未球~MIKYUU~

きゃまっこ

エピソード5 肯定する? 必ず実現するから!(脚本)

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〇化学研究室
  ルルはサナに魔法を掛けて、何を消してしまったのかを探る。
ルル「今から掛ける魔法はサナさんの記憶を肯定する“有魔法”です」
ルル「本当の記憶しか見せません」
ルル「もしサナさんにとって知らない記憶が流れ込んできたら、それが消えたものに関係するということになります」
ルル「では、掛けます」
  ルルの魔法によって、サナの頭の中に今までの記憶が巡る。
サナ「はっ!」
サナ「この人、知らない」
ルル「記憶にない人たちが出てきたんですね」
サナ「はい、髪を後ろ手束ねた人が私に怒鳴っていました」
サナ「隣には小さな子どもがいますが、その子は知ってます」
ハヤ「となると、サナさんが消してと頼んだのは、その髪を後ろで束ねた人物ということになりますね」
ルル「消えたのは人か・・・・・・厄介なことになったよ」
ハヤ「そうですね」
ハヤ「ちなみに、サナさんとその人物、子どもが会っている場所はどこですか?」
サナ「私が住んでいるアパートの近く、です」
ハヤ「先輩・・・・・・」
サナ「結構不味い・・・・・・感じですか?」
ハヤ「そうですね。 人を消してもらった、というのがそもそも不味いですよね」
ハヤ「それで、子どもが側に居たということは、おそらく親子ということになります」
ハヤ「“無の妖精”は指定したモノや人だけを消すので、それに当て嵌まらなければ消えることはありません」
ハヤ「親が消えたとしても、子どもは辻褄合わせで、1人で生活している可能性があります」
サナ「えー!?」
ルル「小さい子どもということは、まだ親の加護が必要な年齢だと思う」
ルル「だから、その子どもの元に返さないといけないんだけど」
ルル「消された人を再び取り戻すには、私の魔法じゃできない」
ルル「物体だったらワンチャン私の魔法で取り戻せたかもしれないけど・・・・・・」
サナ「じゃあ・・・・・・もう取り戻せないってことですか?」
ルル「いえ、“有の妖精”なら取り戻せます」
  “有の妖精”とは、全ての存在物を肯定する妖精である。
  その世界に1度でも存在していた事実があれば、“無の妖精”に消されても取り戻すことができるのである。
ルル「えっと、知り合いの“有の妖精”がいますので、頼みに行きませんか?」
サナ「えっ!?」
ハヤ「“有の妖精”も危険レベルがMAXな生物指定にされていますが、彼らは比較的大人しいので様子見程度で済まされているんですよね」
ルル「うん。 なので、会いに行ってみましょう」
ルル「彼らは木が多いところに居るので、自然公園とかに向かいましょう」
  ルルたちは神秘局から近い場所にある自然公園へ向けて出発したのだった。

〇並木道
  ルルたちが森林公園にやって来た。
  ルルは知り合いの“有の妖精”を呼ぶ。
ルル「こんな時間にごめんね ユウちゃんいる?」
ハヤ「“有の妖精”だから“ユウちゃん”・・・・・・ 安直ですね、先輩」
有の妖精「はぁい、呼んだぁ?」
ルル「あ、こんばんは」
有の妖精「うん、こんばんわぁ」
ルル「あのね、いきなりで申し訳なく思うんだけど、取り戻したい人がいるんだ」
有の妖精「ん? それって、その白衣姿の人が消しちゃった人のこと?」
ルル「やっぱり、知ってたんだね」
ルル「なら、話しは早い。その人をもう一度この世界に存在を肯定することはできないかな?」
有の妖精「んー、できるけど・・・・・・」
有の妖精「戻さなくていいかなって自分は思ってるよ」
ハヤ「なぜですか?」
有の妖精「だって、その人、子供ちゃんのこと虐めてたみたいだから」
有の妖精「白衣の人は、子供ちゃんを虐めてる様子を見ちゃったから言い合いになった」
有の妖精「でも、虐め止めなかったから白衣の人は、子供ちゃんを助ける思いで“無の妖精”君に“消す”こと頼んだ」
有の妖精「あいつ面倒な奴だけど、今回はいい仕事したんじゃない?」
有の妖精「子供を虐めちゃうような人の存在肯定なんてしたくない」
有の妖精「悪影響だし、居ない方が子供ちゃんのため」
有の妖精「特にこの地区は子供ちゃんを守れるような制度がちゃんと機能してないようだし」
有の妖精「幸い親が消えちゃった子供ちゃんは、自分は元から1人だったかのように暮らしてるし問題なし」
有の妖精「それでも戻すの?」
ルル「・・・・・・・・・・・・」
ハヤ「ルルさん、どうしましょう」
ルル「私個人の感想としては、確かにユウちゃんの意見に共感できる」
ハヤ「えっ!?」
ルル「だけど、やっぱり子供には親は必要だと思う。どんな親でも」
ルル「問題なのは、子どもを虐めちゃうような親と子どもを引き離す制度が、この地域はあまり浸透していないこと」
ルル「親と子どもが一緒に暮らしても問題がなくなるまで絶対に会わせない」
ルル「そういう仕組みを確立する」
ルル「だから、お願いします。 戻してください」
有の妖精「うーん、君のお願いだからな~」
有の妖精「じゃあ、あの子を保護したら、その親を家に戻してあげる」
有の妖精「保護しない限り、絶対に肯定しないから、そこのところよろしく!」
ルル「はい、必ず」
  こうしてルルたちは“有の妖精”と別れた。
  問題の子どもを“教育局”が保護し、その親が戻ってくるのを確認したところでルルとハヤの仕事は完了したのだった。
  ちなみに“教育局”とは、全世代の学ぶことを管理する公的機関である。
  学校教育、更正、専門知識の提供等をはじめ、心身のケアや家庭の実態調査も行っている。

〇講義室
ハヤ「ルルさん、あの件、あれからどうなりましたか?」
ルル「“教育局”本部が本腰を入れて全身地域の家庭状況を一斉調査し始めたよ」
ルル「子どもの精神ケアと親の更正の余地があるかを見極めて、より良い結果になるように動いてた」
ルル「動ける人が不足してるらしかったから“ニコちゃん”も大活躍中だよ」
ハヤ「あー、そっちの問題もありましたね」
ハヤ「でも、安心しました」
ハヤ「これで若い命が危険に晒される事態が無くなることを目指せますね」
ルル「うん!」
ハヤ「それと、この事件の発端となった“無の妖精”ですが、ちゃっかり施設に戻ってましたね」
ルル「ね、ビックリした」
ルル「まー、“無の妖精”は気まぐれだから、行動が読めないんだよね」
ルル「あの親以外消えている可能性もなさそうだし、結果オーライってことで」
ハヤ「そ、そうですね」
  エピソード5 終了

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