本郷ノリカズの奇妙な旅

こりどらす

File.3 クラシックホテル(脚本)

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〇祈祷場
  都内某所
  神社『逢魔神宮』
  拝殿
本郷ノリカズ「やあ、またキミか。 日曜日にビデオ通話してくるとは、いい度胸じゃないか」
本郷ノリカズ「つい『LINC』のアカウントを教えてしまった過去の自分を、ぶん殴りたい気分になったよ」
本郷ノリカズ「何してるのか、だと? うちの親が、ここの神職でね。 ヒマな時には手伝いをしている」
本郷ノリカズ「悪霊祓いで有名な逢魔神宮の息子なのは お似合いだ、と今、言ったのか?」
本郷ノリカズ「売れっ子ルポライターである、この私が? ふざけるなッ!」
本郷ノリカズ「どう考えてもッ! プリンに醤油がかかっているくらい 似合っていないだろうがッ!」
本郷ノリカズ「それに、この世にはそもそも 悪霊などいない。 親父からは、お前は祓いの力が強いと言われているが・・・」
本郷ノリカズ「そもそも怪奇現象に遭遇した事など、一度もないッ!」
本郷ノリカズ「・・・で、今日も奇妙な話を聞きたい、と。 まあ、いいだろう。 気分転換したかったとこだ」
本郷ノリカズ「これは私が、ホテルの取材に行った時の話だ」

〇オフィスのフロア
  都内某所
  旅行雑誌『ITTE COOL』
  編集部
東雲アキホ「本郷先輩っ! 今日はよろしくお願いします!」
本郷ノリカズ「トウウンくん・・・取材くらい、そろそろ一人で行けんのかね?」
東雲アキホ「東雲(シノノメ)ですっ! 先輩、わざと言ってるでしょ?」
本郷ノリカズ「私が呼びたいように呼ぶ。 それで、今日はどこへ連れてく気だい?」
東雲アキホ「泊まった人が行方不明になるホテル、です!」
本郷ノリカズ「・・・人をアホに巻き込むな。 取材する意味が分からん」
東雲アキホ「なんでそういう事言うかなぁ・・・。 夏向けに、ちょっとホラーな噂があるお宿の特集するんですよ」
東雲アキホ「宿泊客のうち、女性だけが過去に何人か、行方不明になったという・・・」
東雲アキホ「か弱い私を一人で行かせるの、心配でしょ?」
本郷ノリカズ「・・・一人で行け。 そして行方不明になってこい」
東雲アキホ「もう先輩ー! そんないじわるばかり言ってると」
東雲アキホ「ハラスメントな感じで SNSを駆使して晒すぞ?」
本郷ノリカズ「笑顔でドギツイ事言うのはやめたまえ・・・」
東雲アキホ「広報も兼業してる人間、甘く見るなって話ですよ、ゴルゥア!」
東雲アキホ「・・・」
東雲アキホ「まあ黙ってついてこいや、 という事ですよ先輩」
  こうして、非常に不本意ではあったが
  トウウンくんの取材に同行する事になった

〇お化け屋敷
  ホテル『黎明館』
本郷ノリカズ「・・・ ここが、婦女連続行方不明事件の現場か」
東雲アキホ「なんですか、その言い方」
本郷ノリカズ「キミがそう言って連れてきたのだろう、 トウウンくん」
東雲アキホ「いや・・・ガチの事件ではないですよ。 そんな危ないスポットだったら 雑誌で紹介できませんって・・・」
東雲アキホ「調べがついた限り・・・ ここ5年間で4名の女性が、 宿泊中に消息不明になっています」
東雲アキホ「決まって、男性と一緒に宿泊した女性が 消えてしまっているそうです」
東雲アキホ「翌朝になって、パートナーの姿が見つからない事に気付き・・・辺りを探してもどこにもおらず」
東雲アキホ「携帯にも繋がらず、そのまま消息が不明に・・・」
東雲アキホ「どぉですッ! 怪談っぽくないですかッ!?」
本郷ノリカズ「おいおいおい・・・待てよ。 年間どれくらいの行方不明者が出てると思ってるんだ?」
本郷ノリカズ「5年間で4名なら! 騒ぐほどではあるまいッ!」
東雲アキホ「だから、 ガチ案件ではないんですってば・・・」
東雲アキホ「それっぽく! しかし、ちょい怖な噂がたってる! 旅行雑誌の記事の一つなんです!」
本郷ノリカズ「・・・なるほど。 なんちゃってホラーか」
本郷ノリカズ「まるで! 気軽に読める短編小説のようだなッ!」

〇貴族の応接間
  ホテル『黎明館』
  エントランス
黎明館 支配人「ITTE COOL取材の方達ですね? お待ちしておりました」
黎明館 支配人「・・・ようこそ、黎明館へ」
東雲アキホ「東雲です。 お世話になります」
本郷ノリカズ「本郷だ。 このホテルで起きた失踪について! 雑誌に書く為に来たぞッ!」
東雲アキホ「違います! いや、趣旨はズレてませんけど・・・ でも違いますぅッ!」
黎明館 支配人「はい、事前に伺ってはおります。 過去に起きた行方不明に絡めて ちょっと怖い感じに取り上げたい・・・」
黎明館 支配人「プロの方達ですので、 当ホテルの良いところをきちんと書いて下さるだろうとお受けしましたが・・・」
黎明館 支配人「面白おかしく書かれるのであれば、今からでもお断りします」
本郷ノリカズ「脚色などしないぞ。 私は好奇心の赴くままに・・・」
東雲アキホ「・・・人気ライターだからって、 いい気になるなよ? 社会的にボコボコにされたいか ゴルァア!?」
東雲アキホ「いいか?先輩・・・。 人の取材の足を引っ張るな・・・!」

〇洋館の廊下
東雲アキホ「先ほどは本当失礼しました・・・。 この馬鹿が・・・。 本当にこの馬鹿が申し訳ありませんでした」
本郷ノリカズ「連呼はやめたまえ、トウウンくん」
本郷ノリカズ「しかし、見事な調度品だな」
本郷ノリカズ「ペルシャ絨毯もそうだが、かけられている絵も名のある画家のものばかりだ」
黎明館 支配人「はい、この廊下は『芸術の廊下』と呼ばれており、当ホテル自慢のコレクションが陳列されています」
東雲アキホ「この大きな絵も、有名な作品ですか?」
  それは実に見事な絵画だった。
  乙女を守る中世の騎士が描かれている
黎明館 支配人「コレクションの目玉と言える絵画です。 ルネサンス期に描かれた、 『chevalier du désir』・・・」
黎明館 支配人「日本語で訳すれば、『欲深い騎士』 といった感じでしょうか」
東雲アキホ「なるほど・・・! よく分かりませんが、 高級そうなお宝ですね!」
東雲アキホ「でかいダイヤ買えるくらい高そうですっ!」
本郷ノリカズ「キミも少し黙りたまえよ、トウウンくん。 馬鹿オーラが溢れ出ている」

〇城の客室
  ホテル『黎明館』
  客室
東雲アキホ「お食事も美味しかったです! さすが有名クラシックホテル」
東雲アキホ「特に、なんか、いい感じに焼いてある 柔らかいステーキが!」
本郷ノリカズ「あのな・・・トウウンくん。 キミはグルメライターではない訳だが、 もうちょっと表現どうにかならないのか?」
  もう夜も更けていた。
  私とトウウンくんは、取材を終え
  支配人の好意に甘える形で
  一泊させてもらっていた
東雲アキホ「・・・あれ? 廊下でなんか、聞こえませんでした?」
本郷ノリカズ「いや、何も? どんな音だ?」
東雲アキホ「金属を擦り合わせるような、 ガチャガチャ、って感じの音です」
東雲アキホ「あ、でも、もう鳴り止みました」
本郷ノリカズ「・・・この部屋の前でか? くだらん。 怪談ごっこなら一人でやってくれ」
東雲アキホ「こんどは廊下を引き返してくように、音が去っていきました・・・」
東雲アキホ「先輩〜・・・。 気になるから確認してきて下さいよ」
本郷ノリカズ「アホに付き合っていられるか。 気になるなら、自分で行くといい」
本郷ノリカズ「もし! 万が一、危険であれば、大声で呼べ。 私はもう寝るぞ」

〇洋館の廊下
  ホテル『黎明館』
  芸術の廊下
東雲アキホ「くそ〜・・・本郷先輩のバカ。 ちょっとくらい付き合ってくれても いいじゃない・・・」
東雲アキホ「あの音、どこ行ったんだろ。 方角的には、こっちだったと思うんだけど」
東雲アキホ「聞こえた! こっちからだ!」
東雲アキホ「これ・・・でかいダイヤ買えそうな絵・・・」
東雲アキホ「でも、なに・・・ この違和感・・・ いやな感覚・・・」
  カチャリ・・・
  カチャ・・・
  ガチャガチャガチャッ!
東雲アキホ「えっ!?」
  ドギャアアアアアスッッ!!
本郷ノリカズ「なんだッ!? 今の、絹をさくようでいて 野獣の断末魔のような叫びッ!」
本郷ノリカズ「トウウンくんの叫びだッ!!」
本郷ノリカズ「この絵・・・! 『欲深い騎士』・・・ッ!」
本郷ノリカズ「いや、なにかおかしいぞッ! ・・・描かれていた騎士がいないだとッ!?」
騎士「新シイ・・・守ルベキ・・・姫・・・」
本郷ノリカズ「トウウンくんが絵に吸い込まれていくッ!」
本郷ノリカズ「そして・・・バカなッ!? 絵の中の女の顔がッ!」
本郷ノリカズ「トウウンくんそっくりに なってゆくだとッ!!」
騎士「男・・・イラナイ。 姫、モラウ。 寄ラバ、斬ル」
本郷ノリカズ「斬りつけてきただとッ!? この斬撃ッ、 そして変化してゆく絵ッ」
本郷ノリカズ「これはッ! プロジェクションマッピングだなッ!?」
騎士「ン・・・? プロ・・・ エッ!?」
本郷ノリカズ「支配人めッ! こちらが真面目にやっているのに! 話題作りかッ!!」
騎士「モウ、ヨイ・・・。 シネ」
本郷ノリカズ「いつまで立体映像でッ! イタズラをする気だッ!!」
騎士「エ・・・!? 仮面・・・吹キ飛バ・・・!? オ前・・・何者・・・」
本郷ノリカズ「何者かだとッ!? 覚えておくがいいッ! これが・・・ッ!」
本郷ノリカズ「ルポライターだァッ!!」
騎士「ナ・・・ ナナ・・・ッ!? ナナナナナイトォッ!!」

〇祈祷場
  都内某所
  神社『逢魔神宮』
  拝殿
本郷ノリカズ「・・・とまあ、そういう話だ」
本郷ノリカズ「どこが奇妙なのかは、言うまでもない」
本郷ノリカズ「なぜッ! 支配人は急にオカルト路線を決め込んだ!?」
本郷ノリカズ「そして、どうして この女はここにいるのだッ!」
東雲アキホ「助けてもらったお礼だって、 何度も言ってるじゃないですか先輩」
東雲アキホ「もうミラクルウルトラ超常現象で、死ぬかと思いましたもん」
本郷ノリカズ「あの程度の立体映像を本気にするとは、トウウンくんはバカなのか?」
東雲アキホ「えー?確かに、絵の中に吸い込まれた気がするんですけど・・・」
東雲アキホ「ま、いいです! 今回『も』、助けてもらって感謝ですよー! ああいう取材の時は本当、頼りになります!」
東雲アキホ「(・・・アホだけど)」
本郷ノリカズ「何か言ったか?」
本郷ノリカズ「というより、画面の向こうのキミ! いつまで通話を繋げているのだねッ!」
本郷ノリカズ「む・・・? 時間をとって悪かった、だと?」
本郷ノリカズ「ならば、LINCで ギフトの一つも寄越すんだなッ! 私はプリンが好物だ!」
本郷ノリカズ「というわけで、通話を切らせてもらう。 いいな? プリンだぞ?」
  File.3
  クラシックホテル
  完

次のエピソード:File.4 漁村の宿

コメント

  • こりどらす先生の次回作に
    期待しています!

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