第3話 父、居場所ない(脚本)
〇病室
ケン「・・・ねぇ、パパ」
ハルオ「お、どうした、ケン?」
ケン「違うよ、アンドロイドのほう!」
ハルオ「・・・え」
ユキエ「ケンちゃん! ほ、ほら、本物のパパが 帰ってきたんだから・・・」
ケン「えー、だって・・・」
ケン「アンドロイドのパパのほうが優しいし、 いっぱい遊んでくれるもん!」
ハルオ「・・・ケン」
ハルオ(アンドロイド)「おいおい、ケンちゃーん! パパが帰ってきた以上、 パパはもうパパじゃないんだ・・・」
ハルオ「自分の代わりの アンドロイドにフォローされる・・・」
ハルオ「ややこしいやら情けないやら・・・」
ハルオ(アンドロイド)「私のことはこれから・・・そうだな」
ハルオ(アンドロイド)「えーと、ハルオ・・・」
ハルオ(アンドロイド)「ハリーとでも呼んでくれっ」
ケン「うん、わかった!」
ケン「ハリー! 早く帰って遊ぼ!」
ハルオ「・・・子供ってのは、時に残酷だな」
ハルオ「もう、今日は疲れた・・・ ひとりにさせてくれ・・・」
ユキエ「で、でも・・・」
ハルオ「いいから!!」
ハルオ(アンドロイド)「まぁ・・・そうおっしゃってますし、 そろそろおいとましましょう」
ユキエ「え、ええ・・・」
ユキエ「あなた、また来るからねっ」
ユキエ「・・・ほら、ケンもお別れしなさい」
ケン「・・・パパ、またね」
ハルオ(アンドロイド)「それじゃ、ハルオさん、シーユー!」
ハルオ「・・・」
ハルオ「なーんかアイツら、 本当の家族みたいだったな・・・」
ハルオ「本当・・・の」
〇病室のベッド
ハルオ「おー、よしよし、元気だなぁ!」
ハルオ「男の子はそのぐらい元気でなくちゃ!」
ユキエ「のんきなこと言ってないで オシメ換えてください・・・」
ハルオ「おー、そうか、オシメか!」
ハルオ「よーしよし、早く大きくなれよー」
ハルオ「パパといっぱい遊ぼうなっ!」
〇草原の一軒家
自分なりに、家族のために
がんばってきたつもりだった
でも・・・足りなかったのか──?
〇病室
「・・・さん」
看護師「大浜さん、夕食の時間ですよ」
ハルオ「夢か・・・」
ハルオ「なぁ、看護師さん?」
看護師「なんです?」
ハルオ「酒・・・呑みてぇんだけど」
看護師「そ、そんなものありません! ここ病院ですよ!」
ハルオ「呑ませてくれ、今夜だけは・・・」
ハルオ「3年間信じ続けてきたもんが・・・ 崩れ去っちまったんだ・・・」
看護師「無理ですっ」
ハルオ「頼む!消毒用アルコールでもいいからっ!!」
看護師「せ、先生ーっ!!」
〇黒
その後、順調に回復した俺は
退院の日を迎えた──
〇病室
ハルオ「帰れる・・・!」
ハルオ「ようやく帰れるんだ、わが家へ!」
ハルオ「俺が自ら場所を選び、 こだわり抜いた 自然あふれる一軒家・・・!」
〇草原の一軒家
あの場所でなら、きっと
本物の家族に戻れる──
〇病室
ハルオ「はーい、どうぞ!」
ユキエ「さ、あなた、帰りましょ」
ハルオ「・・・なんだ、お前ひとりか?」
ユキエ「え、ええ・・・」
ユキエ「まぁいいじゃない! これからは毎日会えるんだし!」
ハルオ「・・・ま、それもそっか!」
〇総合病院
ハルオ「・・・」
ハルオ「な、なんか、すんげぇ車に・・・」
ユキエ「そ、そうなのよー 前の車、古くなっちゃったしっ」
ハルオ「・・・これも、俺の保険金で?」
ユキエ「ええ・・・まぁ・・・」
ハルオ(コイツ、いくら俺にかけてたんだ・・・?)
〇車内
ハルオ「・・・左ハンドル、ね」
ユキエ「え、ええ・・・カッコいいでしょ?」
ハルオ「・・・街はあまり変わってないみたいだな」
ユキエ「そうね、このあたりは前から栄えてるから」
ハルオ「じゃあ、わが家の周りは もっと変わってないんだろうなぁ!」
ハルオ「自然にあふれた環境で のびのび子供たちを育てたい・・・」
ハルオ「そう思って選んだ 郊外のポツンと一軒家だからなっ!」
ユキエ「え、ええ、あの・・・」
ユキエ「そのこと、なんだけど・・・」
ハルオ「ん?どうした?」
ユキエ「・・・着いたわ」
ハルオ「は? だってまだ駅前だろ?」
〇タワーマンション
ユキエ「・・・」
ユキエ「お、おかえりなさーい、わが家へ」
ハルオ「・・・」
ハルオ「なんじゃこりゃあ!?」
〇黒
次回予告
〇タワーマンション
ユキエ「地上32階立ての最上階角部屋よ」
ハルオ「セレブ・・・っておい!」
〇高級マンションの一室
ハルオ「・・・」
ハルオ「俺、生きてて大丈夫?」
〇黒
第4話 父、なじめない
お楽しみに!
※なお、次回の内容は
予告から変更になることがあります