出会い(脚本)
〇水中
水の中
僕だけの世界
誰も僕を責め立てない。焦らせない
僕だけに優しい世界
けれど
それはすでに過去のものになっていた
手だった
せわしなく動き回る手
その動きは何かを探すようだった
同時に不快な音を立てながら
僕の世界を引っ掻き回す
そんなことを考えながら
しばらくその手を眺めていた
手は動き出した
今度は目標に目掛けて一直線に
手は僕へ向かってきた
ぐっ!?
僕は抵抗する間もなく
地上に引き戻された
〇けもの道
森
グリ
グリ!
そろそろ家に帰るぞ。
母さんが心配するからな
グリ「先に帰ってて。途中なんだ」
わかった。あまり遅くなるなよ
ザッザッザッ
グリ「ふぅ・・・」
父さんの足音が遠ざかっていく
今日の分の薪割りはだいぶ前に終わっていた
けれど、もう少しだけここに居たくて
反射的に嘘が口をついて出た
まだ帰りたくなかった
〇小さい滝
湖
森の奥にある湖
薪割りの最中に偶然見つけた場所
仕事を早く終えてここで休むのが
僕の習慣だった
〇水中
服を着たまま水に潜る
身体から力を抜くと少しずつ沈んでいく
水の中が好きだった
身体と感覚
僕を構成するすべてが溶けていく
地上で維持している
僕という枠組みが溶けていく
僕という形からの開放
僕は悩んでいた
変わり映えのしない毎日
何度も繰り返した毎日
そしてこの先もきっと繰り返す
〇水中
僕は不安だった
この生活に不満はない
けれど、
僕の中の何かが確実にすり減っていた
その何かがすり切れることが
その事だけが漠然と不安だった
考えても考えても答えは出なくて
もがき方すらわからない僕は
底の見えない闇に沈んでいくばかりだった
目を閉じて感覚を水に溶かす
水との親和性を高める
僕の中のわだかまりも溶けていけばいいと思った
雑音がする
水が流れる音ではない。
水を必死に叩く音
その音は近づいてきていた
世界の外側へ僕を引き戻すために
しかたなく目を開ける
がっ!?
〇水中
〇小さい滝
湖のほとり
グリ「ぷはっ」
大丈夫っ!!平気!?
しっかりして!!
ウチがついてる!
大丈夫だから、大丈夫だからねっ
グリ「ごほっごほっっ」
ウチのこと見えてる!?
キミ溺れてたんだよ!
グリ「ごほっごほっ・・・ はあ・・・」
グリ「・・・溺れた」
うん。そうだよ。
良かった。意識はしっかりしてるみたいで
グリ「・・・違う」
グリ「君のせいで溺れたんだ」
えっ?
グリ「君が急に引っ張り上げるから たくさん水を飲んだ」
グリ「僕は潜っていたんだ。 そもそも溺れてない」
そう。だったんだ・・・
あー・・・あっはっはー・・・
ごめんねっ!!
溺れてるって思ったら
頭いっぱいになっちゃって
助けようとしたんだよっ!
ホントだよ・・・
グリ「もういいよ」
グリ「潜ってる僕も悪かった」
グリ「ここに人が来るなんて思いもしなかったんだ」
そうなんだ。
キレイなところなのに
グリ「君は誰? 村の子にしてはここは村からだいぶ離れているけど」
リュイ「リュイ!」
リュイ「ドリーマーなんだ。ウチ」
グリ「ドリーマー?君が?」
とても素敵な文章で、グングン引き込まれていきました‼
登場人物も出てきて、これからどんなファンタジックな話や夢が広がるのか楽しみです‼😃