勇者にはほしい才能がある

東龍ほフク

30/エルム・ナキュ⑨「ちょうちょ……?」(脚本)

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〇黒
  何をそんなにやる事あるんだ、30話おめ!

〇上官の部屋
オージュ・ウォゲ「アイツにもっと、報奨金を払え!!!!」
オウシ・ヤマ王「なっ‥‥‥はぁ?!」
オウシ・ヤマ王「いや、結構 払ったが‥‥‥?」
オウシ・ヤマ王「それこそ、数年は遊んで暮らせるほど‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「離婚の慰謝料として、嫁に渡しちまったんだよ!」
オウシ・ヤマ王「は、はぁ?!」
オージュ・ウォゲ「それだけではない‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「エルム・ナキュとして得られる 印税の全部を【離婚の慰謝料】として、 嫁にあげる契約しちまった!!!」
オウシ・ヤマ王「?!」
オウシ・ヤマ王「いや、そんな事‥‥‥ワシに関係ないじゃ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「貴様! エルム・ナキュ作品を 読んだことないな?!」
オウシ・ヤマ王「あぁ? まぁ‥‥‥ ワシはビジネス書しか読まん」
オージュ・ウォゲ「だろうな‥‥‥ あいつの作品を知っていたら、 討伐になぞ行かせなかったろうからな‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「『虫も殺せないような女性作家』としか 思えないからな‥‥‥」
見張りの兵「王よ‥‥‥なんですか?! 今の大きな音は!?」
見張りの兵「‥‥‥うわっ! 怖い顔!!!」

〇上官の部屋
オウシ・ヤマ王「本当になんなんだ、貴様‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「この事はクァド・ベミ社に 抗議させてもらうぞ」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥」
ひれ伏すオージュ「それは‥‥‥ご勘弁を」
ひれ伏すオージュ「デビュー先にそんな迷惑は、 かけたくありませぬ‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥では、最初からこんな事をするでない」
ひれ伏すオージュ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「すみません‥‥‥ 『エルム・ナキュとしての印税も名声』も 失くしてしまったアイツが不憫で‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「『親友のためにブチ切れてしまい、 窓ガラスを割って乱入したお咎め』は‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「”ナシ”でいいですよね?」
オージュ・ウォゲ「叙情酌量 × 2」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥それは‥‥‥自分勝手すぎでは‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「に、逃げた‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「エルム・ナキュとやらの小説は そんなに面白いものなのか?」
見張りの兵「── はっ。売れてはおります」
見張りの兵「『面白いか』と言うと‥‥‥うーん‥‥‥」
見張りの兵「なんてことない感じだったのに、急に 胸を貫いてきたりします」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥わからん」
見張りの兵「一部の人間には、とてもよく眠れる効果が あるそうです」
オウシ・ヤマ王「ほぉ‥‥‥なら、丁度いいな」
オウシ・ヤマ王「適当に読みながら、寝落ちしてやろうかの」
オウシ・ヤマ王「たしか‥‥‥著名な本は、書庫に まとめられてあったはずよな」

〇古書店
オウシ・ヤマ王((まぁ、適当に1冊‥‥‥))
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王((‥‥‥ぐすっ))
オウシ・ヤマ王((有名どころの『セイリング・ベルズ』とか  いうのを読んでみるか‥‥‥‥))

〇黒

〇古書店
オウシ・ヤマ王「なんだよぉおおーーー!!!!!!」
オウシ・ヤマ王「ジーコ!  ノキースに優しくすんなよぉお!!!!!」
オウシ・ヤマ王「この‥‥‥浮気者がぁ!!!!!」

〇西洋の城

〇古書店
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥‥えっ」
オウシ・ヤマ王「既刊‥‥‥読破してしまった‥‥‥」
寝不足王「えっ‥‥‥ もう作品はないのか‥‥‥?」
寝不足王「これで終わり‥‥‥?」
おねむ王「‥‥‥‥‥‥」

〇空

〇謁見の間
オージュ・ウォゲ「王よ‥‥‥急な呼び出し、何用で?」
オージュ・ウォゲ「私、叙情酌量で許されたじゃないですか」
オウシ・ヤマ王((いや、それはお前が勝手に言ってるだけで‥‥‥))
オウシ・ヤマ王((‥‥‥それはともかく))
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「エルム・ナキュ作品は、我が城の書庫に あるぶんで全てか‥‥‥?」
オージュ・ウォゲ「はいぃ?」
オージュ・ウォゲ「── はい。1度覗いたことがありますが‥‥‥ あれで全てだったかと」
オウシ・ヤマ王「えぇ‥‥‥?」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥最後に選ばれるのは“ミーナ”じゃよな?」
オージュ・ウォゲ「まさか!? 一夜で『セイ・ベル』の ミーナ信者に?!」
オウシ・ヤマ王「なぁ‥‥‥あれやこれやの続きは‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「それらの続きを書こうとして、毎回毎回 城に呼ばれて邪魔されてたんですけどぉ アイツぅーー!!!!」
オウシ・ヤマ王「そんなモン断って、執筆を優先すれば よかったものを‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ((えー‥‥‥‥))
オウシ・ヤマ王「え‥‥‥あの物語の印税が、全て本人に もういかないと‥‥‥?」
オージュ・ウォゲ「はい。元・嫁のものです」
オウシ・ヤマ王「まぁ、養育費として仕方ないのだろうが‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「あっ。親権はエルム・ナキュです」
オウシ・ヤマ王「何だソレは?!」
オージュ・ウォゲ「え〜‥‥‥カクカクシカジカヘラジカ‥‥🫎」
オウシ・ヤマ王「そんな‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「私は‥‥‥惜しい才能を失くさせてしまった‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「更に言うと『高額納税者』としても 優秀だったので、国としても 実は大損害なのですよ」
オウシ・ヤマ王「うわぁ〜〜‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「その、元エルム・ナキュ先生と子の 当面の生活や生活費用は‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「今のところ、私の家に置きますから そこら辺はご心配なくで」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥‥世界の為に尽くしたエルム・ナキュを 称えて、国で義援金を募るのはどうだろうか」
オウシ・ヤマ王「『募金』‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥いいですねぇ、ソレ」
オージュ・ウォゲ「『討伐に行ったエルム・ナキュが、 何らかの理由で書けなくなった』というのは この国ではもう有名な噂ですからね‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥国内はともかく、外部の者には 【エルム・ナキュの為の募金】と 公にしない方がいいかと存じ上げます」
オウシ・ヤマ王「何故じゃ?」
オージュ・ウォゲ「いや、単純に『全国の過激派ファン』から ブッ殺されますよ コレ」
オウシ・ヤマ王「!!」
オージュ・ウォゲ「ノキースとミーナに限らず、 ナキュ作品キャラのファンは結構いるんですよ」
オージュ・ウォゲ「まぁ、国内にも結構キレてるファンを 見かけましたが‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「我が国のせいでナキュがあぁなった事、 マジで緘口令(かんこうれい) 敷いておいた方が良いですよ」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥(頭を抱える)」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥ははは」
オウシ・ヤマ王「何がおかしい」
オージュ・ウォゲ「いや、エルム・ナキュが“死んだおかげで” 面白い王様が見れたものだなと」
オウシ・ヤマ王「‥‥‥全然 面白くないだろうが」
オージュ・ウォゲ「だって、起きてしまった事は 仕方ないでしょう」
オージュ・ウォゲ「ならいっそ、楽しまないと」
オージュ・ウォゲ「私ももう、楽しむ事にします」

〇空

〇田舎町の駅舎
  ※仕事や、借家の宣伝ポスターの貼り場
キン・ユルシャ((さて‥‥‥これから、どうしたもんかなぁ))
キン・ユルシャ((ずっとオージュの世話になるわけには  いかないから、早く仕事探さないとな))
キン・ユルシャ「‥‥‥と、ギンと住む家も」
???「あのぉ」
キン・ユルシャ「はい?」
???「家や仕事を探されているそうで‥‥‥?」
キン・ユルシャ「‥‥‥はい」
???「家も仕事も、私が用意して差し上げましょうか?」
キン・ユルシャ「はい?!」
キン・ユルシャ「え? 急に何です‥‥‥?」
???「私、エルム・ナキュのファンなんですよ」
???「好きな作家の手助け、したいじゃないですか」
キン・ユルシャ「‥‥‥‥‥‥?」
キン・ユルシャ「ん? エルムなんたらと俺に何の関係が?」
???「えっ」
キン・ユルシャ「え?」
???「‥‥‥聞いてたより、余程ひどいじゃないか‥‥‥」
キン・ユルシャ「俺、エルなんたらと家族か何かです?」
???「‥‥‥とにかく、家と仕事をあげますから よかったら南方の街まで私についてきてくれせんか?」
キン・ユルシャ「えぇえ?」
キン・ユルシャ「いえ‥‥‥息子から 『しらないひとに ついてったら ダメ』と 言われているので‥‥‥」
???「“知らない人”‥‥‥」
しょげる???「‥‥‥‥‥(´・ω・`)」
幼少ギン「すみません ほんやさんの レジがこんでて おまたせ してしまい‥‥‥」
キン・ユルシャ「なぁ、ギン 父さん‥‥‥誘拐されそうなんだが」
???「ちがっ‥‥‥」
幼少ギン「父さんのような おおきくてかさばる人を さらうわけないでしょう」
オージュ・ウォゲ「やぁ、昼飯時だし”黒ごま炙りセロリ丼” 食べに行こうぜ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「あ?」
キン・ユルシャ「オージュ、俺‥‥‥知らない人から ”家と仕事”を貢がれそうになってる」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「え? いいんじゃない?」
キン・ユルシャ「えぇ?!」
オージュ・ウォゲ「いいさ、私が許す」
キン・ユルシャ「だって‥‥‥誰だよ、この人」
オージュ・ウォゲ「何かされたら、向こうで盗賊を 殺したみたいにサクッと斬ればいいだけよ」
キン・ユルシャ「‥‥‥‥‥」
???「‥‥‥そんな事も、なされてきたのか‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥じゃあ、キン達の事 よろしくお願いしますね」
キン・ユルシャ「マジで『行け』ってか、オイ!」
オージュ・ウォゲ「あっ。もう、この際だから言うけど‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「ギン君はともかく! お前、食費かかるんだよ!!!!」
オージュ・ウォゲ「台所使った後の片付けが汚い! 元あった場所と配置が違う!!!!!」
キン・ユルシャ「えぇ‥‥‥おケチ‥‥‥」
幼少ギン「ごめんなさい オージュさん」
幼少ギン「おれが まだちいさいから、 たかいところのかたづけ できなくて」
オージュ・ウォゲ「ギン君はちゃんとお片付け出来てるよぉ〜 偉いよぉ〜高い所のなんて気にしないでぇ〜」
キン・ユルシャ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「── という理由もあるが、私はちょっと 引っ越しの準備もしたいからな」
キン・ユルシャ「手伝うよ!」
オージュ・ウォゲ「人の事よか、自分の心身いたわれ クソが」

〇木の上

〇お化け屋敷
キン・ユルシャ「── というわけで、世話になったなぁ! ありがとう!」
キン・ユルシャ「‥‥‥‥」
キン・ユルシャ「‥‥‥そもそも、何でこんなに よくしてくれたんですっけ?」
キン・ユルシャ「俺とあんた、そんなに仲良かったんです?」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「もう、1周まわって面白いんだよなぁ」
オージュ・ウォゲ「達者でな」
オージュ・ウォゲ「お前が好きだった近所の惣菜屋の唐揚げ、 もう食えなくなるの寂しいな」
キン・ユルシャ「そうだなぁ‥‥‥ コレ、もう食えなくなるのかぁ‥‥‥」
オージュ・ウォゲ「‥‥‥‥‥」
オージュ・ウォゲ((唯一、つまらない事といえば))
  あいつを、私のホラー小説でピィピィ
  泣かせる嫌がらせが出来なかった事か。

〇田舎道

〇空

〇空

〇海沿いの街

〇英国風の部屋
キン・ユルシャ「えーっ?  この家に住んでいいんですかぁ?!」
???「長年、空き家だったから少し汚いがな‥‥‥」
???「裏の畑 共々、好きに使ってくれ」
幼少ギン「よかったですね、おとうさん」
キン・ユルシャ「いや、ほんと‥‥‥」
キン・ユルシャ「おじさん、何者です?」
???「‥‥‥‥」
???「私、この街の”町内会長”兼‥‥‥ ”町長”なんですよ」
キン・ユルシャ「‥‥‥‥‥」
キン・ユルシャ「ちょうちょ‥‥‥?🦋」

〇黒

〇白
エルム・ナキュ「── と、いうわけでぇ‥‥‥」

次のエピソード:31/エルム・ナキュ⑩後日談

コメント

  • 祝・30話おめでとうございます!🎉🎉🎉
    集合イラスト賑やかで素敵です(*´∀`)対になる位置に置かれているギンくんとマモくんとか、背景に潜んでいる各種魔物達とか…!特に頬染めてるマモくんめちゃくちゃ可愛いです✨

    とうとう話が現在にまで集束していって、これからギンくん達がどう動いて行くのか楽しみですね。

  • ずっと3人で家族になって欲しかった気持ちもあります😆💓良い子ギンくんにデレデレオージュさんがまた…💕
    王様がもっと早くにナキュ作品に出会っていたら…。
    SNSでも拝見させて頂きましたが、豪華なスチル!!✨
    パパって呼んでいいんだよにドン引きのギン君も可愛い🥰しかし、黒ゴマ炙りセロリ丼が気になります笑

  • ついに…ついに、真相を知ってしまったギンたちのリアクションが次の回に…。
    スチルイラストの演出、毎回楽しませていただいています✨イラストが描けるライターさんだからこそできる魅せ方・コマ演出が凄く好きです😆
    オージュ先生、セルフ情状酌量🤣🤣🤣
    王様がようやく事の重大さに気づいた時の、カタルシスが気持ちよかったですけど、本当にファンは敵にしてはいけませんね😅

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