本郷ノリカズの奇妙な旅

こりどらす

File.4 漁村の宿(脚本)

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〇オフィスのフロア
  都内某所
  旅行雑誌『ITTE COOL』
  編集部
本郷ノリカズ「やあ。 突然だが、キミは駄菓子、好きかね?」
本郷ノリカズ「記者たちの休憩時間用に大量にストックされていたのだが、賞味期限が迫っていてね」
本郷ノリカズ「福利厚生のつもりか知らんが! うまいん棒500本近くは ストックしすぎじゃあないかッ!?」
本郷ノリカズ「買うなら食え! という話だッ!!」
本郷ノリカズ「・・・さて。 奇妙な話を聞きたいのだろう? 察しはつくよ」
本郷ノリカズ「これは、 漁村の宿に行った時の話なのだが・・・」

〇林道
本郷ノリカズ「トウウンくん・・・。 本当にこの道で合っているんだろうな?」
本郷ノリカズ「バスから降りて既に、 2時間ほど歩いているのだが・・・」
東雲アキホ「なにしろ、秘湯ですから!」
東雲アキホ「スマホゲームの広告に出てきた 若返りの湯ペア宿泊券に見事当選した 私の強運!」
東雲アキホ「万病を治す上に! 30年若返るそうです!」
東雲アキホ「すごくないですかっ!?」
本郷ノリカズ「そんな怪しげな募集・・・。 応募したのキミだけだったんじゃあないか?」
本郷ノリカズ「だいたいキミ、いくつだッ!? 本当に30年若返ったら 相当困るんじゃあないかねッ!?」
東雲アキホ「おい・・・先輩。 女性に年齢聞くな。 失礼だろう明らかに!」
東雲アキホ「少しはデリカシーを身につけろっ!」
本郷ノリカズ「キミは常識を身につけろッ!」

〇田舎町の通り
  『印須増村』
東雲アキホ「ようやく着きましたね! 印須増(いんすます)村!」
本郷ノリカズ「・・・ずいぶん魚臭いとこだな。 というか、生臭い」
東雲アキホ「漁村ですから!」
東雲アキホ「僻地ですしね!」
本郷ノリカズ「・・・」
本郷ノリカズ「・・・まあいい。 しかし、肝心の宿はどこにあるんだ?」
東雲アキホ「『苦取荘(くとぅるそう)』 という民宿らしいです! 若返りの秘湯のお宿!」
本郷ノリカズ「それは道中で100回は自慢された。 どこにあるんだ?」
東雲アキホ「・・・」
東雲アキホ「ルポライターの基本っ! 『情報は足で稼げ』っ!」
東雲アキホ「先輩はネットに頼りすぎて、 そんな基本も忘れたんですかっ!?」
東雲アキホ「手当たり次第、 村人に聞いてまわりましょう! あたかも、ゲームのように!」
東雲アキホ「なんかでかい建物があれば 多分それがお宿な気がします!」
本郷ノリカズ「・・・名演説ありがとう。 宿の場所を把握していないのが 痛烈に伝わってきたよ」
本郷ノリカズ「やれやれ・・・。 日が暮れる前に着けるといいが」

〇ボロい駄菓子屋
  印須増村
  『駄菓子だごん』
  私とトウウンくんは別行動し、
  それぞれ宿の場所を探していた
本郷ノリカズ「おいおいおい・・・。 そもそも村人が歩いてないじゃあないか」
本郷ノリカズ「駄菓子屋か・・・この際、子供でも構わん」
  駄菓子には子供の姿はなく、
  老人たちの溜まり場となっていた
村人「おいし・・・。 これおいしい・・・」
村人「こらこらー、僕のをとるなよー!」
  老人たちは、無邪気に笑いながら
  なにかを貪るように食べていた
  ぐちゅ・・・。
  じゅぱじゅぱ・・・。
本郷ノリカズ「談笑中に申し訳ない。 ちょっといいかな・・・?」
村人「なんだい? これはあげないよ」
村人「ニッキ紙だよ。 欲しければお店で売ってるよ」
本郷ノリカズ「いや、菓子をもらおうとかじゃあないんだ」
本郷ノリカズ「苦取荘、という旅館がどこにあるか、 知っていたら教えてほしいのだが・・・」
村人「僕、知ってるよ。 この道をずっと行ったとこだよ、 おじさん!」
村人「苦取荘のお客様なんだー? わーい!」
本郷ノリカズ「助かったぞ、ご老人たち!」
本郷ノリカズ「そしてッ! 菓子の食べすぎには注意しろッ!」

〇寂れたドライブイン
  印須増村
  『るるいえ横丁』
村人「今日だったよね、くとぅるうさまの日!」
村人「そうよ、新しいおみにえの方達がいらっしゃるの!楽しみ!」
村人「若いといいなぁ・・・ひひひ」
東雲アキホ「すいません、この辺りで 苦取荘というお宿を 探しているのですが・・・」
村人「すぐそこにあるよ! お姉ちゃんが泊まってくれるんだー?」
村人「えへへ・・・いいな。 ぴちぴちだ・・・」
東雲アキホ「ぴちぴち? 伊勢海老とかですかっ?」
東雲アキホ「新鮮な伊勢海老、うまいですよねっ!」
村人「とっても元気なのね。 私たち全員で、いただけるわ」
東雲アキホ「大宴会ですか? 楽しみですっ!」
東雲アキホ「胃袋の限界に挑戦しますっ!!」

〇温泉旅館
  印須増村
  『苦取荘』
本郷ノリカズ「・・・宿に到着して、こんなに安堵したのは 生まれて初めてだ」
東雲アキホ「それは貴重な体験でしたねっ!」
本郷ノリカズ「おいおいおい・・・。 すごい人数のお年寄りが 集まってきているぞッ?」
東雲アキホ「伊勢海老の食べ放題があるそうですっ!」
本郷ノリカズ「あと・・・ これは気のせいかも知れないが・・・ お年寄り達からの注目を感じる」
東雲アキホ「ライバル視されているんでしょう!」
東雲アキホ「プレッシャーに負けず食べましょうっ!」
村長「村民の皆様! 本日は、まことにおめでたい くとぅるうさまの日です!」
村長「この素晴らしい日をぜひ! 東京からいらっしゃった ゲストの方と共にお楽しみ下さい!」
村長「では、ゲストの方はどうぞこちらへ! お食事の用意ができています!」

〇高級料亭
本郷ノリカズ「うむ・・・うまいじゃあないか」
東雲アキホ「伊勢海老とか! 松坂牛とか! トリュフの食べ放題はっ!?」
本郷ノリカズ「おいおいおい・・・なんか要求が増えているんじゃあないか?」
本郷ノリカズ「無料の旅行に、どこまで求めるんだね、 トウウンくん・・・」
女将「こちら、当館自慢のお料理 ザクロ蟹の味噌煮込みです・・・。 ぜひお召し上がりください」
東雲アキホ「あ、これおいしい! なんか海辺のような香りと うまい蟹の味と ついでに味噌の味が」
東雲アキホ「よく分かりませんがハーモニーになって! 口の中でぶわあって拡がります!」
本郷ノリカズ「・・・そうか、良かったな」
女将「お腹いっぱい食べてくださいね・・・ ふふふっ・・・」
東雲アキホ「ふぁ〜・・・なんか、 お腹いっぱいになったせいか・・・ 眠くなってきましたぁ」
本郷ノリカズ「なん・・・だとッ・・・!」
女将「ゆっくりと、お休みくださいね・・・」

〇怪しげな祭祀場
  苦取荘
  祭儀の間
  ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが なぐる ふたぐん
  ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるふ るるいえ うが なぐる ふたぐん
村長「この村の命を司る 偉大なる海の神くとぅるうさま・・・」
村長「30年に一度の、おみにえをご用意しました! ぜひお身体に取り込み・・・」
村長「我らに若返りの湯を、お与えくださいっ!」
くとぅるうさま「ニエ、ワレニ、ササゲヨ・・・」
くとぅるうさま「マズ・・・ムスメ・・・トリコム・・・」
  びちゃり・・・
  ぐちゅ・・・!
東雲アキホ「うっ・・・ ふぁっ・・・」
くとぅるうさま「オマエ・・・ワタシト・・・ ヒトツニナル・・・」
本郷ノリカズ「黙って見ていればッ! 少し調子に乗っているんじゃあないかッ!?」
村長「な・・・なんじゃっ!? 薬が効いておらんのかっ!?」
本郷ノリカズ「おいおいおい・・・。 あんな見え透いた芝居でッ! この本郷ノリカズを欺けると 本気で思ったのかッ!?」
本郷ノリカズ「言っておくが! 食わず嫌いとかではない・・・ 決してなッ!!」
くとぅるうさま「グルル・・・!」
本郷ノリカズ「打撃を包むかのような柔軟性ッ! そして、このシチュエーションッ!」
本郷ノリカズ「ジェル的な猥褻物をッ! ハイテクで動かしているッ! マニアックなAV撮影だなッ!!」
くとぅるうさま「神・・・タル、ワレ、ガ・・・ エ?ナニ? ワイセツブツ??」
本郷ノリカズ「殴っても衝撃が逃げるならッ! やる事は一つッ!」
本郷ノリカズ「AV監督にご退場願おうッ!!」
本郷ノリカズ「どうららららららららァッ!」
村長「ぶべらべへらッ! ギャバアアアッ!」
くとぅるうさま「グオオオオンッ!!」
村人「あぁ〜・・・村長が気絶・・・。 お呼びした者の意識が無くなると くとぅるうさまが消えてしまう・・・」
村人「うわーん、僕たちの神が 消されちゃったよぉー!」
村人「うわーん、このお兄ちゃん怖いよー!」
村人「みんな、逃げるのよっ!」
  私たちは翌朝、村を後にした。
  トウウンくんが、どうしても伊勢海老が食べたいと駄々をこねたところ、
  朝食に伊勢海老が出た

〇オフィスのフロア
  都内某所
  旅行雑誌『ITTE COOL』
  編集部
本郷ノリカズ「・・・とまあ、こういう話だ」
本郷ノリカズ「どこが奇妙かは、言うまでもないだろう?」
本郷ノリカズ「なぜッ! AV撮影なのにカメラマンが居なかったッ!」
本郷ノリカズ「そして色気も何もないトウウンくんが 女優に選ばれたのは何故なのだッ!」
本郷ノリカズ「というわけで、私の中で実にッ! 理解に苦しむ体験なのだ」
本郷ノリカズ「その村かね? なにか古い伝承を信じている村らしいが、知った事ではない」
本郷ノリカズ「記事に書くような観光スポットも 無かったしなッ!」
本郷ノリカズ「・・・しかし、この大量の駄菓子、 実に持て余すな」
本郷ノリカズ「キミのところに送りつけてもいいかね? うまいん棒500本」
本郷ノリカズ「露骨にイヤな顔をしてくれるじゃあないか。 では、キミのそんな表情を見れたところで、私は失礼するよ」
  File.4
  漁村の宿
  完

次のエピソード:File.5 植物園

コメント

  • わいせつ物扱いされるくとぅるふ様かわいそ(`;ω;´)

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