて あの日、あの日ぃ・・・・・・」
そういうのが身勝手だっていうんだよ
わっかんないかなあ?
〇英国風の部屋
燃やすしかない──
脳裏にそれしか思いつかなかった
ばばば、と走るモノでとにかく
焼き尽くしてしまえ、と
決めつけたんだ
「燃えるモノ・・・・・・あった!!」
拓真「これで火を付けられれば!!」
- このエピソードを読むには
会員登録/ログインが必要です! - 会員登録する(無料)