いわく鑑定士

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〈書いた通りに話せる〉カンペメモ(脚本)

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〇時計台の中
鑑定士「この世には〈いわく〉を抱えた呪いの品が存在します」
鑑定士「私は、そんな〈いわく〉付きの品専門の鑑定士」
鑑定士「さて、本日の〈いわく〉は、一体おいくらになるのでしょうか」

〇時計台の中
紙木文哉「これを・・・」
鑑定士「カンペメモ、ですか」
鑑定士「ずいぶん使い込まれていますね」
鑑定士「このシミ・・・コーヒーですか」
紙木文哉「全部これのせいだ! これさえなければ・・・」
鑑定士「お聞かせください」
鑑定士「このカンペメモにまつわる〈いわく〉を」

〇オフィスのフロア
紙木文哉「東京のおしゃれカフェ特集?」
Webディレクター「あとでリスト送るから、いい感じにまとめてくれ」
Webディレクター「ちょっと急ぎでさ。明日までにいけそう?」
紙木文哉「明日!?えっと・・・あの・・・」
今村美沙「あー!また無茶ぶりしてるー!」
Webディレクター「いやいや、俺はできるやつにしか振らないから」
今村美沙「またそんなこと言って・・・ 紙木も無理ならはっきり言った方がいいよ」
紙木文哉「いや、あの・・・別に大丈夫・・・」
Webディレクター「じゃあ、よろしく〜」
今村美沙「まったく!ほんと人使い荒いんだから」
紙木文哉「あ、でも今そんな詰まってないし・・・」
今村美沙「そっか!ならいいけど」
今村美沙「そういえば、こうやって話すの久々じゃない?」
紙木文哉「そ、そうだね・・・」
今村美沙「いつも画面越しだから、なんか新鮮だね!」
紙木文哉「あ、うん!・・・だね・・・」
今村美沙「じゃあ、明日13時にね」
紙木文哉「えっ!あ・・・うん!」
同僚「なんだよ、いい感じじゃん!」
紙木文哉「ばかっ!声でかいって・・・!」
同僚「いいなあ〜俺もデートしてえ〜!」
紙木文哉「・・・全然よくねえよ・・・」
同僚「は?何でだよ?」
紙木文哉「お前、初デートで「一緒にいてもつまんない」ってフラれたことないだろ」
同僚「あー・・・なるほどな」
同僚「お前は難しく考えすぎなんだって!」
紙木文哉「そんなこと言われても・・・」
同僚「話題なんて何でもいいだろ。好きな食べ物とか、適当に話せばいいんだって!」
同僚「それでいい感じの雰囲気になったら告白するんだよ!勢いだ、勢い!」
紙木文哉「・・・頭痛くなってきた」
同僚「仕方ねえな・・・じゃあ・・・」
同僚「カンペでも持っていけば?それ見ながら話せばいいんじゃね?」
紙木文哉「・・・それだ!」
同僚「えっ?ボケで言ったんだけど・・・」

〇華やかな裏庭
今村美沙「お待たせ!ごめん、待った?」
紙木文哉「いや、あの、全然・・・」
今村美沙「お腹すいたよねー!ランチどこ行こっか?」
紙木文哉「えっと・・・あの・・・」
紙木文哉「『イタリアンにしない?おいしいって有名なところなんだ』」
今村美沙「えー!いいじゃん!行ってみたいー!」
紙木文哉「じゃあ・・・そこで・・・」

〇テーブル席
今村美沙「やばっ!今まで食べたパスタの中で一番好きかもー!」
今村美沙「特にこのソースがいい!コクがあって香ばしくて・・・」
今村美沙「えっ!な、何?」
紙木文哉「いや、あの・・・おいしそうに食べるなって・・・」
今村美沙「あ〜よく言われる!あたしすぐ顔に出ちゃうんだよね」
紙木文哉「あっ!でも、全然変とかじゃなくて・・・」
今村美沙「おいしいもの食べてる時って、めっちゃ幸せな気持ちにならない?」
紙木文哉「うん・・・それ、わかる・・・」
紙木文哉「えっと・・・じゃあ、あの・・・」
紙木文哉「『普段、料理するの?得意料理とかある?』」
今村美沙「たまにするよ。ほんと簡単なものしか作らないけど」
紙木文哉「そっか・・・なるほど・・・」
今村美沙「得意っていうか、最近お菓子作りにハマっててさ」
今村美沙「シフォンケーキとか、クッキー作ったりしてるんだ」
紙木文哉「ええ!すごっ・・・」
今村美沙「あ、そんな本格的なやつじゃないよ!」
今村美沙「レンジで簡単にできるレシピとかあって、やってみたら意外と楽しくてさ」
紙木文哉「へえ・・・そうなんだ・・・」
今村美沙「紙木は?料理するの?」
紙木文哉「えっ!ああ・・・えーと・・・」
紙木文哉「ええと・・・その・・・」
紙木文哉「『今、ゾンビゲームにハマってるんだ』」
今村美沙「えっ?ゲーム・・・?」
紙木文哉「『この間発売された新作なんだけど、面白すぎて気づいたら朝までやってたよ』」
今村美沙「ゲームかあ・・・」
紙木文哉「あ、ごめん!興味、ないよね・・・」
今村美沙「あ、違う違う!あたし全然ゲーム詳しくなくて」
今村美沙「楽しそうだなって思うけど・・・ ホラー苦手だし、ゾンビものってグロいじゃん?」
紙木文哉「ええと・・・でも・・・」
紙木文哉「『怖いだけじゃなくて、人間ドラマが面白いんだ。しかも色んな分岐点があって、選択によってストーリーが変わるし』」
今村美沙「へぇー!なんかやってみたくなってきたかも」
紙木文哉「あっ!じゃあ・・・」
紙木文哉「『よかったら、今度一緒にやらない?やり方教えるからさ』」
今村美沙「えっ・・・」
紙木文哉「あっ!嫌なら別に・・・その・・・」
今村美沙「いいね、楽しそうー!今度やろー!」
紙木文哉「あっ・・・うん!」

〇オフィスのフロア
同僚「よっ!どうだった?」
紙木文哉「途中やばかったけど、何とか上手くいったよ。カンペのおかげだ!」
同僚「えっ!まじでカンペ使ったのかよ」
紙木文哉「今度はもっとたくさん用意しなきゃ」

〇映画館の入場口

〇映画館の座席
今村美沙「いやー!完全に予想外だったわ・・・!」
今村美沙「まさか配達員が黒幕だったなんて」
紙木文哉「『原作ではラストが違うんだよ』」
今村美沙「ええっ!そうなの!?」
紙木文哉「『映画にはないエピソードもあるから、照らし合わせてみると楽しめるかも』」
紙木文哉「『これ、よかったら貸すから読んでみて』」
今村美沙「えっ!あ・・・ありがと」

〇アパレルショップ
今村美沙「あー!どっちもかわいい!どうしよ〜」
今村美沙「ねえ、どっちがいいと思う?」
紙木文哉「『どっちもいいと思うけど、今村はどっちが好きなの?』」
今村美沙「うーんとね・・・やっぱりピンクかな」
紙木文哉「『俺もそっちがいいと思う。すごく似合ってるよ』」
今村美沙「そ、そうかな・・・ じゃあ、こっちにする!」

〇レンタルショップの店内
紙木文哉「『Mr. GREAT APPLEは曲の幅が広いし、歌詞も寄り添ってくれる感じがしていいよね』」
今村美沙「ほんとそれ!何度励まされたか・・・! 歌詞が沁みるんだよね〜」
紙木文哉「『歌もめちゃくちゃ上手いよね。去年ライブ行ったんだけど、生歌やばかったよ!』」
今村美沙「えっ!当たったの!?いいなー!」
紙木文哉「『今年もまたライブやるみたいだから、当たったら一緒に行こうよ』」
今村美沙「倍率やばそうー!でも当たるといいなあ」

〇モールの休憩所
紙木文哉「『お待たせ。はい、これ』」
今村美沙「ありがとう!ごめんね、混んでたでしょ?」
今村美沙「あれっ・・・これ、アイスコーヒー?」
紙木文哉「えっ・・・!」
紙木文哉「あ、えっと・・・店員・・・」
今村美沙「あー!いいよいいよ!コーヒーも好きだし」
紙木文哉「『ごめん。俺が悪かった。次から気をつけるよ』」
今村美沙「紙木のせいじゃないって!」
今村美沙「あ、そうだ!これ・・・」
今村美沙「クッキー作ってみたんだけど、食べる?」
紙木文哉「『すごいね!めちゃくちゃおいしそう!』」
今村美沙「今朝急いで作ったから、見た目はちょっとアレだけど・・・」
紙木文哉「・・・っ!」
今村美沙「ど、どう・・・?」
紙木文哉「『これすごくおいしい!サクサクしてて食感もいいな』」

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コメント

  • やはり完成度が高くて凄いお話ですね!!

    何度読んでも、メモの文字が滲んだ後の言葉が変になっているところはぞくっとしてしまいますね!!あんなふうにいきなりなったら逃げ出したかもなりますよね、、、

    不穏な気配を残すラストも素敵です!!

  • メモが無いと会話が成り立たない場面の追い込まれ方と、
    それが恐怖に変わっていく場面が素晴らしいと感じました。
    最後のオチもゾクッとさせられます。序盤からのストーリー展開も素晴らしかったです!😊

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